はじめまして!アンジュです。
ここは私が短編集を書いていくだけのスレ…ですかね?思い付いたら色々書いていきます。
文才ないですが、できるだけ描写などを細かく書けるようにしていきたいので頑張ります!
No.1 魔法のハンバーグ
「 今日はあんたの好きなハンバーグだよ 」
光に照らされた明るい微笑みでこう話しかけてきたのは僕の母さん。手に持っているのは綺麗なお皿に乗せられている見慣れた真っ白いライス、目にいい緑色をしたサラダたち……。
そして最後は、見ているだけでもお腹が空いてくるハンバーグ。ハンバーグはおいしそうな匂いを身にまとっており、僕の鼻をくすぐる。思わず唾液があふれ出てきてしまう。そのハンバーグたちが盛り付けられたお皿を、目の前のテーブルに優しく置いてくれる。
「 おいしそう! いただきまーす! 」
もう中学生だというのに、つい子供みたいなことを言ってしまった。しかしそんなことに恥じらいを覚える余裕もなく、さきほどからテーブルにあったナイフとフォークでハンバーグを慣れた手つきですばやく切っていく。
……ああ、この感覚。やっぱりいつも通りだな、と心の底から思う。ハンバーグに閉じ込められた肉汁をナイフとフォークで自ら切っていく光景を見るのは、気持ちがいい。
そんなことを思いながら、今切ったハンバーグを大きく開けた口の中へと運んだ。
やはり、思った通りだ。
口の中がハンバーグの味でどんどん支配されていくのがわかる。肉汁が口の中で暴れまわり、そのまま肉汁と混じりあった唾液とともに喉を通っていく。
今回のハンバーグもいつもの味で安心する。小さいころからずっと、母さんの作るハンバーグの味は変わらなかった。もちろん、その味に飽きたこともなかった。
こう考えると、母さんの作る料理はハズレがないな。……つまり今言いたいのは、このハンバーグはおいしい、ということ。
「 やっぱり、母さんの作るハンバーグはおいしいな! 」
「 ありがとうねぇ。お母さん、いつもハンバーグは魔法をかけて作ってるんだよ 」
「 ……魔法? 」
その言葉を聞いたとたん、僕は驚いてハンバーグを食べていた口がストップしてしまう。それでも母さんはさっきっからずっと口元を上げたまま。
母さんのいう魔法とはなんだ? もしかして、母さんは魔法つかいだったのか!? 少し戸惑ってしまう僕。鼓動が早い。
「 母さん、魔法ってどういう魔法なの? 」
「 うふふ、それはね____ 」
その時、僕は母さんが言うまでもなく、その魔法の意味を理解した。頭がそのこと一色に染まる。
『 あんたが、いつまでもお母さんの作るハンバーグを好きでいてくれる魔法 』
____僕は、母さんの作るハンバーグを、一生嫌いになれない運命なのかもしれない。
No.2 苦しいこの世の中
____なぜ、世の中はこんなにも苦しいのか?
昔はよかった。赤ちゃんのころはよかった。
お母さんやおばあちゃんから優しくしてもらって、なにも苦しいことなんかなくて。これが “ 人生 ” なんだって思ってて____。
あの時はまさにバラダイスだった。毎日、いいことばかりある日々を過ごしているはずだった。
……なのに、
どうして、今はこんなにも苦しいの?
苦しいことはなにもない。辛いことはなにもない。いいことだけがある世の中。
それがこの “ 世の中 ” なんだっていう私の甘い考えは、大きな間違いだったようです。
だから今からやり直します。この世の中を、この苦しいことだらけの世の中を。
ある夜、私は私と家族たちの住んでいるマンションの屋上に来ました。その時の天気は曇っていました。まるで、今の私の心のようにね。
さあここからが本題です。怖いけど、嫌だけど、これは自分のためなんです。怖くない、怖くない……。
……そういえば、私みたいに人生をやり直す人は、くつを脱いでそろえてからやり直すんだっけ?
ふとそのことを思い出したので、血の色に染まったような赤いくつを脱いで、きっちりそろえました。これで準備はバッチリですね。
さあ!いよいよ私はこの失敗した人生をやり直し致します。やり残したことなんてなーんにもありません。
みんなも私のことを「 しね 」って言ってる。不思議だなあ、前まではこの言葉でひどく傷付いていたのに、慣れちゃったのか今言われてもぜんぜん傷付かないよ。でも、これって私の新しい人生を応援してくれてるってことですよね!
それではみなさま、今まで私のことを育ててくれて、私と仲良くしてくれて、ありがとうございました!
新しい人生では、失敗しないように生きていけることを願って____。
屋上から飛び降りると、灰色の道路がスローモーションで近づいていく。私はこの時間さえも長く感じた。あの灰色も、もうすぐ血の色に染まるんだよね。
道路に身体が勢いよく落ちると、重たい音がした。全身にものすごい痛みが走る。生きてきて、これほどの痛みは経験したことがなかった。灰色の道路は少しずつ血の色へと変化していく。
でも、この痛みに絶えれば、この人生を終わらせることができるんだ____そう考えると、なんだかこの時間も苦痛じゃなくなってくる。
しばらくすると、意識が遠のいていくのがわかった。
私は新しい人生への一歩を踏み出すことができた。新しい人生では、頑張れるといいなあ。
No.3 片想いから両想いへ、両想いから片想いへ
アップルのような、オレンジのような色をした夕日がゆっくりと沈んでいく。夕方、彼と私は浜辺に来ていた。さきほど、私の彼氏が「 大事な話があるから、浜辺に来てくれないか? 」と言われたので来たのだ。
サー、サー、という波の音が嫌でも聞こえてくる。そんな中、彼は口を開き小さな声でこう囁いた。
「 ごめん、別れよう 」
いつもはおっちょこちょいで、冗談をよく言う私の彼氏。周りからは “ ジョーカー ” というあだ名をつけられていた。
しかし、今私に放った言葉は冗談なんかじゃない____彼の目は、本気だ。
「 え……な、なんで……? 」
「 ごめんな。俺、他に好きなヤツができたから…… 」
突然のことだったで、私はどう対処していいかわからなくなってしまった。彼が言っていた大事な話、というのはこのことだったようだ。なんで、どうして、私のどこがいけなかったの……それが心の中で何度も何度もリプレイされる。動悸が激しい。
彼は悲しいような表情をしていた。涙が溜まりに溜まった私の瞳からは、一粒の涙がこぼれ落ち、地面にぽつりと落ちていく。
今まで彼と一緒に過ごしてきたことが、すべて昨日のことのように思い出す。私は彼と一緒にいられて、とても幸せだった。この世に生まれてこられてよかった、と思えるほどに。
でも……彼が私と別れるっていうのなら、私は止めない。いいや、止めたくない____彼の恋を応援したいから。
「 ____っ、わかったよ。悲しいけど、あんたの次の恋、応援してやるから…… 」
「 ……!! 」
しばらく沈黙だった時間が、私の一言で終わった。今まで悲しそうな顔をしていたが、この一言を耳にすると、どこか安心したような表情を見せる彼。
「 本当に、ごめん…… 」
「 いいんだよ。そんなに泣かないで 」
「 俺、お前を傷付けるんじゃないかと思って、なかなか言い出せなかったんだ____でも、別れもしないで俺が他のヤツと付き合ったら、もっとお前のこと傷付けちまうから 」
ああ、そうか……彼は私に気を使ってくれたんだ。彼は冗談をよく言う人だけど、本当は優しい人なんだ。
それならこの別れも冗談だったらよかったのにな、なんて思ってしまう。でも、私は彼のことが好きだ。だからこそ、彼の新しい恋を応援してあげたい。
彼と私の関係は、この出来事で恋人から幼馴染みへと変わった。彼は新しいを恋し、元カノの私はその新しい恋を応援することとなった。たとえその恋がダメだとしても、私は彼の “ 幼馴染み ” として、前のように仲良くやっていくつもりだ。
さて!私も新しい恋を探しにいきますか。
No.4 失敗してからじゃもう遅いの
私は失敗した。
なにに失敗したかって?それはもちろん人生にだよ。
義務教育だっていうのに、そのルールを破り具合が悪いと嘘を吐き、学校をサボった。そして不登校となり、家族を苦しめ病気にさせた。おまけに労りもせずに毎日毎日ゲーム三昧……。
でもいつの間にか、私も家族のように病気になっていたよ。去年はまだ、こんなに酷くなかったんだけどね。
まあ、なにが言いたいのかというと、
人生には厳しいルールがあるんだ。
1つ、不登校になってはならない。
2つ、顔、姿形がよくなければならない。
3つ、人を少しでも苦しませてはならない。
4つ、なにごとにも完璧でないとならない。
____そして最後、
5つ、私のように人生を失敗してはならない。