莉愛の短編集

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1:莉愛◆8Q:2017/03/17(金) 21:31

私が書く短編集です。
感想など、文才ないですけどお願いします。

2:莉愛◆8Q:2017/03/17(金) 21:33

小説板に書かせていただいている、
『ここは明確スイーツ研究部!』
シリーズの短編も書く予定です。
良ければ、小説板で読んでください。

3:莉愛◆8Q:2017/03/17(金) 21:43

『類木川小学校児童会☆』

主な登場人物

葉金井 睦美 ハカナイ ムツミ
類木川小学校の児童会会長。
元気が取り柄の小学6年生。
みんなの前に立つことが好き。

真弓 大輔 マユミ ダイスケ
類木川小学校の児童会副会長。
頭がよくて、学年1秀才。
運動もできちゃうスーパー小学生。

広川 梨依 ヒロカワ リエ
類木川小学校の児童会書記。

野々村 咲子 ノノムラ サキコ
類木川小学校の児童会会計。

小山田 和樹
類木川小学校の児童会会計。

4:莉愛◆8Q:2017/03/18(土) 08:03

1.わたしが児童会会長!
『先日行われた、児童会選挙の結果を発表します。会長が、葉金井睦美。副会長が、真弓大輔。書記が、広川梨依。会計が、野々村咲子、小山田和樹です。1年間、この5人が児童会です。これで連絡を終わります。』

や、やった〜!!!
児童会『会長』になれた〜!!!

「睦美、やったじゃん!」

「おめでとう、睦美ちゃん。」

親友の香織と、学級委員長の美結ちゃんが言ってくれた。

「ふたりとも、ありがとう!」

3人でワイワイしていると、6年1組に広川さんが来た。
後ろに、野々村さんもいる。

「葉金井さん。ちょっと。」

ああ〜!
きっと、児童会の集まりだ〜!

「普通は、葉金井さんが集めるはずよね。真弓くんと小山田くん呼んで来てくれるよね?」

「う、うん。ごめんね、呼ばなくて。わたし、児童会会長になったのに。」

「別に。早く呼んで来てよね!」

わたしたち、仲良くやっていけるのかな、このままで。
ちょっと不安かも。

「大輔。児童会の、集まるよ。」

他の男の子たちとワイワイしていた大輔を呼び出した。
ピタッっと動きが止まって、だ、大輔どうしたのよっ!

「も、もう!早く来て!あ、ついでに呼んどいてよ、和樹。」

あぁ〜、わたし、何してるんだ。
もっとしっかり児童会会長頑張らなきゃだよね〜!!!

5:莉愛◆8Q:2017/03/18(土) 19:52

2.自己紹介
児童会室に行くと、広川さんと野々村さんがお茶を飲んで待っていた。
はぁ、かなりくつろいでる。

「葉金井さん、男子たちは?」

「大輔に、和樹を呼ばせたから。そろそろ来るはずだよ。」

広川さんが、ケッっとした顔をして、野々村さんはツンとした顔をした。
やっぱり、わたしが呼べってことね。
これから気を付けますって。
いつもツンツンしてるんだもん。
ゆるゆるしたらいいのに。

「遅れてごめん。」

「ごめん!遅れちゃって。」

広川さんは、大輔と和樹の方を見て、またツンとした顔で「別に。」と言う。顔隠してるみたい。
この広川さん、カワイイっ!

「葉金井さん。進めなよ。」

突然厳しい声で野々村さんに言われ、児童会の会を始めた。

「まず、みんな自己紹介しようよ!わたしたちが仲良くやらなくちゃね!」

周りを見回すと、広川さんはフンとそっぽを向いている。
そんな強気でいるの、辞めたらいいのにさっ、もう。

「わたしからするね。わたしは、児童会会長になる葉金井睦美。広川さん、野々村さん、大輔、和樹。これからよろしくね。」

ペコリと頭を下げると、開いている窓から桜が舞い降りてきた。
ああ、いい香り。
今は4月。
新しい一年生が入学したばかり。
桜の香りが…ステキっ!

「わたしから自己紹介するわね。広川梨依です。書記よ、よろしく。」

「わ、わたしは野々村咲子。」

もっとちゃんと自己紹介くらいしたらいいのにさっ!
もうっ!

6:莉愛◆8Q:2017/04/08(土) 10:20

「俺の名前は、真弓大輔。副会長だ。みんな、よろしくな。」

「よろしくぅ〜!」

「仲良くしてね〜!」

広川さんと野々村さん、大輔が自己紹介したとたんにめっちゃ女の子っぽくなった!
さっきまで怖かったのに!

「俺、次いい?」

「いいよ。」

わたしが答えると、みんなの視線が小山田くんにうつる。

「俺は、会計の小山田和樹。」

ああ〜、和樹も自己紹介短い。
と、広川さんと野々村さんは和樹にも反応した。

「小山田くんも、よろしくね〜♪」

「一緒に会計頑張りましょうね♪」

もう、この児童会どうなっちゃうの。
大輔と和樹に無駄に話しかける広川さんと野々村さん。

「ん〜、もう!児童会の活動するよ!どんな活動する?」

「葉金井は何をやりたいの?」

は!?
それ、みんなで考えることじゃない!?

7:絵菜◆8Q:2017/05/01(月) 19:15

名前を絵菜にチェンジします!

8:絵菜◆8Q:2017/05/01(月) 19:35

3.和樹の発言
「広川さん。ノートそこにあるから、書き取っていってね。じゃあ、とりあえず始めるよ!」

わたしが声をかけ、児童会活動が一応始まった。(よね!)
ホワイトボードを前に持ってきて、一番上に、『第一回児童会会議』と書いた。

「提案!みんな、名前で呼ぶようにしようぜ。俺たちだけでも、仲良くやっていきたいだろ?」

大輔が提案した。
すぐ、広川さんが反応する。

「大輔くんがそういうなら、そうしてもいいけどぉ。」

大輔も、嬉しそうに笑った。
ホワイトボードのすみっこに、児童会メンバー名前呼びと書いた。

「はい。いいですか?そのことは、またやりましょう。イベントなどの企画を考えますよ!」

わたしが周りを見回すと、ドアノブがカチャカチャ動いているのに気付いた。

「どうかしましたか?」

そう言って、ドアを開ける。
すると、細身のかわいらしい女の子が立っていた。

「葉金井児童会長に話があって来ました。」

「はい。わたしが葉金井です。」

すると、女の子は普通に児童会室に入り、会議に参加しようとしている。
ダメダメダメッ!
ただでさえ今ヤバイのに。

「ちょっと、アンタ。後にしてよ。児童会じゃないでしょ!」

広川さんが、その女の子を追い払うように外に出た。
野々村さんはその光景を見てため息をついた。

「梨依って、いっつもそう。だから、わたし以外の友達ができないのよ。」

電卓を叩きながら言う野々村さんは、ピリピリしている顔ではなく、広川さんを心配している、乙女の顔だ。

「咲子ちゃんって、お姉さんみたいでかわいいね。」

和樹がそっぽを向いて言うけど、耳まで真っ赤。
もちろん、野々村さんも。
名前で呼んでくれて、かわいいって言われるんだもの。
嬉しいに決まってるよね。

「はぁ。もう疲れたわ。わたし、とりあえず帰るわね。」

そう言って、ため息を何度もつきながら児童会室を出ていく広川さんの姿があった。

9:絵菜◆8Q:2017/05/01(月) 19:56

4.いじめ
「何も決まらないままだ。広川さんがいなくちゃダメだし、今回は解散にしようか。各自、何をしたらいいか考えてきてね。解散。」

わたしが言うと、野々村さんは、広川さんを追いかけるように走っていく。
大輔と和樹も、普通に歩いていった。
あ、さっきの子!

「いますか?さっきの子。」

そう言いながら、ドアを開ける。
かわいらしい女の子が、ウロウロしながら待っていた。

「先程は、広川さんがごめんなさい。意地っ張りだから。」

「いいの。わたくしが勝手に来たのがいけないんだし。参加しようとしてしまったから。」

『わたくし』って柄なんだ。
今時の子で、わたくしってあんまり聞かないなあ。

「それで、何のご用ですか?」

「わたくしじゃなくて、親友のことについてなの。ホワイトボード片付けてから、ゆっくりお話ししない?」

そう言いながら、女の子はホワイトボードを指差した。
もしかして、気を使ってくれてる?

「ありがとう。片付けてきますね。」

急いでホワイトボードを片付けると、
女の子は前に立って歩き出した。
やがて、屋上に着く。
昼休み中だからか、屋上は混んでいて、ベンチは空いていなかった。

「わたくしの親友は、野々村由美子。野々村咲子さんの妹。ちなみにわたくしは、5年2組の、相川きらりよ。」

確かに、名前通りキラキラしてるもんなあ。
わたしと違って。

「野々村由美子は、いじめられてて、怖くて助けられなくて。先生に言ったら、絶交って言うの。だから!」

い、いじめ!?
それを、わたしたちが救うの!?

「葉金井児童会長なら、いじめを止められると思うの!お願い。野々村由美子を助けて!」

きらりちゃん…。
野々村由美子ちゃんへの、熱い友情。
聞いているだけでも伝わってくる。

「きらりちゃん!わたしが助けてあげるから、待ってて!」

きらりちゃんの顔が、また名前通りキラキラ光って見える。
ちょっとまぶしいくらいに。

「わたくし、野々村由美子の所へ行きますね。」

そうして、きらりちゃんと別れた。
えっと。
どうしてきらりちゃんは、野々村由美子ちゃんのことを、『野々村由美子』って呼ぶのかな?
由美子ちゃんでいいのに。

10:まい◆8Q:2017/07/17(月) 21:05

5.名前の正体

「新児童会長の葉金井です。野々村由美子さんいますか?」

ひとり、ボソッっとしている女の子がいて、立ち上がった。
教室のすみでは、きらりちゃんが目で応援してくれている。
何とかして、きらりちゃんと野々村由美子ちゃんを救わなくちゃ!

「わたしに何か用?」

「はい。初めまして。葉金井睦美って言います。野々村由美子ちゃんって呼ぶね」

「いや。やめて。その呼び方。野々村由美子にして」

そう言いながら、野々村由美子…は、きらりちゃんを見た。
もしかしたら、きらりちゃんも野々村由美子のこと、ちゃん付けて呼んでたのかもしれない。
それを、あえて野々村由美子って呼ばせるんだ。
きっと何かあるぞ!

「ねえ。どうして野々村由美子ちゃんって呼んじゃダメなの?」

「では、どうして野々村由美子ちゃんって呼ぶの?」

逆質問された!
わたしがアタフタしていると、きらりちゃんが来た。

「野々村由美子。わたくし、会ったときには、フルネームで呼ばなかった。理由は、あなたに言われたからよ。野々村由美子が先に答えなさい」

きらりちゃんが、命令口調で言う。
すると、野々村由美子は涙目になる。

「野々村由美子。言いなさい。どうして言わないの?わたくしにも教えていただくわよ」

きらりちゃん、そこまで言わないで!
そのような目を向けて、ちょっと黙らせた。
こういう言い方はよくないけどね。

「わたしっ!ちゃん付けされるとっ!及川を思い出してっ!悲しくなるっ!だからっ!」

及川?
きっと、名字だよね。

「わたしのっ!姉の、親友よっ!」

野々村咲子さんの?

「及川って呼んでるんだけどっ!及川だけちゃん付けていいのっ!だって、亡くなったからっ!」

亡くなられたら、ちゃん付けていいってこと?

「及川にも、ちゃん付けは禁止してたわっ!でもね、及川はわたしに嫌われたと思って、自殺したのよっ!」

ひっ!

「及川だけは、どういう理由でも、わたしが殺人犯だから、つぐないの意味でいいのよっ!」

及川って、もしかして及川弓子ちゃんかな?
咲子さんの親友ってくらい遊んでた。
野々村由美子と名前一緒だ。

「もう、いいでしょ」

野々村由美子はすっかり泣き止んで、ボソッっとしていた。

11:まい◆8Q 名前変えました:2017/07/17(月) 21:05

ごめんなさい。メモ見てください。

12:まい◆8Q:2017/07/24(月) 13:56

6.ハッピーエンド
「野々村由美子ちゃん」

わたしが野々村由美子を呼ぶ。
やっぱりにらまれたか。
今、本音を打ち明けてくれたばっかりなのに、ちゃん付けてね。

「野々村由美子ちゃん。きらりちゃんはね、きっと。あなたと仲良くしたいって思ってる。由美子ちゃんって呼ばせてあげて。悩んでたんだよ」

野々村由美子ちゃんは、目にうっすら涙を浮かべ、きらりちゃんを抱きしめていた。
きらりちゃんも。
わたしは、ちょっと感動した。
だって、野々村由美子ちゃんが、今までの自分から抜け出たんだもの。

「由美子ちゃん」

きらりちゃんが野々村由美子ちゃんを呼ぶと、野々村由美子ちゃんもにっこり笑い、

「どうしたの?きらりちゃん」

と、言う。
これで一見落着、っと。


「いいですか?終わりまーす」

児童会の仕事が終わり、あいさつ。
あいさつが終わって、ホワイトボードを片付けたり、椅子を整えたりしていると。

「失礼します。きらりです」

あ、きらりちゃん。
昨日のことかな。
もしかしたら、由美子ちゃんって呼んじゃいけなくなったとか。
はたまた、由美子ちゃんが野々村由美子ちゃんと呼べって言ったか。

「はい」

ドアを開けると、きらりちゃんと野々村由美子ちゃんがいる。
ふたりともにっこり顔で楽しそう。

「本当にありがとうございました!」

きらりちゃんが頭を下げると、野々村由美子ちゃんも一緒に頭を下げた。
やめてやめて。
そんな、頭下げないでよ。

「では失礼しました」

ふたりが帰っていくと、野々村さんはクスッっと笑う。

「葉金井さん、ありがとう。由美子が笑ってるの見たのは久しぶり」

野々村さん…。
改めて野々村さんを見てみた。
ちょっとかわいい。
頬が赤〜い。
ニヤニヤしながら、児童会室を整える。よーし。
わたしは児童会長!
これからも頑張るよっ!

             (おわり)

13:まい◆8Q:2017/07/24(月) 13:58

あとがき
               まい

初めまして。
皆さん、『類木川小学校児童会』はいかがですか?
あまりいい話にはなりませんでしたよね。
反省です。
褒めてくださらなくて構いません。
今後も、このシリーズも書いていきたいと考えております。
その時は、よろしくお願いします。
短いですが、次回もよろしく。

14:まい◆8Q:2017/07/24(月) 21:59

『わたしの優秀ないとこ』

人物紹介

多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

葉金井 睦美 ハカナイ ムツミ
類木川小学校の児童会会長。
元気が取り柄の小学6年生。
みんなの前に立つことが好き。

真弓 大輔
類木川小学校の児童会副会長。
頭がよくて、学年1秀才。
運動もできちゃうスーパー小学生。

広川 梨依 ヒロカワ リエ
類木川小学校の児童会書記。

野々村 咲子 ノノムラ サキコ
類木川小学校の児童会会計。

小山田 和樹 オヤマダ カズキ
類木川小学校の児童会会計。

15:あいな◆6U:2017/08/31(木) 10:56

続き書いて〜

16:岬◆8Q:2017/09/17(日) 19:07

ありがとうございます!
まさか見てくださっている方がいらっしゃってとても嬉しいです。
すみません。
では、書きます。
あと名前変えました。

17:岬◆8Q:2017/09/17(日) 19:20

1.いきなり乙女に
わたしの名前は多田本真美。
この土日で、イトコの家に遊びに行くことになった。

「真美ちゃん、こっちこっち〜!」

イトコの、葉金井睦美ちゃんが手を振っている。
一緒に来ているのは、明確スイーツ研究部、略して明スイメンバーの坂宮、隅木田くん、矢本くん。
優秀な睦美ちゃんも紹介しようと思ったから。

「初めまして〜!類木川小学校の児童会長の葉金井睦美です」

「こっちが坂宮。こちらが隅木田くんで、矢本くん」

睦美ちゃんが、いつもの元気さを押さえて会釈した。
児童会長やってみて、見に付いたのかもしれない。
何かが。

「睦美って、カワいくない名前ですよね。適当に呼んでください」

カワいくなくないのにぃ。
睦美ちゃん、1月の睦月と、美しい子になりますようにの美の睦美。
立派な、カッコいい名前。
睦美ちゃんにぴったりだと思うけど。

「睦美ちゃんって呼ぶね。僕は、隅木田優斗。今日と明日はよろしく」

隅木田くんが睦美ちゃんに自己紹介すると、たちまち顔が真っ赤に。
睦美ちゃん、どうしたの!?

「ちょっと真美ちゃん来てっ!」

わたしは、睦美ちゃんに手を引かれてちょっと離れたところへ行く。
すると、思いっきり背中を叩いた。

「ナイスだよぉっ!隅木田くんって子めちゃめちゃカッコいい!!!」

あ、ホレたんだね。
乙女だ、睦美ちゃん。
わたしは、乙女をマジマジと見た。

18:岬◆8Q:2017/09/20(水) 21:39

2.いざ、お邪魔します!
類木川小学校は、公立だけど、有名。
女優さんや俳優さんになる子が、そこの小学校卒が多いらしいの。
だから、類木川小学校って何かあるのかなって感じなの。
私立彦宮学園も、負けてないよ。
受験して行く、れっきとした私立。
難易度もそこそこ高いんだから。

「あ、どうぞぉ〜」

睦美ちゃん、妙に隅木田くんに寄って行ってない?
わたしは、坂宮と苦笑いしながら、睦美ちゃんの家に入った。

「お邪魔します!」

睦美ちゃんのお母さんーーー弥生さんが出迎えてくれる。
みんなも気付いたかもだけど、睦美ちゃんは睦月ーーー1月生まれ。
弥生さんは弥生ーーー3月生まれ。
わたしも3月生まれだよっ!

「ようこそ。真美ちゃんお久しぶり」

「久しぶり、弥生さん」

睦美ちゃんの部屋に男の子は入れないので、ダイニングにお邪魔する。
ここで食事。
リビングで過ごす。
和室が、わたしたちの部屋。
泊まるところね。

「荷物、ここに置いちゃって」

睦美ちゃんが、和室の片隅のクローゼットに荷物を詰める。
ここに明スイメンバーで泊まる…!
ドキドキワクワクだよ〜。

「寝る直前まで、わたしもここにいていい?」

睦美ちゃんがモジモジしながら隅木田くんに聞く。
隅木田くんはにっこり笑って、「いいよ」と言った。
きっと、睦美ちゃんからしたら、幸せスマイルだよね。

「食事の準備が出来るまでゆっくりしててね。わたしは、ちょっと友達が急に来たから」

友達?
見てみたい!
睦美ちゃんが外へ出て、友達…。
って、男の子じゃん!
誰だろう、あの子。
もしかして、友達じゃなくて恋人!?
睦美ちゃん付き合ってたの!?
なのに、隅木田くんが好きなの!?
疑問が渦巻く中、ただただ様子を見守っていた。

19:岬◆8Q:2017/09/20(水) 21:49

3.重たい空気
睦美ちゃんが引き返してくるのと、弥生さんがお茶を運んできたのが同時だった。

「ありがとうございます!」

坂宮は、きゅうすに入っている温かい緑茶を、コップにドボドボ入れた。
入れ方がなってないな〜。
気付いた弥生さんは、坂宮のとなりに座った。

「あなたの名前は?」

「坂宮陽都」

弥生さんは笑いかけて、「はるくん」と呼んだ。
たちまちのうちに、坂宮の顔が赤く染まった。

「お茶の入れ方を教えてあげるわ。こちらへいらっしゃい」

きゅうすにまだ入っているお茶を、わたし、隅木田くん、矢本くんのコップに入れる。
弥生さんの綺麗な手さばき。
教えてもらったばかりの、なってない坂宮の入れ方。

「頑張ったわね、はるくん。じゃあ、おせっかい失礼しました」

弥生さんは笑顔で部屋を出ていった。
何か、旅館のおかみさんみたい。
着物じゃないけど。
お茶の先生の弥生さん。
すると。

「真美には叶わないけど、俺、さっきのお姉さん好きだわ」

ふん、勝手に好きになれば。
わたしには関係ないんだからっ!
ちょっとツンとする。
ちょうど、重たい空気のところに睦美ちゃんが来た。

「真美ちゃん、ちょっとちょっと」

睦美ちゃんが和室の外に呼んで、小さな声で聞く。

「どうして黙りこんでるの」

「弥生さんが気に入ったの。坂宮が。それで、ちょっとツンとしてる」

ポンと手を打って、睦美ちゃんはダイニングへ行った。

20:岬◆8Q:2017/09/20(水) 21:57

4.お茶情熱!
翌日も、重たい空気は相変わらずだった。
一行に声を発しない坂宮。
困った表情なのにも関わらず、乙女な睦美ちゃん。

「ちょっとー、君たちー!」

さすがに静かすぎて、睦美ちゃんが手を叩く。
隅木田くんも注目して、顔を赤く染める。

「仲良くしようよ。せっかく家来てるんだから。お母さんにお茶でも教えてもらえば?お茶はすごいの」

みんながキョトンとしている。
キョトンとしている理由が分からない睦美ちゃんの代わりに、わたしが説明した。

「お茶は、人と人とを繋ぐもの。ウソって思うかもだけど本当だよ。みんなでお茶やってみよ」

隅木田くんと坂宮が乗って、そこに矢本くんも渋々乗った。
睦美ちゃんは、誇らしげに鼻の下をこする。

「お母さん、着物着てくれるといいんだけど」

睦美ちゃんがうつむく。
どうしたんだろ。
聞いてみると、それは意外なことだった。

「わたし、お茶イコール着物。エプロンとか着て入れるお茶は美味しくないもん」

強い気持ちに押されそうになりながら、何とか踏ん張る。
睦美ちゃんのお茶に対する情熱が伝わってきた。
カッコいいでしょ、わたしのいとこ。
睦美ちゃんのことは、絶対に。
わたしの誇りだよ。

21:岬◆x.:2017/10/14(土) 20:37

5.個性的な児童会メンバー
睦美ちゃんのお茶指導でわたしはヘトヘト。
もうそろそろお別れとなると、本当に寂しい。
すると、弥生さんが坂宮を呼ぶ。
坂宮は、嬉しそうに弥生さんに着いて行った。

「アイツ気持ち悪いな、顔」

「ああ、あの人のこと好きだな」

「弥生さんだよ」

隅木田くんは苦笑しながら坂宮の様子を眺めた。
わたしからすると、兄みたい。
隅木田くんが、坂宮のお兄ちゃん。
そんな感じの目で見ていた。

「弥生さんって綺麗だね」

矢本くんまでもがつぶやくので、わたしはあとちょっとで「はぁっ!?」と言うところだった。
だって、ねえ。

「睦美ちゃんと結婚したら…」

「やめてっ!そしたら、親戚になっちゃう」

「イヤなの?」

え…。
そんな言い返し方、あるぅ!?
ちょっとムスッっとしながら睦美ちゃんを見ると。

「児童会メンバー呼んじゃいました!大輔に、和樹に、梨依ちゃん、咲子さん」

ええっと、真弓くん。
小山田くん。
広川さん。
野々村さんだそうだ。
みんな名前で呼びあってて、すごい。
わたしたちなんかは、真面目に名字だもん。

「初めまして。睦美ちゃんがお世話になっています。従姉妹の多田本です」

お辞儀すると、真弓くんが一歩前に出た。

「本当ですよ。睦美ときたら」

「いつもハイテンションなところは睦美ちゃんのいいところですから、見てあげてください」

広川さんはうなずく。
野々村さんは硬直している。
小山田くんはボーッっとしてて。

「あなた、彦宮の子でしょ?」

野々村さんが初めて口を開く。
わたしはにっこり笑ってうなずいた。
羨ましそうに見てくる小山田くん。
きっと彦宮来たいんだ。
でも言えないので、野々村さんに言う。

「よくお知りで。睦美ちゃんから聞きましたか?」

「ええ。秀才な従姉妹だと」

「とんでもない」

野々村さんはクスッっと笑い、大量の紙束をカバンから出した。

「どちらが早く解けるか勝負よ!」

こっ、これは負けられない…!
わたしは、野々村さんを敵意剥き出しで見た。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
トリップ変えました。

22:岬◆x.:2017/10/14(土) 21:06

6.お別れもみんなで
睦美ちゃん、明スイメンバーはわたしを。
児童会メンバーは野々村さんを応援して勝負を始めた。
案外簡単な問題でスラスラ解く。
もっと難しいのかと思った。

「咲子さん今どこ?」

睦美ちゃんが問いかけ、野々村さんが「3枚目」と答える。
わたし、5枚目だ。
勝ってる勝ってる。
わたしはこの調子で、どんどん解いていった。


「終わりました」

野々村さんは「早っ」っと言いつつ、書く手を止めた。
良かった、勝てて。
彦宮生として、言い方悪いけど市立校に負けるわけにはいかないし。

「お願いします、勉強を教えてください」

そういう展開!?
ちょっとビックリしつつ、野々村さんの紙を見る。
間違っている問題を見つけて…社会だね。
歴史の飛鳥時代が間違っているので、関連することも言いながら説明。
飽きた明スイメンバーは、弥生さんにお茶指導してもらってる!

「って感じなんだけど、分かります?教えるの苦手ですみません」

野々村さんは、急に敬い始めて、児童会メンバーまでもが聞きいっていた。
広川さんも、睦美ちゃんに紙をもらって書いてるし。
先生みたい。

「分かりやすいね、多田本さん」

小山田くんが言ってくれて、コメントの仕方が分からなかったので、とりあえず会釈。
真弓くんと小山田くんも、顔立ち結構カッコいいかも。
わたし、顔で決めないからねっ!

「ありがとう!」

どうすることも出来なくて睦美ちゃんを見る。
お願い、助けて。
睦美ちゃんは時計を見て声を上げた。

「そろそろ帰った方が良くない?」

「そうだね。じゃあそろそろ」

もう睦美ちゃん家離れるのか。
明スイメンバーを呼び、児童会メンバーもお見送りしてくれる。

「これからも、睦美ちゃんよろしくお願いします。いいところ見つけてくださいね」

睦美ちゃんが口を尖らせる。
いいのいいの。
みんなで門をくぐり、駅へと足をかたむける。

「弥生さん気に入ったよ〜」

坂宮と矢本くんが口をそろえる。
もう。
ふたりとも弥生さんが気に入って!
もう結婚してるから、その気持ち沈めてよね!
わたしはひとりで考えながら道を歩いた。

23:岬◆x.:2017/10/14(土) 21:12

7.和樹のタイプ
真美ちゃん帰っちゃった。
すると、和樹が顔を赤くして振り返った。

「多田本さん、俺のタイプピッタリ」

梨依ちゃんと咲子さんは顔を硬め、肩を落としていた。
きっと、和樹のことちょっとは想ってたと思うから。
ね…分かるよね。

「頭いいし、カワイイし、静かだし。いちいちキャーキャー言わないし」

和樹が最後言うとき、チラリと梨依ちゃんたちを見た。
はっきりね。
すぐそらしてたけど。
まあ、初めの自己紹介の時のこと、強調してるのかも。
ちょっと笑いながら、みんなを見送る。急に静かになる家。
なんか寂しいな。

「みんな、パアッって何かやろ!」

すると、ショックを受けている咲子さんが言った。

「カラオケ。パアッっと」

カラオケ!?
なーんてやりながら、児童会メンバーでカラオケに行きました。

             (おわり)

24:岬◆x.:2017/10/14(土) 21:15

あとがき
                岬

初めまして。
『ここは明確スイーツ研究部!』『類木川小学校児童会』作者の岬です。
今回はいかがですか?
なかなか長い物語が書けません。
他の先生みたいな世界も書けません。
すみません。
努力していくつもりですが。

皆さんも、従姉妹いますか?
わたしの従姉妹は、上と下います。
カワイイですよね、下って。
上だとカッコいいし。
エピソードありましたら教えていただけたら嬉しいです。

もし、読んでくださっている方がいたら、ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします。

25:岬◆x.:2017/10/14(土) 21:30

『ココロのヤマイ』

人物紹介

桜庭 美香子
27歳独身。
ストレスをためすぎている。

鈴木 舞子
美香子の幼なじみ。
看護師で美香子を心配する。

春山 瑠未子
美香子のストレスの原因。
自分勝手。

26:岬◆x.:2017/10/14(土) 21:39

1.美香子と舞子

私の名前は桜庭美香子。
27歳で独身。
特に特技も趣味もない。
平凡で、普通過ぎる。
凡庭凡子って呼ばれたりする。

「美香〜舞子ちゃんよ〜」

お母さんが呼ぶ。
舞子は、幼なじみの鈴木舞子。
隣の家で優しいんだ。
看護師だからカッコいい。
私の変なストレスのナース。

「ちょっと、美香子〜」

舞子の声がする。
ノソノソとベッドから出て、服に着替える。
だらしない髪の毛のまま舞子と会う。

「美香子、ヤバイよ!」

舞子の言葉は無視して、とりあえず髪の毛を結ぶ。
クシも使わずに適当に。
グチャグチャだよ。
でも普通。
ピコピコ跳ねてるけど気にしない!

「舞子ちゃんごめんね」

「いえいえ。それより美香子!」

もーう。
すると、綺麗な髪の毛の瑠未子を思い浮かべた。
私もあんな髪の毛ほしいな〜。
ちょっとブスッっとして、荷物を持って家を出た。

27:文楓◆bQ:2017/10/14(土) 22:08

大人チックな話〜
うちも短編小説版で小説書こうかな?

28:岬◆x.:2017/10/15(日) 09:36

ちょっと大人の物語書いてみたくて。
文楓ちゃんもきっと書けるよ!
書くなら、見るね。

29:みゆ◆x.:2017/11/04(土) 18:18

名前変えました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2.美香子が観たい映画

私は、舞子と映画館へ向かう。
電車を乗り換えて、田舎の町から、都会へ出た。

「美香子、ここだ」

舞子がスマホから顔を上げ、指差した大きな大きな施設。
町には考えられないよ!
ビックリしつつ入る。
暖かい暖房が効いていて、都会感が増していた。

「どの映画観る?」

パンフレットを手に取り、覗く。
いろんな人にチラチラ見られる。
私だろうな。
だらしない格好だし。

「美香子?」

「ごめん舞子!」

あわててパンフレットを見る。
恋愛映画観てみたいな〜。
都会のカッコいい大人が観てそう。
例えば、芸能人の鈴木博子とか。

「私が観たい映画は、これ」

舞子が指差した映画は、ホラー。
ゾンビが枠いっぱいに描かれている。
ホラーが苦手な私、無理かも。
だけど、舞子は言った。

「私は大丈夫。美香子の観たい映画観よう。いつも私の観たいのだし」

舞子…。
優しい…。
パンフレットの中にふたつある恋愛映画。
鈴木博子はどっちを観る!?
大人な恋愛映画か。
中学生のハードル高めの恋愛映画か。

「美香子は恋愛映画観たいの?」

コクコクうなずくと、舞子は受け付けで何かを注文する。
私のところに戻ってきた。

「どうせ、鈴木博子が観たい映画を観たいんでしょう?大人な恋愛じゃないかなって」

舞子が持っている二枚のチケット。
それは、大人な恋愛映画だった。

30:みゆ◆x.:2017/11/04(土) 18:24

3.恋愛映画は中学生?

ホールに入れば、私は呆然とした。
私は席取り。
舞子はジュースとポップコーンを買いに係を決めたんだけど。

「大人も来てる〜!」

「ちょっと髪の毛ヤバくない!?」

中学生ばっかりいる!
あわててホールを出て、チケットに書いてあるホールの番号と確認。
合ってるはずなのにっ!
どうして大人の恋愛に中学生っ?

「美香子、席取りでしょ!」

舞子が大量のポップコーンを持ってやって来る。
ふたりで出直す!
髪の毛のことを言われたので、舞子に隠れながらホールに入る。

「ありゃ。中学生多い〜」

舞子もビックリしていて、中学生もなぜかビックリしていた。

「この映画って大人観る?」

「中学生だよね〜」

いやいや、大人ね!
最近の中学生はこんなの観るんだ。
どっちが大人でどっちが中学生か。
比べ物にならないくらいだよ。

「誰がどんな映画を観ようと関係ないんだし、楽しも?」

舞子に言われて、ポップコーンをほおばり、油の付いた手でジュースをズズッっと飲む。

「恋愛は大人だもんねっ!」

そう言いながら、ポップコーンをバクバク食べた。
男かと言うくらいの勢いで。

31:亜優:2017/11/17(金) 18:25

入れてもらってもいいですか

32:亜優:2017/11/17(金) 18:26

あの、誰か来てくれない?(-.-)

33:亜優:2017/11/17(金) 18:26

あの、誰か来てくれない?(-.-)
さみしいんだけど

34:相原梨子◆x.:2017/12/04(月) 21:13

>>31-33
すみません!
スレ主の名前変えた相原です。
どうぞどうぞ。
寂しい思いさせてしまってすみません!

35:相原梨子◆x.:2017/12/04(月) 21:21

4.中学生たちの会話

映画が終わって電気が付いたときも、すごく目立った。
舞子はちょっと恥ずかしがり屋なので、先にホールを出る。
私も追いかけた。

「美香子…。もう映画はコリゴリかも知れない。疲れたよ…」

「私も。ごめんね、舞子」

舞子は首を横にブンブン振る。
ポップコーンやジュースのゴミを捨てて、気を取り直してファミレスへ。

「いらっしゃいませー」

店員さんが案内してくれた窓側の席に舞子と座る。
よく外が見えた。
外からも私たちが見える。
あの中学生たちも、いた。

「あの人、映画いた人じゃね!?」

「髪の毛ボサボサだから覚えてるー」

「隣の人可愛いよね」

窓薄くない!?
声めちゃめちゃ聞こえるし。
舞子は可愛いけど、私は髪の毛ボサボサってことね。
ちょっとショック。

「大丈夫、美香子。ファミレス出たらさ、二つ目の映画観ようよ」

舞子、優しい。
ちょっと視界がにじむ。
きっと太陽が眩しすぎたんだ。

「美香子は何にする?私はステーキ食べちゃおうかな」

舞子はメニューの端にあるステーキを指差した。
気付かなかったけど、綺麗なネイルがしてある爪。
私とは全然違う。

「私もそれにする」

決めてなかったので、舞子と同じステーキを注文した。
私も、ちょっとくらい舞子に近付けれないかな…。

36:相原梨子◆x.:2018/01/04(木) 17:12

5.疫病神、瑠未子

ステーキを頬張っていると、隣の席に舞子以上の女の人が座った。
誰、この人。
女子力高すぎじゃない?
そんなことを思っていた相手…。

「あら?美香子と舞子じゃない。ふたりしてお出掛けかしら?」

私の苦手な人。
ストレスをためる原因の人。
瑠未子じゃん…。

「そうよ。瑠未子こそ、ひとりでステーキなんてどうしたの?」

「やだなぁ、舞子。私がお金持ちってこと忘れてる?」

瑠未子、ひとりでステーキなんて普通なのかもしれない。
なんて人なの…!

「あ、そうだったわね。失礼」

舞子は瑠未子から視線をそらして、ステーキを口に運ぶ。
とりあえず、早くここから出たい…。
すると、瑠未子が店員さんを呼んだ。

「このふたりと友達なんです。机くっつけてもいいですか?」

えっ、今なんと…?
瑠未子と一緒に食べるわけ!?
店員さんはあっさりオーケー。
机がくっついてしまった。

「ちょっとごめん。お手洗い行くね」

舞子が席を外す。
その時、私を見ている気がした。
私も席を外せばいいってこと?

「私もお手洗い…」

あわてて席を立つと、瑠未子に手を掴まれてしまった。
瑠未子は、ギュッと握ったまま離してくれない。

「何っ!?」

「どうして舞子を追いかけるの?っていうか、私が舞子のこと好きなの気付かないかな?」

「そりゃあ、私だって舞子のこと好きだよ!」

瑠未子はため息をついて、私の汚ない髪の毛をさわった。
そして、キッとにらむ。

「私、美香子みたいにひとりじゃないんだよ。カワイイし、清楚だから、付き合ってる。舞子だってカワイイのに付き合ってないでしょ?原因は美香子なのよ!?」

37:相原梨子◆x.:2018/01/04(木) 17:25

6.瑠未子と離れるためには?

私は春山瑠未子。
美香子へ対する考えはこうよ。
可愛くて、大人しくて、しっかり者。
私みたいでしょ?
なら、舞子もモテるはずなのよ。
なのに、年齢=彼氏いない歴。
おかしすぎるのよ。

「瑠未子、美香子はそんなのじゃないよ。私なんかがモテるわけないし」

「いいえ!私に似てるんだもの。モテるに決まっているわ!」

舞子が何と言おうと、舞子は舞子。
私と似てるなら、モテるなんて誰でも分かるでしょう?
なのに、どうしてモテないの?

「ねえ舞子〜」

お前だ、犯人はお前だ!
犯人の名前は美香子。
髪の毛はボッサボサ。
しっかりしてなくてダサい。
美香子が舞子の近くにいるから…。

「私、美香子みたいにひとりじゃないんだよ。カワイイし、清楚だから、付き合ってる。舞子だってカワイイのに付き合ってないでしょ?原因は美香子なのよ!?」

ええ、そうよ。
私が言ったことは間違ってない。
美香子が舞子を悲しませているの!


どうしてそんなこと言うの?
ひどいよ、瑠未子。
いくら私のことキライだからって。
付き合ってないよ、私は。
ひとりぼっちだけど…。

「どうしたらいいの?舞子が付き合えるようになるのは」

瑠未子から離れたい。
舞子が何だって言うの。
ちょっと舞子と近付きたいからって。
瑠未子はクスッと笑う。

「舞子と縁を切って」

はっ…?
それで利益は、何…?

38:相原梨子◆x.:2018/01/07(日) 14:14

7.瑠夢子さんとオズの国

もしかしたら、夢でも見ているのかもしれない。
ふと目の前に現れた女の人…。
瑠未子にそっくりだけど、あんな嫌らしさは見あたらない。

「美香子、無理しないで」

その人に言われて、振り返る。
声までもが瑠未子にそっくり。

「私の名前は、瑠夢子。瑠未子の妹」

瑠夢子さんなんていたんだ。
全然知らなかった。
舞子は知ってたのかな…。

「ごめん、瑠未子が。あの、あなたをオズの国へ案内するために来たの」

「何それ」

瑠夢子さんによると、オズの国は、ココロに傷を抱えた人が行く国。
私はすでに、瑠未子によるココロの傷が出来ているらしい。

「さあ、行きましょう」

「行かない!舞子がいるから…」


舞子、舞子っ!
飛び起きたここは、舞子の家。
ベッドで寝てたんだ、私。

「美香子大丈夫?私の名前呼んだり、イヤイヤって叫んだり」

やっぱり、夢見てたんだ。
瑠未子がいたので、瑠夢子さんのことを聞いてみた。

「その名前を出さないで!」

瑠夢子さん、いるんだ…。
だけど、この反応何!?
何かあるはず!
えーい、もう一回寝るっ!


瑠夢子さんだ!
ちょっと話を…。

「来ないで、美香子!…とりあえず、オズの国へ行くわよ!」

「舞子ーーーっ!」

39:相原梨子◆x.:2018/01/07(日) 14:21

8.最高のパートナー

夢に出てきたのは、呼んだ舞子。
瑠夢子さんを説得して、お願い!

「美香子の話を聞いた?瑠夢子」

呼び捨て?
舞子、瑠夢子さんのこと知ってたの!?
瑠夢子さんは、舞子から視線をそらして、首を横に振る。

「美香子は、イヤって言ったでしょ?私もイヤだから、やめてくれる?」

舞子…。
瑠夢子さんはゆっくりうなずく。
そうすると、ケムリのようになって消えていった。

「ありがとう。舞子…!…?」


起きると、瑠未子はおらず、舞子だけがいた。

「ありがとう。舞子!!!」

「うんん。親友で幼なじみだもの。当たり前でしょ!」

うんっ!
やっぱり舞子は、どんな私も受け入れてくれる…。

「最高のパートナーだねっ!」

             (おわり)

40:相原梨子◆x.:2018/01/07(日) 14:26

あとがき

こんにちは。
『ココロのヤマイ』いかがですか?
この物語は、以上で完結。
女の子の危険な友情を描きました。
コメント、アドバイス、感想。
お待ちしております!


小説を書いているとあるあるなのが、最終章が短くなってしまう。
書いている方、ありませんか?
ああ、ネタ切れ…。
もう落ちかな…。
などなど、終わってしまうのです!
今回もそうですが。
これも改善しながら頑張っていきたいと思います!


ここまで読んでくださったあなた。
どうもありがとうございました。
他作品も目を通してください。
よろしくお願いします!

  大人な小説を書いてみた相原梨子

41:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 10:49

『キミ色に染まった世界で恋する』

登場人物

詩神 美海
お金持ちの家庭のひとり娘。
みんなは気楽だと思っているが、実はとても苦労している。

冴橋 来雅
美海の幼なじみ。
優しくて頼りになるイケメン。
モテているらしいが、自覚はない。

桜庭 涼
美海の秘密を知っている。
隣町に住むイケメン。
私立に通っている秀才。

42:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 10:50

作者からメッセージ

この物語は、本編『キミ色に染まった世界で恋する』のプロローグです。
見た上で、本編を読んでいただけると、ちょっとは楽しめると思います。
よろしくお願いします。

43:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 11:02

プロローグ

どうして私はこんな家に生まれてきたのか教えて…!
何度願っても答えは同じ。

「嫌味言ってるわけ?ウチらがお金持ちじゃないから。最悪」

そんなつもりで言ったんじゃない。
確かに『お金持ち』ってワードしか知らないあなたたちに聞いたら、きっとうらやましがるよね。
だけど、そんなの外だけ。
中では全然違うんだよ…!

「コラ!どうして泣いてるの、美海!やめなさい!」

おばあちゃんにほっぺたを叩かれる。
鈍い音が部屋に響いたかと思うと、おばあちゃんは私を睨み付けた。

「いい加減、いい子に育ってもらわないと手遅れになるわ。美海のために尽くしてるの。期待に応えて!」

ますます出てくる涙。
出来の悪い私が期待されてる。
理由は、ひとり娘で『詩神』家の人間だから。

「いい?美海。おばあちゃんやお父さんは、全てあなたのために働いたり、お金をかけたりしているの。美海が活用してくれなきゃ意味がないわ!」

「そっ、そんなことしてくれなくてもいいよ…!」

「バカ美海!引っ越しでもして、新しい環境に移ることも出来るのよ!」

イヤ、絶対イヤッ!
来雅と離れたら、何にも出来ないよ。
おばあちゃんに連れられて来たここは、詩神家の別館。
そこの一番狭い部屋に入れられた。

「あなたがいい子になるまで、別館で生活してもらうわね。あなたの部屋はここよ。いいわね?」

「はい…」

外から鍵をかけられ、何もないこの空間でただただ泣き続けることしか出来なかった。

44:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 11:14

美海が別館に!?
美海のお母さんからかかってきた電話に、思わず声をもらす。

「私、何も出来なくて…。来雅くんの部屋から、別館の一番狭い部屋が見えるでしょう?小さい小窓から。声をかけてあげてちょうだい」

「ああ、分かりました」

美海のおばあさんは厳しく、叩いたり叱ったりは当たり前。
俺も、美海と一緒にいて叱られたことがあった。

「じゃ」

美海のお母さんとの電話を切って、階段を駆け上がる。
部屋の窓を開けると、美海の家の別館に向かって話しかけた。

「美海、いるのか?」

「…」

いないのか?
ここの部屋じゃないか、あるいは部屋を移動したのか。
ドジな美海のことだし、寝てるか。

「来雅!」

あわてて後ろを振り返る。
な、何で俺の部屋にいるんだ!?

「小窓ね、古いから外れやすくなってて。それを外して出てきたの!来雅のお母さんいなかったから、セーフ!」

確かに、お母さんいなくて良かった。
お母さんは、美海は幼なじみなのにすごく嫌う。
近づいちゃダメとも言う。
俺は、正直美海のこと好き、だけど。

「お願い、来雅。助けて」

「別に構わんが」

すると、美海は地図を取り出して机に広げた。
何をするつもりなんだ。
ちょっと呆れつつ、だけど一緒にいられて嬉しい気持ちで地図を見た。

「ママの実家へ行きたいの。来雅も来たことあるでしょ?地図の見方が分からなくて〜」

45:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 11:27

電車に体を預けてスマホを操作する。
こんなところまで来ていいのか?
そう思っているとスマホが鳴った。

「もしもし」

「お母さんだけど、来雅、今美海ちゃんといるの!?」

どこからの情報だ…。
隣にいる美海を横目で見て「ああ」とつぶやく。
お母さんは呆れた声で続けた。

「どこにいるの?今から来雅を迎えに行くから」

「来なくていい。すぐ帰るから」

お母さんとの電話を切り、カバンの中にスマホを入れる。
すぐにスマホが鳴ったけど無視した。
ちょっとしつこいな、お母さん。

「いいの?来雅のスマホ鳴ってるよ」

いいんだ。
これで電話に出たら、美海を裏切ることにもなるし、美海が辛くなる一方だ。

「ねえ、来雅。電話が来雅のお母さんじゃないかもしれないよ」

はぁ〜。
スマホを見ると『美海のお母さん』と書かれていた。
うっ、マジか。

「もしもし、来雅です。あの、電話出なくてすみません」

「いいのよ。それより、美海が部屋にいなくて大騒ぎしているの。来雅くんの家に行ったらしいけど、帰ってきてもらえる?」

これも断らないと。
美海のために。
そう思っていると、美海が俺のスマホを手に取って耳に当てる。

「もしもし。美海だけど」

「ちょっ……み!……さい!……」

美海、叱られてるな。
少し話して、美海は電話を切る。
そして、にっこり笑って見せた。

「ごめんね、来雅。だけど、ママに話したから。ママなら何とかしてくれるから。実家へ行くのはやめないよ」

美海、強ぇ。
詩神毛の女って強い人多いし、美海は優しい時の方が多いけど、怖い。

「ちょっと来雅?降りるよ」

ギュッと美海が手を握る。
おい、みっ、美海…。

46:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 11:38

実家に行って、事情を伝えた。
ママのママだから、もうひとりの優しいおばあちゃんに。

「悲しかったし、怖かっただろう?ここで休みなさい。もう大丈夫。来雅くんもありがとね。休んでいきなさい」

良かった、ここに来られて。
おばあちゃん大好き…!
すると、玄関のドアがガラガラと開いた音がして、ひとりの男の子が入ってきた。

「みっ…。う…。お、おばさん。回覧板持ってきたよ」

何、この子。
なんか不思議な子だな。
私がずっと見せられてきたアルバムに写ってる気がする。
けど…そんなことないよね。
似てるんだ、きっと。

「ありがとう。いつも元気ねえ」

ちょっとナイショ話のような話をして、身をひるがえしてきた。
おばあちゃんも様子がヘン?
あの子って、何者なの…?

「美海ちゃん?どうかしたの?」

「う、うんん。何でもないや」

どういうこと?
頭がモヤモヤする。
ねえ、あの子はどこで見たの…?

「あら、電話」

おばあちゃんは受話器を取る。
…?
顔をしかめて、ちょっと会話をして電話を切っていた。
もしかして、詩神家から!?
背筋がゾクゾクする。
やめて、お願いだから…!

「大丈夫だって、もう。家に帰りなさい、美海ちゃん」

「待って、おばあちゃん。誰からの電話なの?本当に大丈夫!?」

おばあちゃんはにっこり笑って、頭をなでてくれた。

「おばあちゃんはウソをつかないわ。信じて」

…じゃあ、信じてみるよ。
おばあちゃんのこと。

47:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 11:53

家に帰ると、私は来雅とふたりそろって叱られてしまった。
来雅まで巻き込んじゃった…!

「ごめんなさい、来雅」

「いいんだ。美海だって、ひとりで叱られるよりいいだろ?」

ホラ、すっごく優しいんだ、来雅は。
おばあちゃんは、私を見下ろして、バチンと叩いた。

「ちょっ、おばあさん!」

「どの口が言うっ!お前が美海を悪い子にしているんだろう!」

違う、違うの…。
私が元から悪い子なんだって。
どうして分かってくれないの?
おばあちゃん、嫌い!

「お前は帰りなさい。もう、絶対美海に会わないことを誓いなさい。美海はこちらへ」

「イヤ、イヤ、イヤ!」

「美海っ!」

また、バチンと叩かれる。
来雅は帰っていいよ。
一緒にいたら、来雅まで…。

「美海はまた泣くのか!」

「う、うわぁーーーん」

おばあちゃんは来雅を無理矢理家の外に出し、私を別館の二番目に狭い窓もない部屋に閉じ込めた。
物もないし、窓もない。
電気もないから、何も出来ない。
私、どうしてここの家に生まれてきたの?
もっと強くてたくましくて、いい子はいるはずでしょ?
お願いだから教えて。
そして、私を救って。
こんなところにいられない。
やりたいことをやってみたいんだ。

「美海?」

「あっ、ママ…!」

「ちょっと。彩美さん?」

はっ…お、おばあちゃん。
せっかくママが来てくれたのに、見つかちゃったじゃん…!

「彩美さんって、美海にいい顔したいだけの母親だったのね」

48:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 12:58

違うよ、ママは優しいの!
何ですぐそうなるの…!?

「美海、おいで」

おばあちゃんに言われるままに来たここは、あんまり使わない部屋。
緊急話し合い室。

「全員集まったようね。…彩美さんが、美海を悪い子にしてるから、別館で幾日か生活して、反省してもらうわ」

「だから、違うって!ママは悪くないから!私が全然ダメなだけ!」

「美海は何も分かってない。美海を育てたのは彩美さん。美海がダメなのは、彩美さんがダメだからです!」

こんな風になってまで、私を守ってくれてありがとう、ママ。
だけど…。
私のせいでこんな風になるなんて、私イヤだよ…。

49:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 13:00

ありがとうございました!

これでプロローグは終わりです。
読んでくれてありがとうございました!本編は小説板にこれから建てます。
呼んでね!

50:相原梨子◆x.:2018/01/11(木) 15:16

『キミ色に染まった世界で恋する
             番外編』

登場人物

詩神 美海
お金持ちの家庭のひとり娘。
みんなは気楽だと思っているが、実はとても苦労している。

冴橋 来雅
美海の幼なじみ。
優しくて頼りになるイケメン。
モテているらしいが、自覚はない。

桜庭 涼
美海の秘密を知っている。
隣町に住むイケメン。
私立に通っている秀才。

51:相原梨子◆x.:2018/01/11(木) 15:20

今までのあらすじ

突然目の前に現れた男の子、涼にお出かけに誘われた美海。
涼の幼なじみで、涼に恋している真子に出会い、美海が涼に対する気持ちを伝える。
一方の涼は、美海が大好きで好きなものや趣味なども知っていた。
何度も告白した結果、友達から始めることになったけど…?

52:相原梨子◆x.:2018/01/11(木) 15:52

ー第1話ー

「どうしても一緒にいたい。そんな人がいるんだ。だから、ごめん」

告白されて断る俺。
その時頭に思い浮かんだ顔…。
詩神美海だった。

「じゃあ、これだけ教えて!一緒にいたい子ってどんな子?」

「可愛くて、優しくて、いい子」

告白してくれた子がクスッと笑う。
そして、肩をツンツンつっついてきた。
ちょっと恥ずかしくなる。
これを、美海がやってくれたらな…。

「外観はどうなの?私、そうなれるように努力するから」

「一目見て、可愛い」

「だぁかぁらぁ!」

何を答えればいいんだよ…。
ちょっと苦笑する。
告白してくれた子は「涼くんって天然かもーっ!その子にも、強引にしてそうかも〜。気付かなくて〜」とつぶやかれた。
美海に引かれる…っ!

「まあ、私はそんな涼くんが好きなわけだから考えといてね!」

その子は友達の元へ走っていく。
俺の名前は、桜庭涼。
好きな人はもちろん美海。

「ねーねー、涼くん好きな人がいるんだって〜!」

「え?マジ!?こないだいないって言ってたのに〜!」

「最近、放課後全然いないよね〜。もしかして放課後デート〜?」

「ちょっと、そんなこと言ったら、涼のこと好きなのに失礼でしょっ!」

いやいや、多分本人の俺の前で言われる方が失礼だって。
美海は、嫌がってるし…。
これが強引なのかな…。

53:相原梨子◆x.:2018/01/15(月) 20:49

来雅と帰り道を歩く。
私は、部活用具が入っているカバンを手で支えながら蹴って歩いた。

「美海、ちょっと離れて。お母さんがいるから」

来雅がトンと私を前に押す。
私はスタスタと早く家へ帰り、来雅は後ろから家へ帰る。
幼なじみの来雅のママは、私のことを嫌っている。
来雅といることを怒られるんだ。

「お帰りなさい、美海。相変わらず幼なじみと仲良しね」

家のドアを開けて出迎えてくれたのはおばあちゃん。
我らが詩神の怖い人。
詩神医療会社の事務所で、副社長を勤めている。
ちなみに、パパが社長。

「ただいま」

おばあちゃんがいるなんて、何事?
そう思いながらリビングへ行く。
本館のリビングは、パパかおばあちゃんがいればお客さんがいることが多い。
もしかしたら、今日もいるかも。
だけど、リビングにはパパもお客さんもいなかった。

「美海、今日おばあちゃんがいるのは、あなたの未来の相談よ」

未来…?
スクールバッグをすみに置いて、パパがいつも座る席に腰かける。
おばあちゃんはお客さんの席に座った。

「美海には、詩神医療会社の社長になってもらいたいから、いい学校に入ってもらわないといけないの」

社長って言葉は嫌い。
勉強が苦手でスポーツが得意な私は、できたらスポーツのサポート系の仕事がしたいと思っていた。
だけど、詩神のひとり娘の私が社長にならないと、詩神が倒産するんだ。

「中学校は公立のままでいいから、高校は私立か国立、都立に入る。大学は都内のいいところに入ること。今の段階で崩れたら引っ越し。いいわね?」

「はい…」

今はスポーツでカバーしている内申点だけど、そろそろヤバい。
40点以上の内申点がないと引っ越しになってしまうんだ。

「学校の方に、臨時順位付きテストの実施を協力してもらったわ。一桁だったらいいけど、一桁じゃなかったら引っ越しにしますからね」

「はい…」

「何、その力のない返事は。詩神の人間として恥ずかしくないの!?」

恥ずかしくない…。
社長になんか、絶対ならない。
詩神なんてほっといて、スポーツ関係の仕事につくんだから…。

54:相原梨子◆x.:2018/01/27(土) 17:21

翌日の部活の時間。
パパの事業パートナーの娘である、木下先輩に出会った。

「こんにちはー、詩神さん。相変わらず、木下より規模の大きい詩神」

規模の大きい詩神?
そんなに変化したの?
私、全っ然知らなかった。
すると、木下先輩は耳元でそっとつぶやいた。

「もしかして、詩神さん何にも知らない感じだったりするー?詩神に限って絶対ないよねー?」

「しっ、知ってますよ!」

こんなこと言っちゃったけど、聞かれたら何て答えよーっ!?
木下先輩相手に、意地張っちゃった!

「なんか、詩神さんってウチの姉に似てるとこがあるね」

「木下先輩、ひとり娘じゃないんですか?」

「うーん、ひとり娘なんだけど、訳あって姉が出来たみたいな。あんまり聞かんどいて」

木下先輩のお姉さんか〜。
きっと、かっこいくてキリキリしたお姉さんだろうな。
ひとり娘の私からしたら、兄弟姉妹がたくさんいるのって羨ましいな。

「詩神さん、ラケット」

学校の卓球ラケットを差し出してくる木下先輩。
まだ、持ってないからな…。
ラケットを受け取り、1年生の列の一番後ろに着く。

「詩神さんって、部長と仲良くていいね。羨ましい!」

前にいた子が振り返ってくる。
名前、知らないんだけどな。
その子はすぐ前を向いてしまった。
胸元の名前の刺繍が見えない。
瑠夏なら知ってるかも…!

「おーい、詩神さん、挨拶!」

「すっ、すみません!」

木下先輩に声をかけられて、あわてて姿勢を倒す。
挨拶する時の卓球部の姿勢。
身を起こすと、顧問の先生が練習内容を発表する。
だけど、私は上の空。
絶対ないんだけど、お姉ちゃんがいた感じがするんだよね。
夢で見たのかもしれないけど。

「じゃあ、部活スタート!」

顧問の先生の声が体育館に響いて、ラケットを手に卓球台に着いた。
いつもやってくれる相手は木下先輩。
相手側のところに木下先輩も着く。

「まずはフォアね」

一般的に赤いラバーの面でラリー。
だけど、なぜか『お姉ちゃん』というワードに引っ掛かった。
木下先輩のお姉ちゃん…。

「詩神さん、ごめんっ!」

木下先輩が打ったスマッシュが、見事に鼻の頭に当たる。

「ごめんね、詩神さん!痛くない?ヘンなところとかある?」

「大丈夫ですぅ…」

ウソ、めちゃめちゃ痛い!
木下先輩のスマッシュって言ったら、部内一だからっ!

「大丈夫だったら続けるよ!」

木下先輩は、フォアサーブを繰り出してくる。
私も安定した状態で打ち返す…。
すっごく見てくれてるな、木下先輩。
さっき、木下先輩がスマッシュを打つ前に私が打った時のこと。
あの時、ちょっと打ちにくくて、場所も動かされたんだよね。
だけど、動かずにラリー出来るようにしてくれてる。
木下先輩のお姉ちゃんも、きっとすっごく優しい人なんだな…。

55:相原梨子◆x.:2018/01/28(日) 20:53

ー第2話ー

部活が終わると、いつも通り涼くんが校門前で待ってくれていた。
家に向かって並んで帰る。
すると、涼くんが新しく出来た商店街を指差した。

「放課後デート?」

「ええええっ!」

涼くんは私の手を握って商店街へ入っていく。
寄り道って初めてだなぁ。
初めてが放課後デートだなんて…。

「あれ、美海?」

「ママっ!」

商店街の一角、お肉屋さんでお買い物をしていたママ。
ママは、ゆっくり隣にいた涼くんに視線を流した。

「この子は誰?」

「友達の涼くんだよ」

涼くんは目を見張る。
おばあちゃん(優しい)と知り合いの涼くんなら、ママのこと知ってるはずだもんね。

「おばさん!」

「涼くんだったのね。全然気付かなかったわ」

ママは、ちょっと涼くんとおしゃべりしてから別れた。
私と親子って言うより、涼くんと親子って感じがするんだけど。
…ちょっと嫉妬しちゃう。

「あれ〜?涼くんじゃな〜い?」

涼くんの名前が出たのでそちらを振り返ってみる。
知らない女の子の集団がいた。

「美海…逃げるぞ…」

「どうして?知り合いだったら、ちょっとくらい…」

最後まで言い切る前に、涼くんに手を引っ張られて走る。
こんなスピード無理だって〜。
めちゃめちゃ速いスピードで駆け抜けて行く涼くん。
運動は得意だけど、こんなスピードはさすがに無理っ!

「ちょっ…!追いかけるよ!」

女の子集団の子たち追いかけてきてるし〜!
どこまで走ればいいの〜!
ずいぶん走り、商店街の一番はしっこのところまで来た。
女の子集団の子たちは見えない。
涼くんが向き直る。

「ごめん、美海。絶対美海にだけは会わせたくなかったんだ…」

「誰だったの?」

涼くんは少しためらった。
だけど、顔を埋めながらつぶやいた。

「告白してくれた子」

「だ、だったら、余計向き合わなきゃいけな…」

「無理なんだよ!美海が…好きな人が目の前にいるのに、他の恋愛関係の女の子なんて目に入らないっつってんの」

え…っ?
涼くんは顔を赤らめる。
私まで恥ずかしくなってきたっ!

「あっ、涼くん見っけ!」

さっきの女の子集団の子たちだ!
だけど、仕方ないと言ったように、涼くんは動かなかった。

「例の女の子ってこの子なの〜?」

「めちゃくちゃ可愛くない!?」

誉められてるんだろうけど…。
告白したんだろう子がかわいそう。
ちょっとうつむいている。

「ねえねえ、何て言う名前〜?」

「友達になろ〜よ〜!」

「私は詩神美海です…」

ますますうつむく子がいることがイヤ。
私が来たことで、こうなっちゃったことがイヤ。
私は、その子に近寄った。

「あなたが…涼くんに告白した子?」

その子はコクンとうなずく。
私は、その子にそっと言った。

「気にしなくていいと思うよ。気持ちが言える人ってカッコいいね」


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