小説というよりもはや言葉の垂れ流し!!
起承転結完全無視!!
史上最悪の短編小説( 言葉の書きなぐりの跡 )ここに在り!!
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見てもいいしえーこんな糞な小説草すら生えねえとかそういうコメントを残してもOK
もっともっと神様神様しいお方はアドバイスとか置いていって下さっても○
初夏の日差しというものはとても憎たらしいものだ。こうやって登校するだけで、背中に、腕に、額に汗が滲む。立ち止まればきっと、汗は吹き出てしまうだろう。
案の定、校内の階段を上ってすぐにある教室の自分の机に荷物を降ろし、ふぅと息をひとつついただけで、ミストを浴びているときの微妙に濡れた気持ち悪い感覚がわたしを襲った。
教室には誰もいない。朝練組が荷物を置き、電気を消して出て行った後だろう。教室にがたがたと並べられた机の上には、ちらほらとリュックサックが置き去りにされていた。
暑さに窓をあける。爽やかな風が教室の掲示物をゆらりと揺らす。わたしの髪も揺れた。
スカートのポケットからハンカチを取り出して、風を浴びながら汗を拭う。少し、体温が下がったような。
風に当たりながら、校庭を見下ろした。陸上部とサッカー部が走っている。テニスコートでソフトテニス部がサーブ練習をしている。新入部員と思われる体操着の少年が、肌の焼けた先輩に声をかけていた。みんなよく頑張るものだなあ、と合唱部のわたしは他人事のように呟いた。と言っても、歌うのも結構疲れるんだけれど。
と、背後から人が入ってくる物音がした。ふわりと風に乗って顔をそちらに向ける。カトーくんだ。おはよ、とにかりと挨拶をされたので、おはよう、と返す。カトーくんとは同じ小学校だった。小学校のときは同じクラスになることもなく、元気なやつがいるなあ、としか思っていなかったが、中学校にあがり一緒のクラスになってからは、かなりのお調子者でわけのわからないやつだと思った。正直考えが軽いひととはあまり付き合いたくない。わたしはあまりカトーくんとは話したことがなかった、というより必要最低限の会話は入学してからの一ヶ月余り、避けている。
カトーくんは教卓の真ん前の机に荷物を下ろすのを、わたしは窓際に立ったままぼんやりと見ていた。カトーくんは確か運動部だったと思う。朝練は無いのだろうか。
「なんかさ、今日は顧問が出張だかなんだかで部活ねえんだよなー」
カトーくんが椅子に座りながら残念そうにそう言ったので、わたしは心を見透かされた気がしてどきりとした。背後で新緑に染まった木がざわざわとどよめく。ふうん、と素っ気無く返した。
「そういえばさー、テスト終わったら席替え、って聞いた?」
話が変わった。知らない、と首を横にふる。テストが終わったら、か。テスト。中学校のテストは初めてだから、想像がつかない。塾では色々と言われるけど、正直どうやって勉強すればいいかわからない。ある意味終わってる。
会話がそこで途切れた。わたしが短く返しただけだからだと思う。沈黙を縫うように、薫風が教室に舞い込む。机に乗っかっていたプリントがばさりと落ちた。「窓、閉めるね」と言って窓に手を伸ばすと、「おう」と後ろから返事が聞こえた。プリントを拾う音もした。
今日も歌を歌って帰った。立ちっ放しで足がぼうっとしている。さらにお腹も空いていた。
合唱部の新入生はわたし以外にもいるけど、その子達は友達と一緒に帰るらしい。昇降口で「お疲れ様」と言い合って別れた。
先輩と一緒に、校門前の坂をすべるように下る。
「ユキちゃんはさ、お友達と帰んないの?」
二年生のホノカ先輩が手提げ鞄を揺らしながらそう言った。
「ええ、まあ。先輩と帰るのは楽しいですからねー、」
そう返して笑うと、ホノカ先輩はふわりと微笑み返してくれ、ありがとう、とも言ってくれた。素敵な先輩だと思う。わたしの短いばさっとした髪とは違って、2つに結った長い黒髪が艶やかで、動く度にさらりと揺れる。顔も、少し肉のついたわたしの顔より断然に整っていて白い。
そのとき、大事な用を思い出した。先輩に、定期演奏会の服装について聞かなければ。今日聞かなかったら、明日からテスト前の部活動停止期間に入ってしまう。定期演奏会はその1週間後だ。テストのあとに演奏会なんて、この部活も中々ハードだ。
息を吸い込んで、口を開く。
「あの、せんぱ――」
「あ、ねーちゃん」
わたしの声はそこで途切れる。先輩とわたしとふたりで、背後を振り向く。カトーくんだ。こちらに向かって転がるように下り坂を降りてくる。人目も憚らずに大きく先輩へ手をふっていた。なぜそんなにも手をふるか分からなかった。もう気づいているのに。葉桜の下で、人影は立ち止まる。私たちも若緑の木の下だ。日は傾いていて穏やかだ。
ホノカ先輩をねーちゃんと呼んだカトーくん。そういえば、先輩の苗字もカトウだったような。
「ねーちゃん、なんかさ、みんな先帰っちゃったみたいでさー。一緒に帰ってくれよ、」
そう大きくてよく通る声でカトーくんは言う。ぽんと先輩の肩に手を置いて揺さぶった。わかったわかった、と先輩が面倒臭そうに了承するのを、わたしはきょろきょろと見ていた。
そんなわたしの様子に気づいたのか、先輩はカトーくんを指差した。
「わたしの弟なんだけど。知ってる?」
はい、と答えると、「同じクラスなんだよ」、すかさずカトーくんが喋る。「モリヤって合唱部だっけ?」と問われ、ん、と頷いた。「ユキちゃん、ソプラノなんだよ」「ねーちゃんと一緒?ねーちゃん先輩面出来るわけないだろー」「何よそれえ!大丈夫だって、ユキちゃん上手だから」「そんなことないです」「モリヤ、この先輩は敬わなくていいから」曖昧に笑う。「いや、先輩って声量凄くて、憧れの存在です」「やだユキちゃん、リョータにそんなこと言われたからって無理して言わなくても良いんだよ」「なんだよそんなことって」
はあ、と先輩が軽い息を吐く。
「ごめんね、なんかこんなやつついて来ちゃって……」
大丈夫です、と笑って返している横で、カトーくんは口を尖らしてまた何か言おうとした。が、先輩の冷ややかな目線で口は閉じられてしまった。もしかしたら美人は睨むだけで何でもできるのかもしれない。
わたしたちは緩やかに流れる小川にかかる石橋の上を歩いた。
「そういえば二人とも、テスト勉強進んでる?」
先頭を歩く先輩が後ろを振り返った。その発言は痛い。苦々しく「まあ、」と零した。ちらり、カトーくんを見ると、テストと言われてもきょとんとしていた。大丈夫なのだろうかカトーくん。なにそれおいしいの、と今にも口に出しそうな雰囲気だ。
塾や先輩からテスト勉強はちゃんとしないと、と言われ続けていたため、焦りを感じていたのはもしかして、まさか、クラスの中でもわたしだけなのだろうか。
「そうやって初回のテストを甘く見るリョータみたいなやつは沢山いるからね、ユキちゃん、あなたは偉いよ」
しみじみとした言葉だ。夕日が先輩の頬をオレンジに、黒に、染めている。
「だって俺べんきょーとかあんま得意じゃねーし…」
隣のカトーくんは肩を竦める。わたしも「どこから手をつけるべきか、全然」と頬をかきながらあははと力なく笑った。
「ふうん…まあ、そうだよね」
先輩の目は真っ直ぐどこかを見ているように見えた。
石橋を渡り終えると、川に沿って道がずっと伸びているところに突き当たる。先輩とは同じ方向だから、3人一緒に右に曲がった。
「じゃあ明日土曜日、勉強会しましょう」
曲がってから10秒後程、唐突にそう言われ、え、と思わず声を上げた。
「明日、そうね…図書館はどうせ人でいっぱいだろうから、わたしの家とかでどう?」
くるり、振り返って提案する先輩は楽しそうだった。カトーくんも口をだらしなくあんぐりと開けている。
「ねーちゃん、何言って…」
「そんな、先輩のお宅にお邪魔するだなんて、」
「いーのいーの!」
目を細めて笑う先輩は、自分に言い聞かせているようにも見えた。あまり動揺するイメージのないカトーくんもわなわなと後さずっている。カトーくんにとっては何かまずいことでもあるのだろうか。
いや、わたしもまずい。先輩の家だ。先輩。中学校に入ったら、そういうのには敏感になるわけで。
「先輩は頼られるのを待ってる、」
そう勇ましく鞄を肩にかけ直す先輩。
「明日予定、ないよね?」
ええと、まあ、と曖昧な返事をすれば、「じゃあ決定、」とふわりと先輩は口角を上げる。「リョータもだよ、勉強会。何があっても参加すること」カトーくんははあ?と声を上げた。
「そんな、ちょ、意味分かんね、」
背の高い先輩より5糎程低いカトーくん、ホノカ先輩の肩を掴んでぐわんぐわんと揺らす。
「ちょ、リョータ、やめ―― まあ、ユキちゃん、そんな気兼ねしなくていいから、おいでなさいね」
はあ、い、と分かったような分からないような声を漏らす。先輩の家はわたしの通学路の途中だから場所は分かる、けど。やっぱり、遠慮してしまう。
でも、行こう、かな。カトーくんがいるのはちょっと不安だけど。早々に放り出しそうだ。
わたしは仲のいいカトウ姉弟のとっくみ合いを視界の端にとらえながら、地平線に沈む日を見詰めた。
ホノカ先輩との約束の土曜日は生憎の雨。昨日は夕焼けが見えたと思ったんだけれど。
ということは、全部夢だったかもしれない。でもこうやって、濡れた傘を左手に持ちながらインターホンを押したときに、すぐにいつもの先輩の声が聞こえたから、それは多分違う。
玄関をあけてくれた先輩はにこやかに迎えてくれた。
先輩は、というよりわたしもなのだけれど、いつも身につけている制服を着ておらず、私服だった。わたしも先輩もその点では同じなのに、なぜかホノカ先輩はいわゆる「こなれ感」なるものが滲み出ていて、中学生、しかも一学年違うだけとは思えない。
「あの、先輩、本当にお邪魔していいんですかね……只の生意気な後輩じゃないですか、」
廊下を歩く先輩の背中に本心をぶつけてみた。ぶつけるのは失礼なんだけれど。ぽんと軽く飛ばす、くらいの表現が正しいかもしれない。
先輩はあはは、と笑った。
「生意気な後輩ー?そうかな、わたしの方が一年生のとき生意気だったよ。先輩に甘えてばっかりで。だからさ、わたし、誰かに甘えてもらわないと償えないんだ」
償うとかなんだか、そういう話になってくるとなんだか荷が重いです、と返すと、またくすりと笑い声が聞こえた。
「大丈夫。先輩は頼られるもので、後輩は頼るもの。頼られない先輩なんて先輩失格よ。なーんて言ったら、わたし、すぐに失格になっちゃうなあ」
そんなことないです。
本心だ。
ありがとう、と返ってきた。
本心でも本心じゃなくても、どうでもいいと思った。
全然短編じゃねえ
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先輩はドアの前で立ち止まった。かと思うと、がちゃりとドアノブを回す。
「ぎゃあ」という車に轢き殺されたかのような、聞き苦しい悲鳴が短く聞こえた。
「さ、入ってね」
何事も無かったかのように、先輩は90度開きの戸を押す。あ、はい、と微苦笑して、一礼してから踏み入れた。
そこはシンプルな部屋で、本棚には本が行儀よく背の高い順から澄まして並んでおり、写真はちょこりと机の上にあるくらいで、他は無駄な飾り物がないというイメージ。ただ、これまたぴしっと皺一つ無いベッドの上には先輩を睨むカトーくんがいて、そのまわりには本棚から出したと思われる漫画が乱雑に積み上げられていた。
「ノックぐらいしろよ」
「わたしの部屋なんだからいいでしょう」
飄々と受け流す先輩。
なんか嫌、っていうかかなり嫌
これはやめよう
僕は至って普通の人間だ。名も無い人間だ。普通という定義にもよるが、道を外れたわけでもなく、優秀で目立つこともなく、ぼんやりとした人間だ。寝て、食べて、学校で授業を受け、食べて、動き、寝る。そんな生活サイクルを延々と繰り返す。
今日も僕は教室の戸が開く音で目を覚ます。古びた校舎の戸は、誰かが開け閉めするだけでガラガラガラッと派手な音を立てる。
僕は体を起こし、欠伸をひとつするが、入ってきた生徒は僕に挨拶はしない。なぜなら僕は目立たなさすぎるくらいに普通な存在からだ。体を起こして欠伸をするだけでは、存在すら意識されない。
あーだからもーなんかさ、違うんだよなあ
とりあえず二次創作した 2回にわけて投稿するじょ
*
「ローラーコースターに乗りたいのですよ!!!」
目をきらきらとさせてこいつが俺に言ったのはたしか、昨日だったと思う。
そして今日、俺らは遊園地にいた。昨日の明日が俺の休日だったから、そういうだけ、だ。
「ろーっおらーっあこぉすったあー」
先ほどからそう口ずさむ、俺の手を握ってぶんぶんと腕を振り回す少年は元気に満ちている。
俺も別に楽しくないわけではないが、何せ昨日の疲れが溜まっている。うう、と小さく呻きながら首を回した。
と、きゃあ、という叫び声がした。叫び声、というより黄色い歓声というような。声のする方を向くと、そこには車両が急降下中のローラーコースターがあった。ぐるんと回転するループ、うねうねと波打つレール。あれはローラーコースターの中でもハードなタイプな気がする。
「あれ、乗りたいのか」
俺が指差すと、少年はこくこくと頷いた。
しょうがねえなあ、と苦笑いしつつ、俺は頬を掻く。
俺は「後ろ向き」と書かれた列にならんだ。
「え、後ろ向きですか」
「だめか?」
「や、ローラーコースターに乗れるなら、いいですよ」
本当にローラーコースターに乗りたいようだ。
「わくわくするですねー、」
がちゃんと安全バーで固定された身体。隣に座る碧い瞳のこいつは、顔だけこちらに向けてそう言った。俺はああ、そうだなと軽く答える。
「安全バー、緩くないか?」
「大丈夫なのですよ」
やがて、無理矢理トーンを明るくしたようなクルーの声が聞こえ、出発の合図の笛が鳴る。
「それでは行ってらっしゃいませ!」
俺らは後ろ向きにぐわんとひっぱられていく。
横から、少年の鼻歌が微かに聞こえた。
それはまるで、走る電車に乗って進行方向とは逆を向いているような感覚だった、当たり前だけれど。景色がいつもとは逆に流れていく。
引っ張られて引っ張られて引っ張られて、身体は高く高く高く上がった。
もう落ちるんじゃないか?落ちるんじゃないか?このなんともいえない期待感に、胸がざわざわする。地上をふと見下ろすと、所々に植えられた若い緑の木も風にさわさわと音を立てているらしかった。
そのとき、身体は落ちていった。腹の中身がぐわりと引っくり返る感覚に、おー、と俺は歓声を上げた。ここのローラーコースターは中々いい感じだ。
隣の碧眼はというと、叫び声などはあげていなかった。鼻歌も聞こえなかった。それが、周りの叫びにかきけされたのか、きちんと歌っていたのかは分からない。
風に髪が揺らめくのも束の間、また車両は上へ上へと上がる。そして、しゅるるるると落ちていく。また歓声が上がった。俺も上げた。今度こそ、少年の方からは何も聞こえなかった。
また身体は背中から上に引き上げられる。今回は先ほどの二回とは違って、上がり方がやけに丸っこい。視界にループの終着点が入ったとたん、髪が重力に従って真っ直ぐに地面を向く。一瞬のことなので頭に血は上らない。車両はすぐにぐるんと回転して、元に戻った。乱暴に口笛を吹く。
やがて俺らは螺旋状のコースを下から上へ高速で上がっていった。風が気持ちいい。薫る風を切る、というのはとてもいいものだ。
がががが、という摩擦音と共に、車両はホームへ滑り込んだ。安全バーが一斉に上がり、「お疲れ様でしたー」というあの作った声がスピーカーから聞こえる。
俺は車両から降りた。
「やー、良かったな――」
後ろを振り返った。
さぞかしあいつも楽しんだことだろう、と思っていたのだが、当の彼はというと、すっかり身を縮こまらせていた。
「――おい、どうしたんだよ」
声をかけて、少年を車両から引き摺り下ろした。もうホームからは皆出ており、次の乗客が待ち構えている。
「ローラーコースター、こわかったですよ」
あんなに乗りたがっていたというのに、こいつは半泣きだった。
「お前が乗りたいって言ったんじゃないか」
「知らなかったですよ、あんなにお腹がぐわんてなるなんて、知らなかったですよ」
知らなかったですよ、と少年は繰り返して、俺の背中あたりをぽかぽかと叩きながら歩く。
「まあ、新しいことがひとつ知れて良かったな」
「こわかったですよ」
どうやら今は話が噛み合わないらしい。
「しょうがないな、アイス買ってやるからローラーコースターのことは忘れろ」
いつまでもめそめそされても、俺は何もしようがない。
そういえば、こんな台詞、随分前にあのあいつに言ったような、言ってないような。
少年は「本当ですか?」と目を輝かせた。
本当にこいつは元気なやつだ。
あいつと似てるような、似てないような気がしながら、俺らはアイスを買いにぶらぶらと歩き出した。
「ねえ、あづ」
何さ、と気だるい目つきでわたしは相手を見つめる。相手はどこの誰か、と問われてもなんだかよくわからないと答えるほかはない。どこか自分に似てるような気もするし、全くの別人のような気もする。輪郭がはっきりしてるような、偶にぼやけているような。ぼやけているとすると、こいつの細胞ってどうなってるんだろう。
「あんたさ、このスレ雑に使いすぎじゃない」
彼は――彼女かもしれない――そう言って眉をひそめる。
わたしは肩を竦めた。
「何も考えずにぽいぽいってしてるだけだよ」
「それがいけないんだって」彼女――思えば男にしては髪が長いような気もするから――はどこからか音もなく現れた鉛筆でわたしをずいと指す。思わず顔をしかめた。
「どこがだめなんだよ」
「もうちょっとさ、中身のあることを書こうってことだよ」
「物事全てに中身があるわけじゃないってことを書いてるんだ」
「くだらない」彼女は目を回した。
「じゃあ何をしろって言うんだ」
「もうちょっと読み応えのあるものを書いてよ」
「書いてくうちにそういうスキルはつくんだと思うよ」
「ほんっとくだらない」がっくりと彼女は項垂れる。
わたしはうんざりしてきた。いや、最初からうんざり、だけれども。
「なんだよさっきからくだらないくだらない、って」
彼女は頬を膨らました。
「あんたの人格がくだらないんだ」
「ご愁傷様」
「そういうところだってば」
「待てよ、わたしの人格がくだらないってことはわたしが書いてるからいけないんだな」
「そう言ってるじゃないか」
「言ってないよ」
じっと睨む。今日は心なしか相手の輪郭ははっきりしているようで、目を視線で刺すのは安易だった。
ちくたくちくたくと置時計は無関心に鳴る。面倒くさくて時を早送りしたいのに時計の歯車には逆らえない、そんな気がした。
「時計が一番、くだらないと思ってるんじゃないかな」
「何を」
「わたしたちの会話」
彼女はあきれたように口を半開きにして、壁にかかる時計を見つめる。
「まあ、そうかもね」
「やっぱり時計のためにもこの話はやめにしよう」
「そうだな、時計がかわいそうだ」
「――なーんて昨日言ったけどさ、やっぱり中身空っぽすきだってば」
今日は昨日と違って雨だった。雨音に合わせて輪郭が踊ってるように、こちらからは見える。
「またその話?」
めんどうだな。
「空っぽだっていいんだよ、あづだか飴玉ってやつは空っぽだなーって思うための小説だから」
「いや、小説でもなんでもないよ」
「あづだか飴玉ってやつは空っぽだなーって思うための文の塊だから」
「よろしい」彼女は頷く。
何がよろしいんだろうか。こいつのことは本当によく分からない。
「それよりさ、あんたが何者かってことが重要だと思うんだよ」
わたしは、話を逸らすきっかけを見つけた、しめた、ってところだ。
「そんなことどうでもいいだろ、」
「あんたについての話を書けばちょっとは中身あるかなーって思ったんだけど」
適当にそう答える。彼女の輪郭はぶるっと揺れた。おや、こんなこと予想してなかったぞ。
「おう、まあ、そうだけどさ、」
ここまで来たらわたしの勝ちだ。
「じゃああんたについて書いたら中身のある文の塊ってことでもうこの話はいいよね、時計もうんざりしてるんだから」
彼女はうんともすんとも言わない。否定しないってことは飲み込んだ、ということで、わたしは席を立った。
貴方は『そう、全てが終わる前に』をお題にして140文字SSを書いてください。( https://shindanmaker.com/375517 )
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今見てるのは全部夢。ぼこぼこの城も、仲間の死体の焦げた臭いも、リンの淡青の炎も。夢ならどうにもできない。この状況も、僕の魔力の起こした悲劇も、それがもうすぐ終わることも。僕は思わず笑ってしまう。夢みたいだ。ごめんよ、と冷笑しながら夜空に呟く、そう、全てが終わる前に。
選択が間違っていることを知った。駅まで走ればすぐだろうと思ってゆったりしていたら、今目の前で列車が唸り声をあげて出発した。ああ、鞄が手から滑り落ちる。今日は大切な日なのに。車両が進んだ方から爆発音がした。ああ、あれに乗るはずだったのに。僕は本当は死にたくなかったのかもしれない。
https://shindanmaker.com/392860
「ね、あすか」
ふわりと微笑みを向けられて、わたしは一瞬心が浮いたような気がした。
「あ、うん」
ぎこちなく頷いたわたし。よし、と口角を上げた彼。すぐに相手は、ほらね、と友達と得意げに喋る。
少しわたしはぼうっとする。彼に、というより自分に戸惑ったのだ。
トイレから出て手を洗う。ふと、顔を上げると、鏡に自分が映っていた。取り柄のない、平凡な、顔。額の淵ににきびがひとつ、ぽつりとある。眼鏡が少し汚れている。少し肉のついた頬。特にこの顔を好きだと思ったり嫌いだと思ったりしたことはない。なんだか、可愛げがないなあ、とは思う、けれど。
きゅいっと蛇口を閉めた。指で頬をついとつつく。頬が濡れた。雫が指から手首を伝った。
少し、顔が明るいような気がした。
水道の隅で歯を磨き終え、冷房の効いた教室へ踏み入れた。同じ制服を纏った女子生徒のグループが、とある机の周りに集まってなにやら楽しげに会話を交わす。
「ねーちょっとゆめちゃん、やめてよー」
「本当は嬉しいくせにー」
「何それ、殴るよ??」
「そんなこと言ってたら嫌われちゃうよー、あのこに」
「ゆーめーちゃーん!!」
ひとりの女の子が、ばしばしと肩を叩いていた。
途端、さめた。冷めた。褪めた。醒めた。
なんだか、すうっとして、わたしは席につく。
ああ、何がなんだったのかな。
チョークでかかかっと黒板に数式を書く先生のはげた頭をぼんやりと見ながら、くるくるとシャーペンを回す。
わたしは何にどきりとしたんだろう。
ペンが手からすべり落ちて、かしゃんと足元の方で音を立てた。拾う気は起きなかった。
「ん、なんかさっき誰か何か落とさなかった?」
先生が後頭部を見せるのをやめた。わたしはシャーペンを拾った。
おえ??
てすてす