こんにちは!
梨花です。本編も出す予定ですが、まずは短編小説も復活です。
よろしくお願いします。
『あの夢の始まりは
あの恋の終わりだった
〜莉乃の未来図〜』
登場人物
紅城 莉乃
私立根野川学園中等部一年生。
人一倍責任感が強く、おおらか。
紅城医療総合病院を両親が経営しており、将来は継ぐことになっている。
紅城 優莉
莉乃の母で、紅城医療総合病院の社長夫人であり、社長の相棒的存在であり、外科医である。
紅城 賢治
莉乃の父で、紅城医療総合病院の社長であり、外科医である。
浜名 大輝
私立根野川学園中等部二年生。
莉乃の隣の家の幼なじみ。
小さい頃からずっと莉乃のことが好き。
「おやすみなさい」
なんて言っても誰の言葉も返ってこないんだけど…。
わたし、紅城莉乃は家でひとり。
ママもパパもまだバリバリ仕事中。
ふたりとも医者で、当直や夜勤で帰ってこないことも少なくない。
あくびをしながらそんなことを考えながらベッドに腰かける。
もう寝ないと。
紅城医療総合病院を両親で営んでいるので、継ぐのはひとり娘のわたし。
今からでも医療の勉強をしてる。
寝る時間も細かく決められてるし。
ベッドに寝転び、目を閉じると今日はとてもよく眠れそうだ…。
「莉乃起きなさい。ビシッとして!今日から社長なんだから!」
え…?
びっくりしていると、なぜかあっという間に病院に着いている。
意味が分からない。
医療知識もままならないわたしが…なんで?
「あなたは外科医よ。手術もしなきゃならない」
ママがそう語りかける。
現役外科医でしょ!?
意味がまだ理解できないわたしに、看護士さんが声をかけてくる。
「搬送されてきた患者さんの手術、紅城先生お願いします」
「え、あの…」
「心タンポナーデです。しんのうせんし、お願いしますね」
心タンポナーデは勉強したことがあるからよく知っている。
心臓と、心臓を覆っている膜の間、心膜腔に心のう液が急に貯まってしまうもの。
そう状態では心臓が圧迫されてしまい、しっかりと血液が送り出せなくて死んでしまう。
そのため、心のう液をしんのうせんしという手術方法で取り除き、心臓が圧迫されているのを処置する必要がある。
「わたし、できませんよ…」
「この間やってらしたじゃないですか。…できないのであれば、他の先生にお願いします。では、紅城先生は大動脈損傷の患者さんお願いします」
「大動脈損傷…!何するんですか?」
「紅城先生大丈夫ですか?カンファレンスで言ってたじゃないですか。大動脈を遮断してチューブを繋いで、別のところも遮断して止血するって…」
どういうこと?
大動脈損傷とかもう治らないって!
しかも、血管二回も遮断するわけ!?
「そんなことしても意味ないですよ。大動脈損傷って…。死亡確認は…」
「紅城先生が言ったんですよ?…他の先生に大動脈損傷の方やってもらいますね。では…心破裂…」
「無理です!」
心破裂なんて無理に決まってる。
死亡確認すればいいのに…。
「では何ができるんですか?他に、胃ガンの患者さんの処置、ごえん処置、子供の開胸手術の中から選んでください!」
「何も…できません…」
「そうですか。もう紅城先生には用はありません。…失礼しました」