気が向いたのでなんとなく。脱スランプ。
乱入やアドバイスは基本的におっけーです。
一応注意書きはしますけど、百合とか薔薇とか含むかもなのでお気をつけください
ゎっつ???これゎ、ひどすぎるょ。
ぜんぜん、だめぇ
““先輩””
『……咲那先輩、部長に告白したんだって』
ゆいちゃんの声が、脳内でずっとこだましていた。
――誰にも言うなって言われてるから、あみちゃんにしか言えないんだけど……。昨日の帰り、かなり本格的な恋愛相談受けちゃってさ。
――ふーん。まあ、他人の恋愛なんてどうだっていいし、そんなデリケートなことわざわざ言いふらしたりしないけどねー。……言う相手いないし。それで?
――あのさ。咲那先輩、部長に告白したんだって。
――………………え!? ふ、ふくぶちょうが、ぶちょうに? ……いや、咲那先輩部長のこと好きだったんだ。まあ……なんとなく、三役の中の誰かのことが好きだったりするのかなー程度には思ってたけど。
――まあ、本人からは『告った』としか聞いてないからなんとも言えないけどね。
――マジか。まあ、咲那先輩、三役の中で紅一点だしね……。
……ゆいちゃんは、私が先輩に少なくない好意を持ってることに気付いていたんだと思う。だから、普段から仲が良いって理由だけで教えてくれたんじゃない気がする。
まあ、そんなことはどうだっていいのだけれど。
先輩が告白、か……。告白しただけなんだから、別に二人がどうなってるのかとか分かんないし……。
知らなきゃよかったな。でも、知る前の自分には戻れない。
知れてよかった。今まで、そんなこと知らずに先輩の地雷踏みまくってた感じするし。
あーあっ、私も先輩のこと、すきだったのになーっ!
……なんて。言うほどショックは受けてないけど。
先輩のことは好き。でも、それが恋愛的な好きかどうかなんて知らないし、興味ない。
だから……私は特に変わらない。
……そうだ。変わらないんだ。
どっちにしろ、自分の感情に名前を付けることはない。付けたとしても、それを相手に伝える勇気はない。
こんなことだって、数年後には、思い出になってるはずだから。
――あーあっ、もう、私これから部活行けないよー! どんな顔すればいいんだろー。
これを知ったからって、それを醸し出すような振る舞いなんて、私にはできやしないさ。
――――そんなに……器用じゃないよ。
上げ
5:まつり◆klVAly.:2021/02/17(水) 16:41 『古里』
無人駅に降り立った。朝の匂いがしたのはほんの一瞬で、コンクリートで舗装された平らな道路と、赤青黄色の標識の方が強かった。
ガタンゴトンと去っていく電車を背に、髪がなびく。私は、佇むばかりだった。
――ただいま、とでも言っておこうか。
朝一番の電車で来たのだ。駅の構内に人はいない。もっとも、昼間に人が多いとも思えないのだが。
駅が出来たなんて言ったって、こんな質素なものじゃないか。鼻からフッと息が漏れた。新しいのに廃れて見える改札口を通り抜ける。
東京とは違う、タイヤ痕の少ない一本道、欠けていない白線、遠くに見える風車。
あぁ、風車といえば。遥か昔の記憶が引きずり出されて目を細めた。小さい頃は、こんな風に空を仰ぐと風車が見える野原で遊んでいたものだ。
見渡す限り緑色で、春はシロツメクサ、秋はコスモスが一面に広がる空間だった。
きれいな柄の蝶々を、走って追いかけた。四つ葉のクローバーを探した。タンポポの綿毛を吹き飛ばして遊んだ。シロツメクサで花冠を作った。アシナガバチからは全力で逃げたけど、ミツバチは近くで観察した。木陰に寝転んでお昼寝もした。秋には鮮やかな落ち葉をたくさん集めて、ままごとをした。ドングリも拾った。コスモスの花を摘んで、花占いをした。ダンゴムシをつついて丸めたこともある。
……一人の男の子と一緒に。こんなこと、一人でやるはずがないじゃないか。子どもが少ないド田舎とはいえ、ひとりぼっちで遊ぶなんてあり得ない。
――くんに見せたくて、必死に蝶々を追いかけた。
――くんにプレゼントしたくて、一日中四つ葉のクローバーを探した。
――くんと、どちらが遠くまで綿毛を飛ばせるか競争した。
アシナガバチが怖くて足がすくんだ私の手を引いてくれたのも――くんだし、ミツバチは怖くないと教えてくれたのも――くんだ。お昼寝する私を起こしてくれたのも、落ち葉でままごとをするときにお父さん役になってくれたのも、ドングリを拾って見せてくれたのも、ダンゴムシの丸め方を教えてくれたのも、全部――くんだ。
……「大きくなったら、僕のお嫁さんになってね」と渡してくれた花冠も、「――くんと結婚できる、できない」と言いながらやった花占いも、忘れていない。
でも、こんなものは所詮子供の遊びだ。今さら思い出して感慨深くなることなどない。
雑念を振り払うように頭を振って、今度こそ歩き出した。コツコツ、ヒールの音がやけに響く。
東京で出来た友達に勧められて、ネイルサロンに通い始めた。サークルの集まりのノリで髪も染めた。大学に入って最初に出来た彼氏とお揃いにしたくて開けたピアス。今では、スキンケアだって欠かさない。
「あー、日差し強。焼けるじゃん、サイアク」
明日、結婚式がある。彼が結婚する。
こんな陰気な町で挙式なんて、尊敬しちゃう。
私は、こんな遅れた田舎町なんて嫌いだ。重くため息をつく。
今にも白くなってしまいそうな水色の空に、目を逸らしたら消えてしまいそうな半月が浮かんでいた。空だけはきれいだったのに、今はそんなことないじゃないか。
無人駅が遠くなる。線路の隅に、たった一輪、桃色の花が咲いていた。
友人(はるかちゃん)とお題を交換して書いた短編。
「月」「花」「秋」「電車」
「好きな人の前で泣く」×「Just be friends」
※私が提示したシチュエーションに合いそうな音楽を提案してもらい、その曲の雰囲気を汲み取ってシチュエーションを書いた短文です。この音楽の二次創作ではありませんが、問題がありそうでしたらお伝えください。歌詞の引用などはないです。
あ、金魚泳いでる。「もう家に来ないでほしい」、そう彼女に言われたときに思ったことだ。
一週間前、彼女と一緒に行った夏祭り。金魚すくいで二匹の金魚を取って、それぞれ一匹ずつ飼うことにした。が、僕の水槽を泳いでいた一匹は、すぐに死んでしまった。
だから、僕の目を真っ直ぐ見つめてくる彼女の背景が赤色の尾びれだったとき、そんなことを思ってしまったのだ。あ、金魚泳いでる。
さて、僕とて「もう家に来ないでほしい」の意味が分からないほど鈍感ではない。二人きりで会う、この関係を終わりにしようということだろう。
「……聞いてる?」
静かに首を縦に振った。聞いてるよ。息を吸う度に、次は言葉を吐こうと思っているのに、掠れた空気が喉を通り抜けるだけなんだ。
それは、どういうこと? どうして? 口に出そうと思ったのに、喉から零れ落ちるのは意味のない母音ばかり。
僕は嫌だよ。意を決して大きな声を上げたつもりだったのに、言葉になりたかった二酸化炭素が唇から溢れ出て、彼女の瞳と赤色の尾びれが大きく滲んだ。