おや? 風紀委員長と風さんが審神者代理をする様です

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1:ぜんざい◆A.:2016/12/11(日) 14:27 ID:k..



 現在メインで
・【正味】自由に書きますわ【新しくスレ作るんもうエエ】
・僕のヒーローアカデミアオリジナル夢主

を連載しております、ぜんざいです。
 いやぁ、【正味】の方でもうスレはつくらない的なことを言ったわたくしでございますが、逆に書きたいものが増えすぎて【正味】の方がごっちゃになり始めているのでこれは流石に不味いぞ! そうですね不味いです隊長! と言う流れになり、作るおりに至りました。

 タイトル通りre!の雲雀さんと赤のアルコバレーノ風さんの二人が刀剣乱舞のブラック本丸に行きます。
 設定はそうですね……原作終了後ですかね、虹の代理戦争後も交流を続けた二人。
 ボスになったツナからの指令的な。ツナが御人好し過ぎて政府にゴリ押しされて雲雀さんに頼んじゃったと言うことで。

 とても本丸内が険悪です。一応本丸引き継ぎが来るまでの中継ぎ、所謂代理、所謂キレた刀剣男士を宥める役です。

 ここで、「ぁ、コラボとか無理無理ー」「なんか嫌」と言う方はお帰りください。

ルール
 私以外の小説の書き込みはご遠慮ください。コメントは大歓迎。
 暴言中傷ヤメテー(ノд;)

 以上! どうぞよろしく!



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2:ぜんざい◆A.:2016/12/11(日) 22:45 ID:k..



 ボンゴレファミリー10代目現ボス、いや、ネオボンゴレファミリープリーモと言った方がいいかな。その沢田綱吉に謙虚ながらに拒否不可能の雰囲気で押し付けられた政府からの依頼。もちろん僕は帰ってきたら沢田綱吉と一戦することを取り付けたけど、いまだ納得してない。
 だって、内容が僕向きじゃないし。内容は黒本丸を浄化して刀剣男士を手入れして和解すること。和解とかすごく僕向きじゃない。とても向いてない。僕はむしろ群れてる奴等を咬み殺したいのに、僕に群れろってどういうこと。
 まあ。最初は黒本丸とか刀剣男士って何? と沢田綱吉に問い掛けたら、いつも一緒にいる赤ん坊が全てを教えてくれた。

 歴史遡行軍。タイムスリップ出来る機械で歴史を遡り、歴史を修正しようとする奴等。西暦2205年ちょっと前から活動開始。
 本丸。刀剣男士の衣食住の整った、所謂、家。まあ拠点みたいなもの。
 刀剣男士。歴史遡行軍に対抗するものたち。西暦2205年から交戦開始。審神者に呼び起こされた名のある刀の付喪神。レア度やレベルがあるらしい。レベルが高い程強いんだって。怪我をしても手入れすれば治る。折れる(解刀する)=死(本霊に戻る)
 審神者(さにわ)。その刀剣男士を呼び起こす能力を持った生命体。そういう審神者訓練校の出や一般家庭から拉致にも似たようなもので連れてこられた審神者、中には少数だが戦闘系審神者なるものも存在していて一緒に出陣して戦うんだと。戦闘系審神者より稀まれな『黒審神者』。刀剣男士たちに無理な出陣を強いたり怪我を治さなかったり暴力を振るったり夜伽……まあセックスを命じたりやりたい放題する奴も。何それ咬み殺す、不純異性交遊も不純同性交遊も風紀違反だよ。
 黒本丸(ブラック本丸)。黒審神者が作った本丸を指す。ブラック本丸の庭は荒れ果て屋敷はおどろおどろしくなるらしい。黒本丸の黒審神者の最終的な顛末は今まで雑に扱ってきてキレた刀剣男士に殺されるか隠されるか。黒本丸になる大体の原因はとあるひとつのレア刀剣らしい。僕、刀には興味ないよ。

 今回僕が担当するのはすでに審神者の居なくなった黒本丸を引き継ぎが安心してやってこれるよう綺麗にすることだ。まあ、綺麗にすることは結構好きだ。邪魔なゴミや人間を咬み殺していけばすっかり綺麗に平和になる。……そうだ、沢田と言う名の草食動物には自由にしていいと許可が出されているから、第二の並盛を作ればいい。

 僕が自然とその問題の本丸の前で口角を上げていると頭の上から「何を考えていますか? 雲雀恭弥」と声が聞こえてきた。そしてその少し上からは並盛の校歌が流れる。



「……別に、どうもしてないよ」
「あなたは何か物騒なことを考えるときはそういう顔をします」
「うるさいな」



 今回、“元”赤のアルコバレーノの風も付いてきた。現在僕の頭の上で鎮座している。トリ(みんなはヒバードって呼ぶ)は今彼の頭の上で並盛中の校歌を元気よく歌っていた。風の白い猿はトリの上。
 どうしてか僕に顔がそっくりな赤ん坊は多少小うるさいもののいろいろやってくれるから楽でいい。赤ん坊のナリして僕より年はかなり上だけど。



「……今、失礼な事を思いましたね? 雲雀恭弥」
「思ってないよ」



 白い管狐がオロオロしてたけど、そんなの僕には関係無い。



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3:ぜんざい◆A.:2016/12/14(水) 22:41 ID:ELI



 管狐のこんのすけに言われて本丸の門を開ける。そこに広がる光景は荒れ果てた廃墟のような日本家屋と朽ちた庭だった。血の匂いは散漫し、血液が至るところに飛び散っている。不意に頭の上の風が「わっ」と声をあげて転げ落ちた。ばささ、と飛び立つトリと猿は不思議そうに風を見つめる。
 こんのすけも能面を被っているから分からないが、困惑したような雰囲気は読み取れた。
 僕は目を見開く風をしゃがんで持ち上げて頭に乗せる。



「どうしたの」
「……いえ、ちょっと荒れ果て様に驚いてしまいまして」
「……ふぅん。僕はそうとも思わないけどね」
「あなたと言う人は……」



 頭上から呆れたような声が聞こえるけどスルー。不意に目の前に黒い影が二つほど現れた。



「雲雀、刀剣男士ですよ」
「わかってるよ」



 今の僕は至極滑稽じゃないだろうか。仕事だからと泣き付かれて着た黒服に、頭に赤ん坊をのせて悠然と立つ僕は。まあ、そんなのどうでもいいんだけどね。
 ひらりと頭から飛び退いた風と同じタイミングでバッと仕込みトンファーを構える。刀剣男士は上から刀帳なるものを渡されたから誰が誰だか理解している。天下五剣、三日月宗近と山姥切の写し、山姥切国広。



「……ほう、今回の審神者はなかなかに好戦的じゃないか」
「無駄口を叩くな、三日月」



 ボロボロながらに笑みを携える三日月と白いボロ布を頭から被って顔の見えない山姥切に、僕は舌打ちする。
 群れている。
 舌打ちする理由は充分。それにここは第二の並盛にする予定なんだ。



「ねえ、山姥切国広、だったかな。そのボロ布、並盛じゃ風紀違反だよ。外して」
「……よくもまあ、上からものを言えるな」
「……外せ」



 フッ、と彼の目の前でトンファーを振るう。ぶわっと風圧で捲れたボロ布の中から覗く顔は金髪に端正な顔立ち。なぜ隠すのかわからない。
 目を見開く山姥切を横目に隣から振りかぶられた刀をぎぃんとトンファーで受けてから飛び退く。



「あなや、よく気づいたな」
「うちには剣士が二人もいるからね、今更だよ」
「ほう」



 口角が引き上げられた三日月の美しい顔を見て、チャ、とトンファーを再び構えた。



「山姥切国広、綺麗な顔をしてるじゃないか。僕は綺麗な顔は結構好きだよ」
「綺麗って言うな……!」
「だって綺麗な顔は痛めつけるとよく歪むからね」



 僕の言葉に山姥切は目付きを鋭くさせて睨んでくる。三日月も少し表情を変えて僕を見据えた。



「ひとつ訂正させてもらうよ三日月宗近。僕は審神者じゃない。僕は見ての通り人の上に立つことが苦手でね、人の屍の上にいる方が落ち着くんだ」
「っ、」
「!!」



 二人の顔が憤怒に染まる。前任とまあ言ってることは変わらないんじゃないかな、僕。でも男相手にセックスしたり群れてもないやつをなぶろうとは思わない。僕に指図してくる奴は別としてだけど。にやりと久々の緊張感に笑みが浮かぶ。
 だがしかし、それは直ぐに終わりを告げた。



「何しているのですか雲雀恭弥!!」



 離れた位置から男の怒鳴り声が響いてきた。



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4:ぜんざい◆A.:2016/12/23(金) 00:38 ID:Lr2

Noside


 横目でチラリと声の主を見ればこんのすけを頭に乗せて見るからに怒っている風。雲雀は彼がなんでそんなに怒っているのか分からないが、静かに彼を見据える。
 君に指図されたくないな。決めるのはいつだって僕でその他は従っていればいい。
 そんなことを考えながら風を睨む。風はその視線をものともしないように雲雀をいさめた。



「良いですか雲雀恭弥、飽くまで私達がここに来たのは中継ぎ、次に来る新しい審神者が安心してここで仕事が出来るようにするためです。戦いに来たわけではありません、ましてや、彼らを折りに来た訳でも無いのですよ」



 風の頭の上に乗るこんのすけの更に頭の上に彼の白い猿、リーチが鎮座しながらキィと一声鳴いた。真っ直ぐに自分を見つめる風に雲雀は溜め息を着いてトンファーを下ろした。



「君に指図されるのは虫酸が走るけど、そうだね。彼らを折ったりなんかしたら、あの草食動物は「相手は神様ですよ!?」怒るだろうし、戦いも取り止めになるかもしれない」



 雲雀の答えに風は満足気に頷いた。だがしかし、そこで黙ってないのは刀剣男士だ。赤ん坊に諭され戦いも出来ずあまつさえ「お前たちなんてすぐ簡単に折れる」と言う意味に取れる発言をされたのだ。赤ん坊に、目の前の雲雀にも。



「……腑に落ちんな、どうしてそこまで断言出来る」
「愚問だね、それは僕が強いからさ」
「はっは、口ではなんとでも言える」
「なんなら今すぐ……トンファーを使わず折ってあげようか? 手錠も有ることだしね」
「なっ! やめなさい雲雀恭弥! 三日月宗近!」



 二人の険悪な雰囲気の言い合いに風が渇を入れるも、それを許さなかったのは山姥切国広であった。彼は大層不機嫌な表情で思う。なぜこんなところにこんな小さな赤ん坊が居るのだろうと。流暢に喋っているのも気掛かりだ。
 風はアルコバレーノの呪いから解放されてはいるものの、まだ赤ん坊の域を出ない。解放されたとはいえ一気にもとの姿に戻るのではなく、月日と共に普通に成長していくらしい。ただ、彼の強さや精神力は日々進化しているが。
 既に危機を察知してその場を離れたこんのすけやリーチ、ヒバードは避難していた。賢い。
 そして山姥切が風に刀を思いきり振り下ろす。ゴッ、と地面は抉れたもののそこに風の姿はなかった。それにたいして三日月宗近も目を見開く。だが雲雀は依然仏頂面だ。
 風は山姥切が刀を振り下ろした瞬間足の力で飛び上がり、数回宙で回転してからスタッと山姥切の頭に降り立ったのだ、詳細を知らずにこれを見て驚かない人はいない。それは刀剣も然り。
 風はそのまま山姥切の首に鋭い手刀打ちを放って見事山姥切を気絶させた。そして残ったのは本体である山姥切国広のみ。気絶させれば刀剣に戻るようだ。
 風は再び宙をくるくると舞い、こんのすけの隣にスタ、と着地した。



「……なんと。規格外の赤ん坊だな、あの子は」
「あなたバカじゃないの? 彼は僕より年上だよ。ただの赤ん坊があんな真似できるわけないだろ」
「……なんだと?」



 再び鋭い目付きで睨み合う二人に風は溜め息を着きながら手早く三日月を気絶させた。雲雀が「なに余計なことしてんの?」といつかの代理戦争の時と同じオーラを纏いながら風を睨み付けた。風は首を竦めてトンファーを構える雲雀に「あなた一人じゃ危なっかしいので」と似たような言葉を告げた。



「……あのとき、結局戦えなかったよね」
「そうですね、それがどうかしましたか?」
「なら今ここで戦おうか、スペースも充分ある」
「ほんっとうに……あなたはどうしようもない」



 小さな手で自身の眉間を摘まむ風に向かって雲雀はトンファーを構えながら駆け出した。



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5:ぜんざい◆A.:2016/12/29(木) 22:13 ID:hYw


 こんのすけは思う。あの風と言う赤ん坊、どうしてあそこまで落ち着き払って流暢に言葉を話し、泣き喚かず強いと認識される代理、雲雀恭弥と同等に戦えているのか、と。もちろんこんのすけはアルコバレーノなど知らされておらず分からなくて当たり前なのだが。

 雲雀は右でトンファーを大きく振り被り、風めがけて攻撃が放たれた。風はそれを右手で捌き、雲雀の懐に入り込み掌低を食らわせる。スイートポイントはぎりぎりで交わしたもののモロに入ったソレに顔をしかめた雲雀はそのまま膝を突き上げ、膝蹴りを繰り出す。風はそれを踏み台に飛び上がってくるくると宙を旋回しながらスタッと地面に着地した。明らかに風が圧している。まあ確かに、虹の赤ん坊(アルコバレーノ)になれるのはその時代の世界最強の七人__『選ばれし七人』のみ、強いに決まっているのだが。
 雲雀は苛立った様子で大きく舌打ちして雲ハリネズミのロールを形態変化(カンビオ・フォルマ)させてボンゴレギアを纏った。



「……本気ですか」
「こうでもしないと君を咬み殺せない」



 そして再び二人が戦いを始めようとしたとき、「待ってくださいぃぃ〜!」と間に飛んでくる白い物体……管狐のこんのすけだった。
 小動物を痛めつける趣味などない雲雀と元々が心優しい風がぴたりと動きを止めて手を下ろす。雲雀は不機嫌そうに「なに」と問うた。



「お、お二人は中継ぎに来られたのでしょう!? 争っている場合では有りませんよ!」
「……しまった、私としたことが、すっかり……。雲雀恭弥、一時休戦です」
「ヤだ」



 止める自分に向かって燕のように駆け出す雲雀に、風は溜め息を吐き、告げる。



「……別に良いでしょう雲雀恭弥。中継ぎが終われば帰って沢田綱吉と好きなだけ戦える。もしかしたら跳ね馬とも戦えるかも知れません。確か六道骸やヴァリアーも記憶が正しければ……。
私は任務が終わってもしばらく弟子に……イーピンに修行をつけなければならないので日本に滞在します。その間私ともいつでも戦えるのですから早く中継ぎを終わらせましょう、終わらないと帰れないのですよ。即ち沢田綱吉と戦う予定が伸びる、それは嫌なのでしょう? 貴方は戦いとなると三日三晩飲まず食わずで戦えるのですから、長くなってしまいます」



 障子越しに聞いていたらしい刀剣男士たちが「三日三晩飲まず食わず!?」「えええ!?」と驚く声が聞こえ、足音が遠ざかっていく。風と雲雀はそれを横目に、睨み……いや、見つめあった。とうとう雲雀が折れて形態変化を解き、見慣れない黒服に戻る。



「……分かったよ。ただし、僕の邪魔をすれば咬み殺す」
「はい、どうぞ。出来るものなら」



 風はぽすんと雲雀の頭に胡座をかいて姿勢良く座り、その上にヒバード、リーチと小動物が続く。ちなみにこんのすけも。
 特に雲雀は何も言うことなく、無躾に縁側を土足で上がり、そのまま障子をすぱんと開いた。鋭い目付きで中を見るも藻抜けの殻、なぁんだと呆れた雲雀は靴を庭に投げ捨て家屋の中へ入っていった。



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6:ぜんざい◆A.:2016/12/29(木) 23:09 ID:hYw


「見た目通り、ですね……。血塗れで汚いです」
「僕が黒曜ランドに殴り込みに行ったときも、こんな感じにしたね。懐かしい」
「っ……ほんっとうに、あなたと言う人は! もう少し手加減をなさい! 仮にもボンゴレファミリー最強の雲の守護者なのですよ!? 弧高の浮き雲なのですよ!?」
「僕はその時守護者じゃないし、今も守護者になった覚えはないよ。それに僕は弧高の浮き雲って呼ばれ方、好きじゃない」
「〜〜〜〜!!! あー、もうっ!」
「ワオ。君、今日はよく喋るね」
「あなたのせいです雲雀恭弥!」

 もう、とぷんぷん頭の上で怒る風の言葉を適当に聞き流しながら敵意或いは殺意のこもった視線をひしひしと感じていた。場所はある程度分かるが雲雀は今興が削がれてそんな気にならない。風も感じて入るものの長年の経験かいざ奇襲不意打ちにこられても反応できると踏んでいるから何も言わない。

「はあ、疲れました……」
「なに、僕のせいだって言いたいの」
「そうですよ。お腹が空きました、料理場へ行きましょう」
「指図しないで」
「はいはい」

 キッチンどこ。と立ち止まる雲雀に風は頭の上で地図を広げ、「真反対の方向ですね」とさらりと告げた。風の上に乗るリーチの更に上にいるヒバードが「反対、反対!」と楽しげに声を発した。そう、と返した雲雀はくるりと踵を返して示された方へ進んでいく。
 途中風に右だ、左だと言われながらその方向へ足を動かし、ついにキッチンにたどり着いた。おかしなものだ、外観は日本家屋のクセに、料理場は現代風。雲雀の実家も本丸と比べ物にならないぐらい大きな日本家屋でキッチンはIHなどの現代のものなのだが、ここまで最先端のものだとは……と言葉を失う雲雀。意外と家は名家な雲雀である。
 冷蔵庫を覗けば驚くほど食材が揃っており、風は雲雀の頭から降りて高めの台の上に着地しフムと嘆足する。

「これなら普通に炒飯でも作れそうですね」
「なに、君が作るの」
「はい。元々イーピンに炒飯や中華饅などの料理を教えたのは私ですから」
「伊達に年取ってないね」
「お黙りなさい」

 今日はよく口が回る、と風は雲雀を見る。こんのすけは雲雀の発言に内心年を取るも何もまだ赤ん坊なのではと見た目に騙されていた。
 そこから手際よく下準備を進めて行く風の後ろ姿を見つつ、がたりとそこら辺にあった椅子に腰を下ろして雲雀は一息ついた。眠い、そう、彼はとても眠いのだ。ここ数日、大きな任務があるとわかっているくせに貫徹しないと完了しない仕事を沢田綱吉に言い付けられていたからだ。故に雲雀は、ここ数日寝ていない。うっすらと隈も出てきてしまっている。
 ただ、寝る前に雲雀はVGのブレスレットから雲ハリネズミのロールを呼び出した。

「ロール、この部屋の出入り口付近に球針態出してくれる? 寝てるときに襲われたらどうしようもないからね」
「キュっ」

 こくりと可愛げに頷くロールはボボボ、と小さめな球針態を複数出入り口に設置した。それを見て満足気に微笑んだ雲雀はロールの頭を一撫でし、ついでにトリ(ヒバード)も頭の上で睡眠の体勢を取ったので雲雀はロールを膝で撫でながらゆっくりと眠りについた。

「代理様は寝てしまいましたが、どうかししたのですか? 風様」
「私に様付けはやめてくださいこんのすけさん、様をつけて頂くほど私は良いことはしてませんよ」
「風様は良い方では?」
「まあアルコバレーノの中でも穏やかな方だと自負してますが、バレれてしまえば捕まるようなこともしてますよ」
「?」
「要人や、マフィアボスの暗殺、政府の国家機密情報の入手などを少々」
「!?」
「護衛の依頼もちゃんとありましたよ。あの頃は大金の報酬が手に入るという喜びよりも、世界最高の実力を持つ他六人とチームで仕事をできるのが楽しくてですね……だからなのでしょうか、私達七人は呪いをかけられ赤ん坊の姿になり、首には外せないおしゃぶりがありました。今はもう呪いは解けていますが、体は一気にもとの姿に戻るのではなく、月日と共に普通に成長していくようです。おしゃぶりは、長年付き添ってきたものですから無いと違和感がありまして」
「そんなことが。では風さんは、相当お歳を召して「お黙りなさい」

 こんのすけと風にこんな会話があったことは雲雀は知らなかった。

7:ぜんざい◆A.:2017/01/02(月) 22:28 ID:cek


 雲雀は鼻を擽る良い香りで目が覚めた。目を開いて見渡せば、風が丁度炒飯を作り終えた頃で、そろそろか。と腕を組み直した。



「出来ましたよ雲雀恭弥」
『……ああそう』



**

 風の作った炒飯を腹に納めたあと、再び一行は本丸を歩く。雲雀はなかなか見つからない獲物に不機嫌さを増し、上の風は曖昧に笑う。



「……見付かりませんね」
『ねえ管狐、本当にあの二人以外居るの? あのとき色々気配を感じたからいるのは分かってるけど、居るの? 生きてるの?』
「も、申し訳ございません! 刀剣男士の思考は私もあまり存じ上げませんので、どこにいるかまでは……」
『……ふうん。なら、暇になるね。財団の人員を寄越して掃除でもさせようか、薄汚いし。見てるぶんには構わないけど、住むとなると話は変わる』
「楽は駄目ですよ雲雀恭弥、いくらあなたがトップだと言っても、反対する者も出てきてしまいます」
『そうなったらその人は草食動物か僕の影に隠れてこそこそ過ごしていた弱虫ってことになるから切り捨てるよ。弱いやつは必要ないからね』



 弱いやつは必要ない。雲雀がそう言って凶悪な笑顔を浮かべた瞬間、風はバッと後ろを振り向き、雲雀は勢いよく手錠を投げた。一気に殺気立つ二人には脱帽ものだとこんのすけは思う。
 彼らの背後の曲がり角で様子をうかがっていた、少年のような見た目の七色の羽の髪飾りで短くポニーテールにする刀剣男士にその手錠は掛けられていた。



『……なにきみ、弱いやつは必要ないって言った瞬間殺気を放ってきて』
「……やりすぎです雲雀恭弥。針は絶対に出してはいけませんよ、腕に刺さってしまいますから」
『君は関係無い。……ねえ、睨んでないで何か言ったらどうなの小動物』



 むすっとした顔で刀剣男士を見つめる雲雀。ここでひとつ問題が起こっていた。最初の戦闘のせいで彼の頭に詰め込んだ刀剣男士の名前と顔を忘れてしまっていた。誰だろうと若干唸る彼の頭の上で、風が困ったように笑って脳内で彼を観察した。
 確か彼は太鼓鐘貞宗、伊達政宗公の懐刀の短刀で、同じ伊達政宗公に所有されていたと言う繋がりから燭台切光忠と仲が良かった筈。
 風は伊達政宗の影響で雰囲気が伊達っぽいのかと息を付いた。



『……君は今一人なの?』
「……あぁ、一人だ」
『へぇ』



 小さいのに一人で僕を眺めて居たのか。いや、監視か。
 満足そうに呟いた雲雀は手錠を外してから指でくるくると回す。それを見た太鼓鐘貞宗は大きな目を真ん丸にして口を開いた。



「攻撃しないのか? 山姥切や三日月の時みてぇに」
『……山姥切と、三日月……って誰』
「お、覚えてねぇのか!?」
「最初に戦った方々ですよ、雲雀恭弥。あなた最初に三日月宗近といがみ合って居たじゃないですか」
『ああ、あの人たちか』



 へえ、彼らが。と納得する雲雀の様子を見て、太鼓鐘貞宗が同じ疑問を再び口にした。



「……攻撃しないのか?」
『別に僕もなにもしてない奴相手にトンファーは振り回さないよ。ましてや小学生みたいな子供にはね。
 攻撃してくる奴か群れてる奴か僕に口答えする奴じゃないと。あと草食動物。草食動物は鬱陶しい、束にならないと自分の意見を大きく主張できないし、自分より下だと思った奴には大きく出る。その上僕みたいな権力者が出てくると小さくなるんだ』
「……」
『弱いでしょ、草食動物の群れは。だから僕は風紀を正すために動くの。今回のこの中継ぎの仕事だって向いてないから一回断ったんだよ』
「……あんたは、大倶利枷羅に似てるな! 「馴れ合うつもりはない」っつってさ!」
『へえ。良いことを言う人は居るね』



 太鼓鐘は少し警戒しながらももう、雲雀に対しての恐怖は無くなっていた。気付いたからだ、雲雀は前回の馬鹿な審神者のような人物ではないのだと。



.

8:ぜんざい◆A.:2017/01/04(水) 23:02 ID:cek



『ほら、とっととどっか行って。群れる気は無いよ』
「……もっと他に言い方はないのですか?」
『必要ない、僕は仕事をしに来ただけだよ』



 雲雀はそう太鼓鐘に言い放った。言い方は冷たいが太鼓鐘も去る様子だったので「じゃな! 手錠の兄ちゃん!」ととたとたと奥へ姿を消した。そのあと遠くで「みっちゃーん! 鶴さーん! 大倶利伽羅ー!」と大声で叫んでいたので偵察の結果を教えにいくのだろう。



「っと、散策の前に、庭に刀の状態で放置してしまっている三日月宗近と山姥切国広を拾いに行きましょう」
『勝手にしなよ。僕はここで言うところの『出陣』ってやつをしてみるから』
「別行動ですね、分かりました」



 風はひょいと雲雀の頭から飛び降り、ぺこりと一礼してからこんのすけに「あなたは雲雀恭弥についてあげてください」とだけ告げ、トタタ、と軽い足音共に素早くこの場を去っていった。



「……何者ですか、風さんは」
『世界最強の七人の内の一人さ、いずれ咬み殺すけどね』



**

 一人……いや、一人と一匹になった風と白い子猿のリーチは廊下を駆けて先程の縁側へとやって来た。ここで気付く、この姿では刀が大きくて運べないと言うことに。



「……どうしましょうリーチ、盲点でした。呪いが解けたとは言えまだ赤ん坊……代理戦争のように元の姿戻れれば良いのですが……無理でしょうね」



 頭の上でキキッと鳴くリーチに苦笑いして二つの刀の前でどうしようかとうんうん頭を悩ませる。



「引き摺って運びましょうか……。いや、でも彼らも刀剣男士とは言え神、人間の手が届くところには居ない。嘗て名だたる名刀ですから……引き摺るのは罰当たりですね……」
「キキッ」
「お前は呑気で良いですね、リーチ」



 うんうん唸っていたら後ろから「おいあんた!」と幼い声が掛けられる。振り向けば先程の太鼓鐘貞宗が中腰で風を覗き込んでいた。



「さっきの手錠の兄ちゃんは?」
『我慢の限界だったのでしょうね、憂さ晴らしに出陣しましたよ』
「ええ!? 一人で!?」
『こんのすけさんにも付いていってもらってますけど……?』
「いや、大丈夫なのか!? 怪我とか……難易度が高いとこじゃ俺達でも重傷負ったり折れるんだぞ!?」
『……いえ、逆に敵の方が無惨な姿になってるでしょうね、血の海どころか粉々の方も予想されます。手加減と言うものを知りませんので。なにせ彼は戦闘狂ですから』
「……すげぇんだな」
『世界最強と謡われるマフィアの幹部でも最強の座についてますからね。だから彼も雲雀恭弥にこの仕事を与えたのでしょう』
「へー」
『自己紹介が遅れました、風(フォン)と申します』
「おう、俺は太鼓鐘貞宗」



 彼はしばらくしてからはっとして「名前名乗っちゃダメだろ!」と声をあげた。



『大丈夫ですよ、対策はしてますし。もしも神隠しされたとして神域に連れ去られても自力で出れる自信がありますので』
「お前赤ん坊だろ……?」
『ふふ』



 それから風はそうだと呟き、「三日月宗近と山姥切国広を運ぶのを手伝っていただけませんか?」と頼んだ。太鼓鐘はぽかんとしたのち、「なんであんたがそんなことするんだ?」と疑問を口にした。



『なぜって……彼らは名刀なのですから、当たり前じゃないのですか? 元より、物が落ちていたら拾うのが一般的です』
「……そうなのか」



 少し嬉しそうにした太鼓鐘は「任せろ!」と三日月と山姥切を担ぎ上げた。



「迷惑をおかけします」
「いいってことよ!」



.

9:ぜんざい◆A.:2017/01/15(日) 01:16 ID:Ldk

薬研side

 黒いスーツを着た男、雲雀と言うらしい少年は擦った刀傷せいでのボロボロのジャケットを腕に抱え、頬に返り血をべっとりつけた無傷かつ少しご満悦気味で本丸に帰還してきた。
 最初、ゲートを潜って出ていく様を見たとき、少し鼻で彼を笑って死んでしまえと思っていたのに。返り血を一杯に浴びて無傷かつ凶悪な笑みを浮かべた少年は、生きて帰還してきた。
 粟田口の部屋は前回のクソみたいな審神者に大部屋を与えられていたので一兄を含めた兄弟で障子から伺っていたものだから、彼の口元に浮かぶ笑みを五虎退と秋田が小さく悲鳴をあげて後ろに下がった。二人だけではない、この部屋にいた全員が身をすくみ上がらせた。恐怖、前回の審神者でも感じたことのなかった本当に殺されてしまいそうな恐怖。
 雲雀は遠くから眺めている俺達が息を上がらせるような殺気を放っていて、近いにいたら失神してしまいそうだ。
 そこに近付いていく小さな赤い塊。雲雀と共に来たと言う赤ん坊、風だ。太鼓鐘曰く、俺達同様見た目通りの年齢ではなくて雲雀より年上のよう。やはり見た目に騙されてしまってはいけないな。あの殺気の中平然と微笑んでいられるのは彼もまた想像を越えた実力者だからだろうか。俺っちには、到底無理だ。
 二人はしばらく会話をしていたかと思えばいきなり雲雀が赤ん坊にトンファーなるもので殴り掛かった。それにはみんな息を飲む。だが、あの赤ん坊はひらりと宙返りしてそれを避け、そのまま彼の頬に中国拳法独特の構えで蹴りを入れた。ダイレクトに直撃したそれに彼はよろめくもガッと足で支えて次は回りに出した小さな塊をトンファーで打つ。あの威力の物を拳でいなす赤ん坊はただ者ではない。ただ、ひとつだけ腕に直撃し、体はそのまま後ろに吹き飛ばされた。なんて威力だろう。
 だが、その戦いは呆気なく終わる。



「待てって手錠の兄ちゃん!」



 その戦いの最中太鼓鐘が一人で無謀にも割り込んできたのだ。誰もが殴られる、と思ったのに雲雀はトンファーを下ろして駆け寄ってきた太鼓鐘を見つめた。とてとてと歩いてくる風を抱えあげ頭に乗せた雲雀は興醒めしたらしく太鼓鐘と少し言葉を交わしてからすたすたと気丈な振る舞いで本丸内に入っていった。
 ほっと溜め息をつく太鼓鐘に俺達は障子を開けて駆け寄る。



「太鼓鐘! 大丈夫か!?」
「大丈夫!? 太鼓鐘!」
「おう! なんとも無いぜ!」
「どうしてあんな中に突っ込もうとしたの!?」
「だって、あそこで止めねぇとあの人たち三日三晩何も飲まず食わずで戦うぜ?」
「弱ったところを叩けば追い出せるじゃん! なにしてんの!」
「あ……いや、その、本丸が、多分消し飛ぶけど」
「……正しい判断だ、太鼓鐘」



 本丸壊されちゃ、たまんねぇよな……。



.


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