混沌

軋轢さえなければここを使ってくれ。
ここは殽乱の地、崩壊した世界だ。

我が名が叙述されていない。

我は謑髁たる愚者、ソベルビアだ…！

私の魔術は幾星霜の隔たりの中で、激烈な磨耗にも、本来であれば魔術因子がブレる驟雨のさなかにも、頑強に具象化することができた。名付けて不動の魔術だ。

寒気がする程の厨二っぷりですな。

我が名はシェミハザ…！
この、物質界(アッシャー)の頂点に立つ王である…！

君の魔術は、具象化の力を有し、さらには魔術因子に対する阻害にも鞏固とはな。
客観的に見れば完璧な魔術とも言える。
まあ、それに対する反駁ではないが、私の持論としては、この世のどんな森羅万象であろうと必ず欠陥というものが付属すると考えているのだよ、また、その欠陥を巧妙に利用できれば、相手は、有形的にも無形的にも瓦解してゆく。
この先、厄介になるモノはすべて觝排すべきだと私は思うのでね、
いずれ、私と戦うことになるかもしれないが、その時までに知覚と覚悟をしておくのだな。

ベルくん！ところで、知り合いに美少女はいない？

(大剣をヤマダの首部へと突き付ける)
そんな些事な、私が知っているとでも思うか？(首に切れ込みを入れる)
あまり、跳ね上がって跳梁するんじゃあないぞ。
君は愚かだ。実に愚かで稚拙だ。
その無為な行いが己を危険にさらしていることをよく考えるんだな。

痛って！？コラ、乱暴はダメだぞッ☆
ヤマダはただ、現実逃避をしようと美少女と冒険したいなー。なんて思ってただけさ！あ、別にベルくんとでも良いんだよ？

現実逃避、ならば天に召すことだな。
私が円滑に早急に早期に送り届けてやろう。

ベルくんになら殺されても良いよ！でもそれ以前に、ベルくんは人を殺したりしないよね。この良い子めっ☆

この女…！！
(ヤマダを逃げ場のない壁へと乱暴に突き飛ばし、ヤマダの真横に大剣を突き刺す)
…いいか？よく聞け。私は極悪な悪魔であり、悪霊が集う悪党の首領でもある。
ヒト一人ぐらい殺めることなんていくらでもできるんだからな。

ベルくん、私を…、殺して良いよ。

(頭から血を流し、笑顔で問いかける。ヤマダは信じてるぜ、ベルくん。)

(大剣を壁からゆっくりと引き抜き)
…フン……腹が減った。
私は暴食なのでな、常に飢餓状態ゆえ、常に食欲が旺盛なのだよ。
また、飢餓状態の中でも、今は極限に飢えている。
己の幸運と私の不運を喜ぶがいい。
(その場から離脱し、どこかへ歩いてゆく)

ベルくゥゥゥゥゥン！！
やっぱり優しいね、君は！私はより一層惚れたよ！ショタよ！

これにて〜やまだかずこのベルゼブブへの愛〜
を、終了致します…

かずこじゃないよかずえだよ。

おっ！
きたね！
かずえかー、って本名出してんじゃん！！
危ないよ〜！

おうふ。

私の煩悶を哀哭させたのだが、この世界にはしっかりと轟いたのだろうか。
些か疑念ではあるが、それは後ほどの世界を見れば分かることだな。

我が大罪の蠢動は止まることはない。
いずれ来る運命の日にこそ暴食による破局は再び回帰する。
(携帯電話のブザーがなる)
…魘醜界からの臨時告知だ。君主から派遣されし狂暴たる堕天使アマイモンは地獄の東側を直轄し暴君となったようだな。
素晴らしいじゃないか。
さて、今宵は、明日に備え惰眠を貪る。

お休み、ベルくんッ☆

今宵、死闘が敢行する、この血風、残酷な修羅と化すことは目前だ。
その前に、私が決着を付けてみせる。
…サタンを誅戮したあかつきには、魘醜界、魔界、虚無界、にて、反サタン権勢と魔王(サタン)権勢とで全身全霊を馳駆した魔逆戦争が始まることだろう。
ルシファー惣領には反サタン権勢の君主として、その頂点に君臨してもらい、彼女の冷徹たる怜悧、夥多たる堕天使を率いる傀儡能力を持ってして、サタンに跪拝せし悪魔を牽制させる。
このような手立てで、事を邁進させることができれば、魔逆戦争には我々が確実に勝利し、円滑に終止符を打つことができる。
そう…私は全てを見切っているのだよ。
陳腐な憤怒…あるいは、愚かな咆哮をたてしサタンよ。

こんばんは、ベルくん。何故か今日はテンション低いんだヤマダは。

そいつは残念だったな。
さらに残念なことに、きっと君は、これから見るであろう惨憺たる光景を刮目することになるだろう。
そして君は、必ず顰蹙し、悪魔という存在の狂暴、狂気、狂乱をその身に刻み、悪魔や堕天使、災いを運ぶ者を疎む…いや、厭悪するようになるだろうな。

怠惰になっちゃったんだ。突然ね。

惰眠や倦怠な生活。いったいどこで変わったかな。

ヤマダよ。君は何を言っているのか、
些か私には分からないのだよ。
惰眠だの倦怠だのと、長期期間に及ぶ休暇は既に終焉したはずだろう？

もともと狂気の沙汰であったものの、ついに、脳味噌が狂気に侵蝕されたのか、
もはや、理性や知性を持つことは、不可能となったのか。
生き物としての欲望と本能のままに、空蝉共に悠然と朽ちてゆくのか。

何故だか分からないんだ。もう全て面倒くさくなっちゃった。

親のことも、友達のことも、私のことも、この世界も。このままで良いって、ずっと時間がどこかで凍結してるよ。

何も変えられなかった。何も変わらなかった。だからさ。

全てが面倒くさいか。
ならば、怠惰に生きてみるがいいさ。

変わることになんのメリットがあるのかね？

…似たような人を見たことがある

何も変わらない私に腹が立つ。どれだけの人間を傷つけ傷つけ傷つけまくったんだ…、怠惰に生きても仕方がないのにね。