──千年前、原初の時代。
神殺しの大罪人と忌み嫌われ、
時代の救世主と讃えられた者達がいた。
東西南北の神をそれぞれ鎮めた彼らは、千年経った今でも…
【四天魔王】とその名を刻んでいる。
やがて封印が破れ、復活を遂げた四天魔王。
彼らは現世でも神を撲滅せんと権能を振るう。
今ここに──新たなる神話が歴史に残るだろう。
北の魔王、【喜怒哀楽】。
己の感情、言わば本能で生きる大罪人。
享楽を欲し百年もの間神を殺し続けた。
現世でも享楽のために神と対峙するだろう。
東の魔王、【死屍累々】。
歩く道全てに骸を残す生死の大罪人。
守護の妄執に駆られ神を恨み殺した。
現世では聖地の守護を目的としている。
西の魔王、【滞滞泥泥】。
世界に死の泥雨を降らせる泥濁の大罪人。
過去の憤怒を胸に復讐を果たすため神を殺した。
現世では尽きぬ復讐のため身を焦がす。
南の魔王、【夙夜夢寐】。
数多もの生命を毒花に変えた残虐の大罪人。
神の寵愛を求め愛のために神を殺した。
現世では更なる親愛を欲し世を彷徨う。
……
(草原、穿たれた岩の上。肘を太腿に頬杖をつく長髪の男は、退屈そうに遠くを見つめる。)
軍ってどこにあんだァ?
ったく…平和だとぶッ壊しがいがあるぜ。
随分とお早いお目覚めだね、魔王。
もう千年くらい封印(ねむ)っていてもよかったのに。
(草原に響くは少年の澄んだ声。それと同時、男の周囲に舞い落ちる黒羽、少年は天(そら)に居た)