もう
すべて
おわらせる
@ 二面顔
男は早朝に目を覚ました。曇った窓の向こうで小鳥のさえずりが聞こえる。しばらく夢は見ていない。目覚めてから瞬きをするまでの間に、シワだらけのベッドから木製の床に足をつけて、つま先を洗面所へ向けた。どのタイミングであれ、一度でも意識が覚醒すると落ち着いてはいられない質だった。
「 今日の朝食はホットミルクだ。 」
ずず、マグカップの縁まで入ったホットミルクをすする。唇の端をよけて湯気が漏れ出た。やけに小綺麗なテーブルの上にはなにもない。ただ傍らに、古びた椅子があるだけ。殺風景というに相応しい部屋の中に朝を漂わせ、男はしばらく無言でいた。
時計が3つ針を進めると、ケースを用意して中に武器≠詰め込む。玄関の側に立つポールハンガーから、黒いコートを手に取り身にまとった。今日もいつも通りの日常が始まる。