郵便局とは言うけれど、ポストもATMもない。
ただ1つある窓口にはバイトと称する少女が座っているだけ。
それ以外の調度品は、四人掛けのソファが二つ、テーブルが二つ、質素なスツールがたくさん。
「手紙を出したければ、ここにおいでください。どこにでも届けます。」
「さて────久々に来てみれば。何ヶ月も経っていたのですね。あの人たちにも手紙は届くのでしょうか······」
(窓口に鎮座したまま、呟く。)
「本日も手紙はゼロ件、と。まあ誰もこんな所に手紙を出す人なんていないですよね」
(頬杖をつきながら呟く。
ただそれが義務化のように一人ぼっちだった。
······やがて思いついたように便箋を一枚取り出し、そこに万年筆で文字を書き始める)
(____昼下がり)
…段々と 暑さというものが肌身に感じるようになってきた
慣れた道、慣れた場所を歩くだけでも
溢れるように 汗は流れてくる…
「(………)」
( …そんな陽射しに悩まされる訳でもないが
移り変わる季節を想ってしまえば、この急な暑さに
春への懐かしさや感傷も抱くと言うもの… )
「 …あら 」
__妙な気分の散歩を行く中で ふと、忘れ物を思い出す
[ぱさ] ………
( …手紙をポストに入れ忘れた、…きっと、暑さで気が
遠くなったのだろう… …気付けば、コンビニやポストからは
大分離れてしまった、…今になって、来た道を戻るのも
…ヒトのように倦怠感を感じてしまう、…)
( …どうにも、と …諦め心地に周りを見渡すと )
_____見慣れぬ"郵便局"が目に入る
「············あれ?」
(あまりの暇さに微睡んでいた時、ぼやける視界の向こうに······人?の姿を見つける。······もしや、)
「······どうされました?」
(相手がこっちを向いた時に、開いたドア越しにそう声をかけて)
「 ………… 」
( どうしたものか__ こんな時は…
…思案はどうにも、判断にあぐねる )
( 手元の手紙、声の聞こえるドア
郵便局という事を示す看板。…
視線はくるくると回り、…此処から
別のポストまでの距離を測ると___ )
_____やはり 此処しかないらしい
「 ……此処は郵便局… で、合っていますか?」
(___大した意を決する必要があるでもない
先程まで、あんなに思案したドアの向こうへ
平然と、…しかし慎んで脚を踏み入れる )
「ええ、ここが郵便局です。······と言っても、ポストもATMもありませんけどね。」
(入ってきた相手を見つめて言う。その表情は自嘲するようにも、誇らしげにも見える。)
「 ……お手紙の受け渡しが出来ない
そういう訳では、無い筈です… 」
( 扉を抜けて …対面する )
「 一通、…届けて頂けませんか? 」
「勿論です。······伊達に郵便局はやっていませんよ」
(そう言って居ずまいを正し)
「分かりました。······どちらへ?」
「 はい …では… 」
(___) (___) (____) __説明中…
「 ……と、なります… 印鑑の他、必要な物は? 」
( 鞄から財布を取り出し、判子を探しつつ…
机に、丁寧な便箋の手紙を置いて 貴方の顔を眺める )
「 ……… (…何処かで…?) 」
「······分かりました。印鑑の他は······はい、特にございません」
(便箋を表、裏、と見て一つ頷く。······そして自分は何かの表を取り出してメモをする。────あなたの視線には気付いていないようだ)
「 ………あの、失礼ですが… 」
( …モヤモヤ… 最近、それを持て余す事が
何故だか難しい。…解決、するべく…訪ねる )
「 …何処かで…お会いした事はありませんか…? 」
( 印鑑を差し出し、… )
「······え?」
(そう言いつつあなたの顔を見る。······見覚えは······恐らくない。)
「······いや······人違いだと思いますけど······」
(少し動きを止めつつ、そう呟いた)
「 ………そうです、か 」
( …2度、3度と続けぬように
一度 …じっくりとその顔を眺めて… )
「 …妙な質問、申し訳ありませんでした
___…何処かで、見たような気がしたもので 」
( 手を、下げる )
「……………」
(それからはこちらも今起こったことを忘れようと努める。……そしてふと口を開き)
「手紙……届ける日時は、いつ頃がよろしいですか?」