彼女の名を知る人はいない
51:The other:2021/08/19(木) 19:34 「 ………っ」
目の前の賭博結果は、マスク内側の男の表情をやかましく引き攣らせた。「狂ってやがる…」思わず、力ない声が漏れ出る。
怒り、というより単純な嫌悪感に呆然と立ち尽くすしかない。ペストの両レンズに浮かぶ嫌悪の対象は、やや赤ばむ面で恍惚の模様。
しかも質問には絶対に応じないらしい。ーーバケモノ爆弾への対処法も不明、このまま爆弾被害の届かないエリアまで逃げるか? いやいや、論外だ。俺には『審議会』まで責任があるーー
考えるうち、強く握っていたはずの手からも力が抜け、鋼の刃からスルリと離れた。
ーーどういう神経してるのか?
「テメェ、どういう神経してやがんだ?こっちが言えたことじゃねェけど…、自分の教え子ぐらい普通守るだろ!クソセンコーがよ!」
浮かんだ疑問で義憤に駆られたのは、マスクマンではない。頭に電気を宿す、一学生のライの高い声が沈黙を突き破った。
「アタシは、クソセンコーを毎日見てっからクズを知ってんだ。そこから言えることだがァー……アンタはクズ。クズ中のクズ!マジでクズ! …だから、アナをアンタに任せておいちゃ絶対ダメだ!」
ブリキのゴミ箱へ、怒りでもぶつけるみたいに木屑の山を投げ捨てた。そして、頭上のツノ-ツノ間には、ビリビリと、ライの嚇怒具合に応じた電気が威嚇する。
『酷いなぁ』
途端、凍てついた声が地下に響いた。隔たれた空間でも尚、粒子に ビリビリ と伝わる怒り。その塊に相対してパイチェの興味は失われていくばかり。歪な笑みを貼り付けた女の、仮面の下が垣間見えた。
『巣≠ノ潜り込んだラットが情報を盗んで逃げた。とっても大事な情報さ。そのラットの家が──この国にあるといったら?』
両目を覆う瓶底メガネの奥に、僅かな感情の揺れを見せた。
『僕の研究だ』
──消失の条件は、白旗の飾りを破壊すること。
──極北の少女の初恋は、山奥の死体でした
少女、雪に囲まれた森の深奥に建つ小屋にて生まれ育つ。少女の両親はなんの変哲もなく、毎日冷たい川下から水を組んでは持ち帰り、雉や猪が罠にかかれば鍋にかけ、たまに斧を持てば暖炉にくべる木を採伐する。そんな普通の家でした。けれども、少女は違いました。毎日雪山を駆け回って、新雪にもぐったり、リスを見かければ会話したりするような子供だったからです。そんな少女に両親が頭を悩ませていることも露知らず、10歳になった頃。学校の帰り、いつものように雪山を駆け回る少女は、小さなリスを一匹見つけて後を追います。小粒大の足跡を残す雪を踏みしめて、目いっぱいに枝を広げる木々の下を走り、やがて山小屋に辿り着きました。見失わないようにと見つめていたリスは、一点の雪の上で足を止めます。少女はその背にゆっくりと近付いて、リスの頭上に影を落とし……その時、少女は「あっ」と声をあげます。リスが留まる雪の下に、骨らしきものが埋もれているのを見つけたからでした。霜焼けて赤くなった両手の指で雪を掻き分けます。埋まっていたほんの一部分の全貌が露になりました。少女は目を奪われます。見つけたのは、深く目を閉ざした白骨前のミイラでした。それは死体だったのです。けれども少女は驚くでもなく、ただ単純に、真っ白な世界の冷たい空気の中で──熱い恋に落ちました。全ての始まりでした。
著:◼◼◼
[ピク]"_____"
…書き終え、何としても少女へ紙の言伝を与えるべく
隙を伺う烏は空気の変異を敏感に感じ取る。…これは…
__だがこれはまたとない機会、… 迷う暇があるか否か
( …怪物の男の意気消沈 … されど健在の1人と
異質な何かがひとつ、…烏の注目はあの異質な何か…
少女を制御する何かへと向く "目的" は何だ? )
_______それが望む方向と同じであるなら…
( 烏は翼に力を込める。… 化け物の男とも
妙な学生とも… 望みの為ならばやり合う事は安い )
1日1回絶対にどこかで出会う存在
56:名を捨てし者:2021/08/21(土) 19:32上げ
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