西暦20XX年、青波市。
日本近海に浮かぶ人工島に建設された巨大水上都市。
安寧と繁栄を謳歌するネオン煌めく洋上の不夜城に『黒き神仙(チェルノボーグ)』の魔の手が迫る。
けれど、この街には不屈のヒーロー達が居た。
ならば、やるべき事は唯一つ。
さぁ、英雄譚の開幕だ。
『Pretender in Chinatown』
青波中華街の大通りを行き交う人々の数は夜であっても昼間とそう変わらない、賑やか、喧騒、活気、そういった言葉がこの場所には相応しい。
それでも、ここ数日はこの近辺で連続して起きた事件の影響か客足は控え目になっているという。
「あぁ、例の物は届いた、……まったく君たちのボスにはいつも驚かされるよ、まさかこんなにも早く調達出来るなんてね」
青年は煌々と明かりに照らされた大通りを足早に歩きながら電話越しにある人物と会話していた、雑踏に紛れて移動し続けている以上会話の内容を盗み聞かれることはない。
「いや、今夜は行動を起こさなくてもいいだろう、これ以上はかえって怪しまれる」
「心配は無用さ、餌は充分に撒いた、必ず光の波動像は釣れる」
「彼女が中華街に現れ次第作戦開始、その辺りは手筈通りだ、それからライル・グッドフェローという男には手を出すな、奴は強い、君たちでは勝ち目がない程にね」
「それじゃ、健闘を祈る」
最後にそれだけ告げて青年は電話を切った。
スマホをズボンのポケットに仕舞うと雑踏から抜け出し、青年の姿は暗い路地に消えた。