乱れる世の中でも、変わらず存在し続ける、月
入る者を拒むその別世界の中、彼らはそこにいる
厳格な掟で結ばれたその世界に、大小の騒動が巻き起こる時
禁断の扉は開かれる。
では、この物語を始めよう。
すべてはあの世界の中に。
phase0
「行くぞ。あいつを殺しに」
深夜のことである。
月の世界では時間などほぼ意味を成さないが、それでも便宜上そう呼ぶしかない。
『月族』はおろか、『天人』も『兎』もほとんどが眠っている、そんな時間だ。
そこに紛れて、月族のうち、一つが動き出す。
その名はザンゲツ族――――番手は十四。強さが番手を表している訳ではないものの、地味な数字である。
そんな一族が、月神のいる御殿へと乗り込んでいき······その事に他の面々が気付いたのは、かれこれ一時間の後だった。