それはあまりにも唐突に起こった出来事だった。
誰しもが普段と同じ日常を過ごし、明日も同様の日々を送るものであると思い、眠りについた……
だが、目を覚ましたのはごく一部の者だけだった。
里も、山も、森も……
人妖も、動物も、植物さえもが眠りについたまま目覚めることがなく、幻想郷全体を深く冥い静寂が支配していた……
これは明確な"異変"だ。
"それ"は深き夢の世界から現れる悪夢の支配者。
微睡みの中に漂う無垢な精神を貪り、安息を求める者達に恐怖を与えるおぞましき幻魔の軍勢『エファ・アルティス』
現世を救うために悪夢を支配する幻魔との戦いが幕を開ける……
>>2 時系列と注意
>>3 異変側の勢力
くっ・・・・・!
(悪夢の処刑者の体の頑丈さには斧の頑丈さは劣るのか、人間用ではない上に初めて使う武器ではあるものの、ハッキリとこの武器がもう長持ちはしないだろうということがわかる・・・・・
勝負を決するのは、この斧で悪夢の処刑者を仕留められるかどうか・・・・・)
悪夢の処刑者
『ォ……オォォォォォオォォォオオォ……』
《バキバキバキバキバキ》
切断された悪夢の処刑者の頭部断面から、頭ではなく、3mもある巨大な蜘蛛の脚が生え、処刑者の背中から憎悪に歪んだ老若男女の顔が無数に浮かび上がり、呻き声をあげ、両手足の関節が明らかに本来ならば曲がらない方向へとねじ曲がり、首の断面から生えた蜘蛛の脚と合わさってガサガサと地を這い回る蜘蛛のように俊敏に霊夢に向かって飛び掛かる。
頭を切り落としても絶命しない。
新しく無数の顔を出現させることが出来ると言う、明らかに生物の理から外れた異形……それこそが幻魔なのだろう。
ああぁぁああああああぁああぁぁぁぁきもっち悪い!!!!!
ゴッ!!!!!
(もはや斧の耐久力に関して気にせずに無我夢中で悪夢の処刑者に向かって斧を振り下ろす・・・・・
もう斧がどうなろうととにかく目の前のこの気持ち悪い異形のモンスターを一刻も早くこの世から消し去りたいという気持ちでいっぱいになっている・・・・・)
悪夢の処刑者
『ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!』
悪夢の処刑者に幾度と無く振り下ろされた斧が悪夢の処刑者の巨体を切りつけて行くものの、切り裂いた傷口から新たな顔が現れ、その無数に存在する顔が口を大きく開けて笑い始める。
それはまるでどれだけ攻撃しても無駄だと言わんばかりに……
その証拠にどれだけ切り裂こうとも処刑者は傷の再生こそ遅れていれど、それも時間と共に回復してしまうため威力が弱すぎる……
そんな中、悪夢の処刑者が潜んでいた部屋の中央にある巨大な"断頭台"が視界に入る。上手く誘導してこの断頭台に付けられた巨大なギロチンの刃を落として処刑者の体を両断する事が出来れば確実に打ち倒せるだろう。いや、勝機があるとすればそれしかない。
こうなったら・・・・・
(一か八か、悪夢の処刑者を挑発するなりなんなりして誘導し、断頭台へとおびき寄せて攻撃するしかないと悟る・・・・・
そして「はぁ〜い化け物さぁ〜ん♪こっちよこっちぃ〜♪そんなのろっのろした動きじゃあ私をしてることは出来ないわよぉ〜?」と、悪夢の処刑者を馬鹿にし始める・・・・・)
悪夢の処刑者
『ゲキャキャキャキャ!!!』
終始言葉や言語らしいものを使用していない事から言葉による意志疎通が出来るのかどうか、挑発が効果を出しているのかどうかは不明だが、悪夢の処刑者はけたたましい笑い声をあげながら蜘蛛のように床を這い回り、霊夢に向かう。処刑者の背中や傷口に現れた無数の顔の口内から新たに尖端が鋭く尖った蜘蛛の脚が伸び始め、純粋な手数も増えつつある……
《本当に気持ち悪いわね・・・・・》
(霊夢は内心背筋に寒気が走るほどの気持ち悪さを感じているものの、ここで怯むわけにはいかず、霊夢は断頭台へと悪夢の処刑者を勘づかれないように誘導する・・・・・
ギロチン程度で本当に倒せるのだろうかという半信半疑な部分もあるが、やるしかない・・・・・)
《本当に気持ち悪いわね・・・・・》
(霊夢は内心背筋に寒気が走るほどの気持ち悪さを感じているものの、ここで怯むわけにはいかず、霊夢は断頭台へと悪夢の処刑者を勘づかれないように誘導する・・・・・
ギロチン程度で本当に倒せるのだろうかという半信半疑な部分もあるが、やるしかない・・・・・)
悪夢の処刑者
『ギシャアァァァァァァァァァッ!!!』
《バッ》
断頭台近くにいる霊夢を追って這い寄る処刑者は残り10mとなったところで大きく跳び跳ね、無数の顔の口内から伸びた幾つもの蜘蛛の脚が霊夢の体を貫こうと飛び掛かる……
うわっ!?
バッ・・・・・!
(飛び跳ねてきた悪夢の処刑者を間一髪で避けると同時に、あまりの気持ち悪さに思わず挑発することすら忘れてしまい声を上げる・・・・・
しかし、同時に運良く断頭台まで誘導することに成功する・・・・・)
悪夢の処刑者
『キチキチキチキチキチ…』
飛び掛かりを回避した事で断頭台にて縄で吊り上げられた巨大な刃の真下にまで頭は無くなってはいるものの誘導する事に成功しており、このまま縄を切って刃を落とせば悪夢の処刑者の体を両断させることが出来るだろう。
だが、その事を知ってか知らずか、霊夢目掛けて切り落とされた頭部の断面から伸びた無数の蜘蛛の脚が一斉に霊夢目掛けて伸ばされ、霊夢の体に突き刺そうとする。
往生際の悪いやつね・・・・・!
(霊夢はこの状況でまだ平然と反撃してくる悪夢の処刑者の往生際の悪さ、しつこさに恐怖や気持ち悪さを通り越してある種の関心すら覚えながら、今度は頭部の断面から伸びてきた無数の蜘蛛の脚を誘導して、相手の攻撃を逆に利用して縄を切ることでこの戦いを終わらせようとする・・・・・)
《ザンッ》
悪夢の処刑者
『ギギッ……ギャアアアアアアアアアアアッ!!!』
霊夢によって、伸ばした蜘蛛の脚で自ら縄を切ると、そのまま悪夢の処刑者の胴体……無数に浮かび上がっていた顔の中でも一際大きな顔が真っ二つに両断され、切り離された処刑者の上半身と下半身がそれぞれジタバタともがき、無数に浮かぶ顔の全てが断末魔の叫びを上げながら黒い塵となって崩れ、消えていく……
更にそれに呼応するように周囲の通路で霊夢が逃げることを阻止していた無数の異形の拷問官達も同じように呻き声をあげながら崩れ、消滅していく。
上手くいったようね・・・・・
(相手の攻撃を逆に利用して縄を切るという思いつきの作戦が、意外と上手くいったことでなんとか安心し上記を呟く・・・・・
そして「にしても・・・・・他の奴らも一気に消滅するなんて、あの気持ち悪いやつと魂か何かしらが繋がってでもいたのかしら・・・・・」と呟き、その場を後にしてイライザのいる場所目指して向かってゆく・・・・・)
【幻魔の要塞 第二階層】
《コォォォォォォォォォォ……》
悪夢の処刑者を打ち倒した事で妨害していた拷問官達が死滅した影響で何の障害にもぶつかることなくフロアを進めるようになった。そして霊夢の"勘"が示すがままに進んだ先には上層へと通じる階段があり、それを登りきった先に待ち受けていたのは、ところどころに乾いた血の染みが点在する寂れた病院のようなフロアに出る。
断末魔や悲鳴が聞こえていた先程までとは打って変わり、異様なまでの静寂さに包まれているのだが、常に誰かに監視されているような異様な視線を感じる。
・・・・・まだ騒がしい方がマシだったかもね・・・・・
(ここまで静かだと、人間に元々備わっている恐怖心がわいてくる・・・・・
さっきまでの断末魔や悲鳴が四方八方、ありとあらゆる場所から聞こえてきていた時の方がまだマシだったかもしれないと独り言を呟く・・・・・)
《ソペタペタペタペタペタ……》
霊夢が十字路を通り過ぎると、裸足の人間が凄い速さで走り抜けるような音が聞こえてくる……このフロアは寂れた病院のようなエリアとなっている事もあり、無念のまま病死した亡者達の怨念が染み込み、腐敗した無数の骸が生きている霊夢を憎んでいるような……そんなおぞましい視線が物陰や通路の影、背後からの感じられる。
だが、その視線のしたところを見ても、誰も居ない、何の痕跡もない……走り抜けた何者かの姿もわからない……直接的な攻撃をしてきた第一階層の拷問官達とは違って、姿を見せない不気味さが感じられる。
《・・・・・得体の知れない不気味さはあるけれど、攻撃してこない分まだいい方ね・・・・・》
(どこに何がいて何をしているのかがわからないという恐怖こそあるものの、今の時点では悪夢の処刑者のようにこちら側に攻撃を仕掛けてくるわけではない分、実害が出ないのであればまだいい方だと前向きに考えることも出来る・・・・・
このまま問題なくただ恐怖を感じるだけでイライザのいる場所までたどり着ければいいのだが・・・・・)
《ズッ》
足音のした十字路の方向、つまりは霊夢の直ぐ後ろに突然、感じられる視界がいっそう強くなる。それは真後ろに何者かが現れたと言うことを示しており、これまで様子見していた悪夢の化身が遂に牙を剥き始めてきたのだと思われる。
上手く後ろに迫った何者かに対して先制攻撃を仕掛けることが出来れば一気に有利になれるだろう。
・・・・・
ズゥッ・・・・・!!!!!
(霊夢は攻撃する直前まで気づいていないふりをして、そしてそのまま振り返ると同時に弾幕を連撃する・・・・・
正直、悪夢の処刑者同様にこれくらいで倒せるわけでもなければ、何とか出来るわけでもない敵だろうということは想像がつくが、少しでも何かしらのダメージを与えることが出来るなら・・・・・)
《ドドドドドドドッ…》
確かに視線を感じた筈であり、攻撃のタイミングも完璧だった筈であるにも関わらず、霊夢の放った弾幕は背後の通路の奥にある壁に激突し、爆音が周囲の沈黙を引き裂いて鳴り響く……
その次の瞬間、霊夢が振り返った瞬間を狙ったように、霊夢の背後……先程までは正面だった方から無数の手が霊夢の体を拘束しようと伸ばされる。
なっ・・・・・!?
ぐっ・・・・・!
(霊夢は予想外の出来事に反応が遅れ、そのまま無数の手に捕まってしまう・・・・・
もし最初からこうやって捕まえることを狙った上でのことだったのだとしたなら、こればかりは迂闊だった・・・・・
自分が隙を見せたのが悪い・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ゲラゲラゲラゲラゲラ!!
ニンゲン…ウマソウナ……ニンゲン……』
辺りの暗闇に紛れて姿を現した幻魔……その姿はまさに"異形"そのものであり、仮面のような顔に無数の孔が開き、おぞましい数の手で形成されたその姿は、最初は辛うじて人に近い姿を取っていたキラー・クラウンや悪夢の処刑者とは違い、完全に人の形を放棄したものとなっており、四肢を拘束された霊夢に向かって無数に存在している頭の一つが大きな口を開けて霊夢の頭を噛み砕こうと近付いて来る……
そう簡単に食べられるわけないでしょーがっ!!!!!
ドォッ・・・・・!
(霊夢は火事場の馬鹿力と言わんばかりに拘束状態から必死にもがいて片手を引き抜けば、そのまま幻魔の大口へとめがけて無数の弾幕を放ち始める・・・・・
自分でもこの状態から攻撃ができることに内心驚いている・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『グ……ゲゲゲゲゲ………』
《ヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタ……》
霊夢の放った弾幕がカシキの頭の一つを捉え、打ち砕くと、霊夢から手を離し、凄まじい勢いで後ろへと飛び退いて行き、再び通路の奥にある暗闇の中へと溶け込もうとしていく。
くっ・・・・・!待ちなさいっ・・・・・!
ゴッ・・・・・!!!!!
(霊夢は暗闇に溶け込もうとする相手に追加の弾幕攻撃を放つ・・・・・
ここで逃せばまたさっきのように不意打ちの襲撃を仕掛けてくる可能性が高く、博麗の巫女と言えど人間である霊夢は全ての不意打ち攻撃に即座に対応できるという保証もない・・・・・
早めに仕留めておく必要がある・・・・・)
霊夢の放った弾幕が辺りの暗闇を切り裂いて突き進んで行くものの、カシキ自体には命中せずに逃れられてしまう。
カシキの姿が消えると、再び周囲から暗闇の奥からカシキがじっと様子を伺っているようにも見える……何時、何処から攻撃をされるのかわからず、視界すら満足に使えないのですが暗闇の中、言い知れぬ恐ろしさを引き立たせている。
《厄介なやつね・・・・・》
(四方八方へ警戒をしながら、霊夢は札を構える・・・・・
相手は暗闇に見を潜めることが出来る、言わば闇の具現化とも言えるような魔の存在・・・・・
人間と比較すれば圧倒的有利な立場にあり、それは例え博麗の巫女だとしても変わりはないのかもしれない・・・・・)
《ズルッ》
目の前の暗闇に消え、微かな沈黙の後に、前後左右のどちらでもない、霊夢の頭上にカシキが音もなく姿を現し、無数の手で霊夢の両手を抑えると同時にその首を締めようとする。
っぐっ・・・・・!?
(人間の力では抵抗も無に等しいほどの力で首が締まってゆく・・・・・
ここで終わるわけにはいかないとはわかっているものの、ろくに抵抗できない状況であるのもまた事実であり、このままではそう遠くないうちに窒息死してしまう・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ヒヒヒヒヒ……イヒヒヒヒヒヒッ!!!
クルシメ……モットクルシメ……!!!!』
カシキの伸ばした手が霊夢の首を締め始め、更に反撃が出来ないように両手を押さえている現状ではまともに対抗することが出来なくなっているだろう……それが"普通の人妖"であれば。
霊夢の脳裏には、巫女としての勘に近い"直感"が次の対策を啓示する。
霊夢の持つ霊力は邪悪な存在を討つ力。両手は封じられてはいるが、練り上げた霊力を蹴りと共に繰り出し、当てることが出来れば逆転を狙えるかもしれない。
・・・・・っ・・・・・こっ・・・・・のっ・・・・・!!!!!
グォンッ!!!!!
(霊夢は首が締まってゆく中で、出せる限りの力を出して霊力を蹴りと共になんとか繰り出す・・・・・
この攻撃を機に、霊夢の反撃からの勝利が先か、それとも霊夢が力尽きるのが先か・・・・・
どちらか一つなのは間違いないだろう・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『!!!?』
霊夢の繰り出した霊力を纏った蹴りがカシキの頭の一つを蹴り飛ばすと、カシキは霊夢の首と手を拘束していた無数の腕を離し、そのまま地面に倒れる。特に意識をしていなかったにも関わらず、霊夢の蹴りはカシキの無数のある頭の中でも核に位置するモノを破壊しており、それが甚大なダメージとなってカシキを追い詰めている。
カシキ・ヒェリ
『グゲゲ……グゲ……』
核を破壊して大ダメージを与えることにこそ成功したものの、カシキは無数の腕をバタバタと無秩序に動かしてもがきながら無数にある頭の口から幾つもの新しい手を伸ばし始めており、このまま放っておけば悪夢の処刑者と同じように厄介な形態変化を遂げられてしまうかもしれない。
今この場で霊力を活かした渾身の一撃を撃ち込んでカシキを丸ごと消し飛ばすようにすれば、変異しきる前に倒しきれるかもしれない。
げほっ!?げほっ・・・!?
(霊夢は腕が離れたことで締まっていた首がなんとか開放され、咳き込む・・・・・
しかし、離されたからといって隙を見せるわけにもいかない・・・・・)
これでも喰らいなさい化け物っ!!!!!
グォッ・・・・・!!!!!
(霊夢は霊力を込めた無数の弾幕を容赦なく撃ち始める・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ギ……ギイイィィィィィィィ……!!!』
カシキの体が次々と霊夢の放つ弾幕によって打ち砕かれていく。単純な耐久力で言えば、悪夢の処刑者よりも劣り、あのキラークラウンと同等ぐらいしか無いためか、次第に無数の頭や手が砕け、消滅する中でのたうち回りながらも耳を刺すような超音波のような断末魔をあげ、霊夢の動きを封じようと足掻く。
くっ・・・・・!?往生際の悪いやつね・・・・・!
(霊夢は耳を押さえながら、高く飛んでなるべく悪足掻きの餌食にならないように避難するかのようにカシキ・ヒェリの最後の姿を見下ろしながら往生際の悪いやつねと呟く・・・・・
耐久力は低いクセして執念深さは末恐ろしいものを感じる・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『アァァァァァァァァァッ……!!』
体の大半が崩れながらも、ジタバタと暴れまわり続け、再生を行おうとしており、更には自身を見下ろす霊夢を見て、ここが室内であり天井が限られている事を利用してカシキが砕けずに残っていた頭の一つが口を大きく開き、口内から四つの手を伸ばして霊夢を捕らえようとする。
しつこいっ!!!!!
ドッ・・・・・!
(霊夢は四つの手を伸ばしてくる相手に向けて、先ほどと同様に霊力を込めた弾幕を放って応戦する・・・・・
体の脆さとは裏腹に、ここまで往生際の悪い相手とはあまり戦いたくはない・・・・・
闇に住まう者達の執念深さを垣間見た気がする・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『グゲゲ……ゲゲゲッ……』
霊夢の放った弾幕によって無数の腕を伸ばして頭部が消し飛ぶものの、光弾だけではダメージを与えて倒すことが出来るものの、決定打には至らずにまるで木の枝に花が咲くように無数に伸ばされた腕から新しい頭が生え、反撃として無数に伸ばされた腕の掌から紫色の光弾がほぼ全方位から霊夢に向けて放たれ、大爆発を巻き起こそうとする。
なっ・・・・・!?
ヒュォッ・・・・・!
この状態でまだ抵抗するの・・・・・!?どこまでしぶといのよっ・・・・・!
(霊夢は咄嗟の出来事に驚愕するものの、紙一重でなんとか攻撃を避けることに成功する・・・・・
しかし、もはや完全回復もできないのではないかと思うほどに追い詰めたところでまだこれだけの攻撃を出来るほどの生命力や攻撃力を残していたとは、迂闊だった・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『グ……ググググ………!!!』
霊夢が驚愕し、攻撃を止めた途端にカシキの体には再び幾つもの新しい頭や手が生え始め、元通りに再生し始める。生半可な攻撃では完全に倒すことは出来ない。彼を完全に葬るためには広範囲を浄化できるような技でないと倒せないのかもしれない。
あと少しだったのに・・・・・!
(この先、この異変の総大将であるイライザとの対峙も控えている中で、早い内にカシキ・ヒェリとの戦いを終わらせようと考えていたが、その生命力と再生力をあまく見くびっていた・・・・・
弾幕程度では霊力を込めても一時しのぎにしかならないという事実を叩きつけられる・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『イヒヒヒヒヒヒ……キヒヒヒヒヒヒヒ……ケヒヒヒヒヒヒヒ……!!』
霊夢の目の前でカシキはみるみる内に元の姿へと戻って行く……霊夢が弾幕によって破壊した箇所は全て再生され、手を緩めれば再生し、通常弾幕程度では致命傷を与えることは出来ない。
その凄まじい生命力と再生力を用いることで不死身がごとき強さを見せたカシキは無数にある手を伸ばして霊夢を捕まえようとする。
こうなったら・・・・・
バッ・・・・・!
(霊夢は何を思ったのか、無造作に飛行を始める・・・・・
無闇やたらに攻撃をするよりも、頭脳戦に出た方が早いという賭けとも言える戦略に出る・・・・・
カシキ・ヒェリの手を誘導しながら、霊夢は猛スピードで飛行する・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ケタケタケタケタケタケタケタッ!!!』
霊夢が無造作に飛び始めると、無数の顔がカチカチと歯を鳴らし、ペタペタと無数の手を大きく広げてすり抜けなどが出来ないようにして笑いながら霊夢の後を追いかける。カシキにはあまり知能や知性がなく、本能的に動いているだけであるためか、特に勘繰るような様子は無い。
ほらほらこっちよお馬鹿さん!
(霊夢は鬼さんこちらと言わんばかりに両手を叩きながら飛行してカシキ・ヒェリを挑発する・・・・・
一件考えなしにただ策を練るための時間稼ぎにも見えるものの、霊夢はちゃんと考えた上でこの行動をとっている・・・・・
あとはカシキ・ヒェリの知能の低さに逆に頼るしかない・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ガチガチガチガチガチガチ』
カシキの無数の頭がガチガチと歯音をたてながら飛行する霊夢に向けて無数の手から紫色の光弾を放ちながら彼女を捕まえようと這い始める……殆ど言葉を発していない事から挑発が通じているのかどうかは不明だが、それでも相手に追いかけられると言う状況を作ることには成功する。
ほらほらこっちよこっち!!!!!
(霊夢は何故か壁の前で立ち止まってカシキ・ヒェリを挑発し続ける・・・・・
通常、カシキ・ヒェリのような化物を相手にこのような状況に陥れば、大抵の人間は諦めて無残に〇されるのが殆どだが、霊夢は敢えてカシキ・ヒェリを挑発する・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『オイツメタ…オイツメタ…オイツメタ……!!!』
ゲラゲラと笑いながら、壁の前で立ち止まった霊夢目掛けて無数の手の掌から紫色の光弾を集中的に放つ事で霊夢の事を消し飛ばそうとする。
案の定、カシキは高等幻魔でありながらも、それほど賢い幻魔ではないようで、霊夢の誘導を何も疑わずに追いかけ、挑発するままに攻撃を加えていく。
アンタ、本っっっ当に馬鹿ね?
ゴガガガガガガガガガ・・・・・!!!!!
(知能がさほど高くない相手だからこそ、霊夢は大体のタイミングを読むことができ、いとも簡単にカシキの攻撃を避けることに成功する・・・・・
カシキの放った光弾が壁に直撃し、そしてそのまま壁の瓦礫がカシキめがけて降り注ぐ・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ギイィィィィィィィィィィッ!!!』
カシキの放った魔弾が壁に激突すると大爆発を起こし、その破片が飛んで来ると、殆どダメージを受けてはいないものの、一時的にカシキの視界が封じられ、反撃のチャンスが生まれる。
これで終わらせてやるわ化け物・・・・・!
(霊夢はカシキの視界を封じることに成功すると、反撃準備に入る・・・・・
いくらカシキの知能が低いと言えど、そのままじっと大人しくその場に留まって攻撃を受けるということはまずない・・・・・
戦いを終わらせるなら、この一撃にかけるしかない・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ギシュッ ギシャアアァァァァァッ!!!!』
カシキはおぞましい雄叫びをあげながら、自分の周囲全方位に向けて無数の腕を伸ばして視界を封じられていながらも攻撃を行おうとする。
カシキは霊夢の放つ光弾だけでは自分を倒しきることが出来ないと考えており、更に高威力のスペルカードがある事を知らないため、先程と同じように例え自分がどれだけの攻撃を受けたとしても自分の再生力と生命力でなら耐えきり、反撃する事が出来ると考えている。
霊符「夢想封印」
(この戦いに終止符を打つべく、霊夢は今度はスペルカードを用いての攻撃手段に出る・・・・・
しかし、それだけではなく続けて弾幕も相手に放つ・・・・・
先程のように復活の隙を与えずに、今度は完全に消しにかかる・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『………!!!
カッ……ハ………!!?』
霊夢の放った虹色に輝く巨大な光弾がカシキに直撃すると、この攻撃にも充分耐え、反撃が出来ると思っていたカシキの体が急速に浄化され、邪気や悪意の塊であったカシキの体が瞬く間に崩れ去り、これまでの戦いは何だったのかと思えるほど呆気なくカシキが消滅していく……
更に、この空間そのものが強力な邪念と邪悪な魔力によって形成されている事もあり、周囲の天井や壁、床まで浄化し、現世の距離感に換算すると、何百階層もある悪夢の要塞の中、一気に上層階層まで向かえる通路が天井の向こうから誕生し、一気にショートカットする事が出来るようになった。
・・・・・これでやっと総大将のいる場所まで行けるってわけね・・・・・
(そう言うと、霊夢は迷うことなく、怯むことなく、イライザがいるであろう上層階へと向かい飛んでゆく・・・・・
これから先は、今までの戦いは何だったのかと思えるくらいの決戦が待ち構えているであろうことは確実・・・・・
悪夢に終止符を打てるのか、それとも悪夢に取り込まれてしまうのか・・・・・
全ては霊夢の手にかかっている・・・・・)
巨大な血の巨人
『ォォォォォォォォォォォ……』
上層階まで開かれた巨大な縦穴の中を最上階目掛けて飛ぶ霊夢の体を、道中の積層から滲み出すようにして現れた巨大な血の魔神が現れ、霊夢の体を握り潰そうと手を伸ばして来る。
血の巨人は全身が血液で出来ているかのように赤黒く、通常の目や鼻、口がある箇所には大穴が空いていて、その大穴を通る風のような唸り声をあげながら、四本ある腕を使って捕縛しようと考えている。
この巨人もまた、カシキや悪夢の処刑者、キラークラウンと同じ邪悪な魔力が感じられることからイライザ配下の高等幻魔の一体なのだと言うことがわかる。
・・・・・またなの・・・・・?
(やっとイライザとの対峙かと思われたその時、またしても現れたイライザの配下に、霊夢は疲労を見せ始める・・・・・
しかも、今度は血で形成された体を持つ巨人・・・・・
物理攻撃か効くかどうかが怪しい・・・・・)
《ガッ》
突然の新手の出現を前に驚き、疲労をして回避しなかった霊夢を顔の無い血の巨人が四本ある腕の一つで霊夢を掴み、そのまま握り潰そうと力を込め始める
血の巨人は優に体長が10m以上はあり、これまで倒してきたどの高等幻魔よりも明らかに大きく、その巨体故に単純なパワーもかなり高いものとなってしまっている。
・・・っ゙・・・・・!ぁああああぁぁあぁぁああああああああぁああああぁぁぁぁあああっ!!!!!
(やっとの思いでここまで敵を倒しながら進んできたのに、こうも簡単に捕まり、こうも簡単にダメージを受ける羽目になってしまうとは、自分が情けなくなってくる・・・・・
段々と意識も遠のき始めてくる・・・・・)
《ズオォォォォォォォォ……》
血の巨人は霊夢を捕えると、そのまま霊夢を自分の顔の方へ引き寄せ始める。すると、巨人の顔にある大穴……顔を貫かれたように大穴が開いているものの、向こう側の光景は見えず、何故か何処までも漆黒の空間が広がっているように見える。
更に、巨人のその大穴を見ていると、魂が引き込まれるような謎の引力が感じられる……この高等幻魔は例え相手が夢の世界に生身の体を持ち込もうと、その魂を引き抜いて喰らう力が備わっているのだろうか。
・・・・・ぅ・・・・・ぁ・・・・・
(体には力が入らず、意識も遠のき始めたそんな時に、最悪のタイミングで霊夢は魂が血の巨人に引き込まれるような感覚に陥る・・・・・
うつろな意識の霊夢にとっては、もはや今自分の魂が体に入っているままなのか、それとも体から離れているのかすらもわからなくなってくる・・・・・)
【制止した時間】
巫女?
「当代の巫女は随分と弱くなったものね……」
霊夢の魂を奪い去ろうとしていたところ、突如として周囲の空間が色を失い静止する中、霊夢を拘束する血の巨人の腕の上に、自分で切り揃えたショートヘアーの黒髪をして、霊夢に似た紅白の巫女服を着た巫女が座り、魂を奪い取られようとしている霊夢を見て落胆したように呟く。
・・・っ・・・・・!?あ、あんた誰よ・・・・・?
(霊夢は意識が途絶えそうになっていたところ、突然時間が制止し、目の前に自分に似た謎の巫女が現れることにさすがに驚いて、意識がグンと戻るように意識を取り戻し始める・・・・・
霊夢からすれば、見ていないで早く助けてもらいたいという気持ちでいっぱいだが、謎の巫女は何のために現れたのだろうか・・・・・)
巫女?
「………あー?もしかして私の事が見えているの?」
周囲が色を失い、時間が止まったような空間の中、自分に気付いて声をかけている事が余程珍しいのか、声をかけられた巫女はキョトンとした様子で霊夢を見て、まさか自分が見えているのかと問い返す。
見え・・・・・て・・・・・いるわよっ・・・・・!アンタこそ、私のこと見えてんの・・・・・!?
(時間は止まっていても尚、握り締められていることに変わりはなく、止まっていなく意識を保っている霊夢からすれば、自分に話しかけているくせして助けようともしない目の前の相手が腹立たしくて仕方が無い・・・・・
早く助けろと言わんばかりの眼力で訴える・・・・・)
巫女?
「……今まで私に気付いていなかった事から死の間際になってイタコの素質にも開花した……って訳?まあ、いいわ。今回は力を貸せそうだから貸してあげる。」
血の巨人の腕の上に座っていた巫女が霊夢のところまで歩き、霊夢と重なるようにして憑依すると、霊夢の体の奥底から霊力が沸き出し始め、両手を合掌するようにして合わせるようにして自身の周囲にある弾幕を打ち消す"霊撃"いわゆる弾幕ごっこにおけるボムの使用が可能になる。
・・・・・!?なんかいつもと体の感覚が違う・・・・・
(霊夢は相手が自分と容姿が似ているとはいえど、能力者であろうことは予想がつくが生きている人間だと思っていること、そして意識がまだ完全にハッキリとしていなかったこともあり、何が起きたのかが瞬時に理解出来ないが、体の感覚がいつもとはなんか違う、ということだけはなんとなくわかる・・・・・)
《ズズズズズズズズズズ……》
朦朧の巫女が霊夢の中に入り、一時的に新たな力を得ると灰色の世界が無くなり、その影響で霊夢を掴んでいる巨人が再び霊夢の魂を奪うために顔の大穴から吸魂を再開し始める。
これでも吸い込んでなさい・・・・・
ポォ・・・・・
(霊夢は顔のない巨人のその圧倒的な吸う力を逆に利用して、大穴に自然に吸い込まれるようにボムを放つ・・・・・
勿論避ける避けないは相手の自由だが、これだけの至近距離+相手の巨体+魂を吸おうとする力も相まって、恐らく避けることは困難だが、もしこれを避けられたとしても今の霊夢からすればさほど気にするほどのことでもない・・・・)
血の巨人
『オォォォォォォォォォォ……』
霊夢の霊力は幻魔や悪しき存在にとってかなりの効力を発揮するのか、貌の無い四腕の巨人が身体中から赤黒い煙を出しながら苦しみ始め、霊夢を壁に向けて投げ付けようとする。
本来ならば衝撃波のようにして周囲に展開するものを、避けられないであろう至近距離から霊力の塊として放った事で、より大きなダメージとなっている。
無想封印は言うなれば博麗の巫女の奥義なのだが、その威力が高い分、消耗が激しく、元凶のイライザの元に辿り着くまでは多用せず、他の技を放つ方が消費を抑えられるだろう。
どうやら効果ありのようね?ならば・・・・・
(霊夢は更なる追撃として、今度は隙を作らずに無数のボムを放ち始める・・・・・
霊夢からすれば血の巨人や今までの敵など正直相手にしていられない、早くイライザとの一騎打ちに持ち込みたいという気持ちでいっぱいなのだ・・・・・)
血の巨人
『』
血の巨人は霊夢の放つ霊力の塊を受け続ける事でその体積が削れていくが、霊力を集中して塊にしている事からその浄化範囲は局所的であり、浄化を逃れた巨人の部位から新たに血が吹き出し、吹き出した血が凝固することで損失箇所を補っていく。
血の巨人を始めとする幻魔は実体を意のままに操ることが出来る上に脳や心臓と言った重要な臓器や身体の核と言ったものを持たないが故に高い肉体の再構築能力を獲得するに至っており、通常の弾幕だけではやはり限界が来てしまう。
血の巨人は破壊を逃れた四本の腕を伸ばして再度霊夢を捕らえようとする……元凶であるイライザはまだまだ先に潜んでいるのだが、このままでは先に戦った悪夢の巨人や無数の手と頭を持つ異形との戦いと合わせて消耗しきり、イライザのもとへ辿り着くことすら叶わなくなってしまうだろう。
加えて、霊夢が朦朧の巫女の力で覚醒した影響から、先程放った夢想封印によって出来た上層階へ通じる大穴が塞がり始めていることを感知することが出来る。
血の巨人
『オ……オォォォォォォ……!!!』
血の巨人は霊夢の放つ霊力の塊を受け続ける事でその体積が削れていくが、霊力を集中して塊にしている事からその浄化範囲は局所的であり、浄化を逃れた巨人の部位から新たに血が吹き出し、吹き出した血が凝固することで損失箇所を補っていく。
血の巨人を始めとする幻魔は実体を意のままに操ることが出来る上に脳や心臓と言った重要な臓器や身体の核と言ったものを持たないが故に高い肉体の再構築能力を獲得するに至っており、通常の弾幕だけではやはり限界が来てしまう。
血の巨人は破壊を逃れた四本の腕を伸ばして再度霊夢を捕らえようとする……元凶であるイライザはまだまだ先に潜んでいるのだが、このままでは先に戦った悪夢の巨人や無数の手と頭を持つ異形との戦いと合わせて消耗しきり、イライザのもとへ辿り着くことすら叶わなくなってしまうだろう。
加えて、霊夢が朦朧の巫女の力で覚醒した影響から、先程放った夢想封印によって出来た上層階へ通じる大穴が塞がり始めていることを感知することが出来る。
・・・・・耐久力こそ高くはないけれど、液体の体っていうのは非常に厄介ね・・・・・
(さほど強くはないものの、それを補うかのような体の作りになっていることは明らか・・・・・
)
・・・・・耐久力こそ高くはないけれど、液体の体っていうのは非常に厄介ね・・・・・
(さほど強くはないものの、それを補うかのような体の作りになっていることは明らか・・・・・
博麗の巫女程度ならそこまで頑丈な作りの部下じゃなくても倒せると思ってのイライザの過信か、それともただ単にこういう部下が偶然揃っているだけなのか・・・・・
いずれにしても、こんな前座の敵にやられるわけにはいかない・・・・・)
【途中送信すみません!】
血の巨人
『オオオ…オォォォォォォォォ……!!』
体の再構築を繰り返しながらも巨人は四本の腕を伸ばして執拗に霊夢を捕らえようとする。このまま戦っていても部分的な攻撃だけでは勝つことは出来ない、ならば攻防一体の八方龍殺陣を展開する事で霊力の消耗を抑えつつ、攻撃しようとする巨人の力を逆手にとって反撃するのがいいのかもしれない。
【神技「八方龍殺陣」】
ドォッ・・・・・!!!!!
(霊夢は、これがトドメだと言わんばかりに一気に勝負を畳み掛けにかかる・・・・・
耐久力がそこまで高くないのはわかっている、高いとするならば再生力・・・・・
ならば、その再生力も通用しないほどに猛攻撃をすればいい・・・・・)
血の巨人
『!!!?
オォォォォォォォォ………』
霊夢の展開した金色に輝き、天を貫くような光の結界によって塞がりつつあった天井が再び砕け、上層階までの道が出来ると同時に、霊夢を捕らえようとしていた血の巨人が、その結界に呑み込まれ、急速にその体が浄化され、無数の人間の怨嗟の声が混ざったようなおぞましい呻き声をあげながら消滅していく。
今度こそ、勝負あったようね・・・・・
(そう言うと、霊夢は上層階までの突き抜けた天井を睨みつけるようにして見つめながら、いよいよ始まる最終決戦に向けて覚悟を決める・・・・・
後戻りする気など毛頭ない、そんな気持ちが芽生えるくらいなら、博麗の巫女なんてやっていない・・・・・)
《コォォォォォォォォォォォォ……》
貫かれ、天高く伸びた漆黒の空間……
その奥からは遠くはなれているにも限らず、底無しの魔力、底無しの悪意がハッキリと感じられる……こんな気配を放つことが出来るのは、この幻魔達を統べる悪夢の女王、イライザしかいない……
決戦は近い、悪夢と恐怖の世界に蠢く幻魔を葬る一人の英雄の戦いが今、始まろうとしている……果たして霊夢は……幻想郷はイライザと言う脅威を打ち払うことが出来るのか……!
・・・・・
スウウゥゥ・・・・・
(霊夢は、突き抜けた漆黒の空間をゆっくりと最上階へ向けて飛び始める・・・・・
今、こうして敵と合間見えることのない瞬間でも尚、あちこちから視線を感じるような気がする・・・・・
この空間全てが霊夢に敵意をむき出しにしているかのように・・・・・)
【悪夢の要塞 最上階】
《ゴオォォォォォォォォ……》
数多の悪意の籠った視線や邪悪な波動の中を掻き分け、破壊して切り開いた天井の道を登り、遂にこの悪夢の要塞の最上階に辿り着くと、夥しい数の苦悶した人々が混ざりあって作られたようなおぞましく、巨大な門が見える。高さ10m、幅は8mもある巨大な門であり、この門の先から禍々しい悪意の波動がビリビリと感じられる……
・・・・・流石、趣味が悪いわね・・・・・
(その異様な造りの門を見れば、イライザの頭のおかしさを再認識する・・・・・
見ているだけで吐き気がしてくる上に、こっちまで頭がおかしくなりそうな気がしてきてならない・・・・・)
《ズッ》
あまりにもおぞましい形状の門を見て生理的嫌悪感を感じている霊夢の背後から音もなく、まるで周囲の闇の中から生み出されたかのように新たなる刺客にして、イライザを守る最後の障壁が錆び付いた鉈のようなものを二本手にしては霊夢の首を跳ね飛ばそうとする。
鬱陶しい・・・・・
ゴォッ・・・・・!!!!!
(霊夢は音はなくとも本能的に気配かなにかを感じ取ったのか、鬱陶しいとただ一言呟けば、そのまま相手に弾幕を放つ・・・・・
正直、今の霊夢からすれば、この異変の総大将であるイライザ以外の敵は目障りな存在でしかない・・・・・)
《ゴオォォォォォォォォ……》
霊夢の放った弾幕が全て背後にいた怪物に直撃し、大爆発を巻き起こすものの、その弾幕を受けた存在はこれまでの幻魔と違い、あまりダメージを受けていないのか、直ぐに爆煙を切り裂き、その姿を露にする。
爆煙を切り裂き現れたのは、身体中に色々な動物や人間の皮膚を雑に繋ぎ合わせて形成されたケンタウロスのような造形をした異形の怪物が錆び付いた鉈を持っている。
見たところ目や鼻、口と言ったものは見られ無いため、どのようにして霊夢の位置を感知したのかは不明だが、この異形こそがイライザを守る最後の番兵と言える存在だ。
あの気色の悪い巨人で最後かと思ってたのだけれど、まさかまだ厄介なのがいたなんてね・・・・・
(霊夢は歪なケンタウロスを睨みつけながら、怒りを露にする・・・・・
ここにきて今までよりも耐久力の強い手下を使ってくるとは、やはりイライザも博麗の巫女と直接ぶつかるのは極力避けたい、ということなのだろうか・・・・・)
《ヒュオッ》
無数の剥がされた皮膚の集合体と言う、暴虐と苦痛の化身とも言える化物……この耐久力の高さが何なのかはまだわからないが、余程その耐久力に自信があるのか、これまでどれだけの血を吸ってきたのか、夥しい血錆が付いた鉈を振りかざし、霊夢に対しても真正面から飛翔して向かう。
通すわけには行かない来客に真正面から突っ込んでくるとか、頭大丈夫?
(絶対に負けるわけには行かない戦い、霊夢の言葉にも怒りの他に煽りが見え始める・・・・・
真正面から来られて避け無いわけがなく、霊夢は飛行して相手の攻撃を避ける・・・・・
攻撃はまぁ避けられるとして、問題はなるべく自身の力を消耗しすぎずに、相手の耐久力を打破して完全に倒しきるにはどうするか・・・・・)
皮膚の獣
『オォォォ……ォォォ…………』
【悔痛「夢幻の痛苦」】
霊夢が室内でありながらかなりの広さを誇るイライザの玉座前の門から飛び上がるようにして避けた事で皮膚の獣が振るった鉈が空を斬るが、回避した霊夢へ視線を移すと、ちょうど門の真正面に獣が立つような構図になる。
そこへ、無数の統一感がまるで無い雑多な皮膚のツギハギの下で無数の目玉がギョロギョロと蠢き、霊夢を見据えると、霊夢の全身にまるで全身を針で骨まで一気に突き刺されたかのような凄まじい激痛が襲い掛かる。
・・・っ゛!?!?!?あぁぁぁあああああああぁああっ!!!!!
(突然体中に襲いかかった生き地獄とも呼べるほどのとんでもない激痛に、霊夢は悲痛な叫び声をあげる・・・・・
一体どんな技を使ったのかはわからないが、一つ確かなことが言えるとするならば、今までの敵がさほど大したことがなかったということもあってか、霊夢も心のどこかで目の前の敵を見くびっていた、ということだろうか・・・・・)
皮膚の獣
『…………………。』
《スッ》
全身を蝕む凄まじい激痛により悶える霊夢の前にまで再び異形の怪物が迫り、手にした鉈を大きく振り上げてその首を跳ねようとする。
あらゆる防御を貫いて相手に激痛を与えることでスピードや小回りを封じることで確実に相手を仕留める……それがこの皮膚の獣の戦い方だ。しかも、先程の幻魔の中でも飛び抜けて頑丈な体をしている理由は"現世の生物の皮膚を引き剥がして身体中に貼り付け"衣服のようにする事で、例え実体を持った存在が訪れたとしても対処できるようにしてあり、言うなればイライザの狡猾な策略の化身とも言える存在だ。
だが、こんな絶対絶命のチャンスの中で、これまで黙っているだけだった霊夢と同化した朦朧の巫女が霊夢の脳内に声をかける。
朦朧の巫女
『これはかなり厄介な相手ね。
アイツが身に纏っているのは幻覚や悪夢じゃなくて、現世にいる本物の人間や動物の皮膚……同じ現世の実体を用いているのなら、その応用力や、適応力による防御力は貴女を上回っている。』
霊夢が凄まじい激痛に晒されている中でも、朦朧の巫女は冷静な分析を続けており、まず最初に皮膚の獣が持つ異様な耐久力の正体について語る。
・・・っ・・・・・はぁっ・・・・・はぁっ・・・・・
(霊夢は激痛の中でも、なんとか紙一重のギリギリの状態で皮膚の獣の襲撃を避け、そして朦朧の巫女の助言に関して「この状況で・・・・・そんなのどうすればいいのよっ・・・・・!」と、皮膚の獣と激痛の二つと戦わなきゃいけない中で、なんとか出来る後継が全然浮かばない・・・・・)
朦朧の巫女
『……落ち着きなさい。
アイツは外側を現世の生物の皮膚で鎧のようにしているのなら……内側にいる本体を直接叩いてしまえば倒せる筈よ。』
皮膚の獣は両手に持った鉈を振るい、無数の血のように浅黒い斬撃を複数、連続して放ち、激痛で動きが鈍くなっているであろう霊夢を仕留めようとする中、朦朧の巫女は冷静に分析し、外部からの攻撃が通じないと言うのなら、内側から攻撃してみてはどうかと言う。
それができたら苦労しないわよ・・・・・!
(霊夢は、動きが鈍くなっているからか、腕や足といった箇所に、なんとか攻撃を避けた際にできた切り傷が複数でき始めている・・・・・
それに、内側からの攻撃と言っても、それができるほどの隙を相手が見せてくれないのだ・・・・・)
朦朧の巫女
『まあ、その通りね。
倒す可能性のある策が浮かんでもそれを実行できなければ意味がない、当代の巫女の力を見せてもらうことにするわ。』
朦朧の巫女が憑依した事で霊夢が秘めた霊力が底上げされ、全ての攻撃や技の威力が普段の倍に膨れ上がっているのだが、その技については朦朧の巫女は知らないため、倒す可能性のある方法を教えるだけで、後は任せると告げる。
あの血の巨人を討ち滅ぼした時のように、少しばかり特異な技を使用する必要が出てくるだろう。
見せてもらうって言われても・・・・・
(助言こそありがたいものの、ハッキリ言ってここまでの激痛に襲われながら、攻撃を避け続け、相手をなんとか内部から攻撃し、見事倒し切るなんて芸当は、博麗の巫女と言えども簡単ではない・・・・・)
《ズッ》
皮膚の獣は朦朧の巫女と話している霊夢に対し、最初に現れた時と同じように、周囲の闇に一度溶け込んだ後、霊夢の直ぐ目の前で、鉈を大きく振り上げた状態で現れ、手にした鉈を霊夢の脳天目掛けて振り下ろし、攻撃しようとする。
ビシュッ・・・・・!
くっ・・・・・!
(霊夢は間一髪で攻撃を避けるものの、鉈が頬を掠り、傷口から血が出る・・・・・
このままでは、自身の体に鉈をぶち込まれてしまう未来もそう遠くないと過ぎってしまう・・・・・
少しでも距離を詰めた瞬間に攻撃される前に攻撃を放つしかない・・・・・)