榊原君は貧乏神

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1:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio:2017/02/07(火) 18:22

ども、芹菜と言います。

今回は恋愛(?)っぽい感じです、多分。

>>0002 ☆σ゚・*:.。.スレ主より.。.:*・゚σ☆

>>0003 ☆σ゚・*:.。.登場人物紹介。.:*・゚σ☆

18:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio:2017/02/18(土) 17:28

3.貧乏神の助け

宇宙side


その日は、午後からいきなり、勢いの強い雨が降ってきた。

天気予報は、大外れ。

一日中晴れ、ということだったので、傘は持ってきていない。

いつも鞄の奥にしまっている折りたたみ式の傘も、先日の雨以降入れていなかった。

クラスの皆も、傘は持って来ていないらしく、ざわざわと騒いでいた。

この雨は、10分程の雨宿りでは止まなそうである。

しょうがない、濡れて帰るしかないか。

どうせ榊原も、傘は持って来ていない。

いくら神だとしても、こんなことまで見通せはしないだろう。

「宇宙、帰んないの?」

榊原に話しかけられ、立ち上がろうとする。

しかし、濡れて帰るのにはやはり抵抗がある。

当たり前だ。

濡れて帰って風邪でも引いたら最悪。

「あ、もしかして傘忘れたの?ママさん言ってたよ、今日は雨が降るって。」

はぁぁ?

「何それ、私そんなの知らないんだけど。」

ムッとして言うと、榊原はあれっと不思議そうにした。

「あ、そうか、あん時宇宙は顔洗ってたもんね。知らない筈だよ。」

あ、そうですか。

「ま、心配しなくても大丈夫。傘二つ持って来てるから。」

........。

その時私は、榊原を本当に神だと思った。

しかも貧乏神なんかじゃない。

幸福をもたらしてくれる神。

と思ったのも束の間。

「じゃあお礼に、お小遣いママさんに前借りして貰って良い?」

はぁ?

だめだ、こいつはやっぱり貧乏神.....。

19:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio:2017/02/20(月) 19:34

3.貧乏神の助け

宇宙side


次の日、予定通り私は、榊原に頼まれてママにお小遣いを前借りしに行った。

ママは良いと言ったけれど、少し呆れていた。

「宇宙、この頃お小遣い大切にしてないでしょ。ダメよ、なんでもかんでも買っちゃあ。」

それは私じゃないよ....。

落ち込みながらも、ママから前借りの分をもらい、榊原に渡した。

「ありがと、宇宙。」

はぁぁ。

疲れるなぁ、全く。

でもやっぱり、私の日常には榊原が居ないと落ち着かない。

そこは慣れちゃってるんだなぁって感じる。

20:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio:2017/02/22(水) 20:20

3.貧乏神の助け

宇宙side


今はもう、12月になった。

冷たい風が吹き荒れ、日が暮れるのも早くなってきた。

12月のある日。

私は遂に、切れた。

「あのさぁ.....。もう良い加減にしてよ⁉お金取られるこっちの気持ちとか考えた事ないでしょ?」

榊原は、いつもの様に飄々としていた。

「そんな事言ったってねぇ、宇宙?俺、貧乏神なんだよ?そんなの当たり前。」

何それ?

もう嫌だ。

「煩いよもう!そんな事言っても、もう騙されないんだから!」

また叫んだ。

自分の感情が、抑え切れなかった。

榊原は笑っていたけれど、だんだん笑みが消えていった。

「宇宙.....。」

最後にそう呟いてから。

榊原はドアを開け、出て行った。

21:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio (`・ω・´)キリッ:2017/02/25(土) 18:19

3.榊原の助け

宇宙side


私はそっぽを向いて、ベットに座った。

良いんだ、別に。

榊原が居ないからって、何なんだ。

私はそんなダメ人間ではない。

榊原がいない方が、よっぽど楽なのだ。


と。

自分の感情を。

決め付けていた。

次の日も。

その次の日も。

榊原は帰って来なかった。

最初のうちは私も怒っていたから、何も思わなかった。

でも。

居なければ居ないでやっぱり悲しいと思うものだった。

いつから、榊原のいる生活に慣れ切り、こんな風に思う様になったのだろうか。

数学を教えて貰った日から?

傘を貸してくれた日から?

違う。

榊原が私に取り付いた、あの日からだ。

22:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio:2017/02/26(日) 13:15

3.貧乏神の助け

宇宙side


喧嘩したことに、私は酷く後悔した。

なんであんな事、言ったのだろうか。

私は、私は。

榊原の事、嫌いなんかじゃない!

私は、外に出ようとした。

榊原を探すために。

そう思ったけれど。

ドアの前で立ち止まった。

私が探して、どうなるんだろう?

榊原に、「ごめんね。」って言えばそれで榊原とまた仲良くなれる?

そんな訳なかった。

それに。

榊原が何処にいるか知らなかった。

行く宛もない。

榊原に会ったとしても、それが何かを生み出す訳ではない。

やっぱり私は、独りぼっちなんだな。

昔の事を、思い出した。

私はずっといじめられて、苦しかった。

いつもいつも、私は『独りぼっち』だと思っていた。

幸い、いじめは収まったけれど、高校生になった今も『独りぼっち』だった。

榊原に出会ってからは、『独りぼっち』じゃなかったかもしれない。

でも今は。

『独りぼっち』。

『独りぼっち』という言葉が頭の中を埋めて行く。

何がしたいのかわからなくなって。

ベットに倒れ込んだ。

23:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio:2017/02/27(月) 19:36

3.貧乏神の助け

宇宙side


しばらくして、お母さんに呼ばれて下に降りた。

ご飯を食べ、お風呂に入り、髪を乾かした。

今日も明日も、榊原は帰って来ない。

そう思い、部屋のドアノブに手をかけようとした。

その時。

榊原の声が、聞こえた気がした。

「宇宙。」

って。

頭の中に、ポワーンと木霊する。

榊原が、私に話しかけている気がしてしょうがなかった。

思い切って部屋に入る。

そこには。

いつも通りの、部屋があった。

榊原の姿なんて、これっぽっちもなかった。

やっぱり、やっぱり帰って来ないんだ。

そう思うと、両目から涙が溢れた。

なんでだろう。

今まで榊原を、こんなに想ったことなんてないのに。

榊原がいないと、私は寂しいって。

そう気付いた。

涙は、大粒のまま、容赦無く溢れ落ちて行く。

私は突っ立ったまま、泣いていた。

拭っても拭っても、拭き取れない哀しみだった_______。

その時。

パタッと。

ドアの開く音がした。

「そ、ら....?」

榊原だった。

私の嗚咽に、びっくりした様だった。

私は我慢出来なくて。

独り言の様に言った。

「何処、行ってたのよ....。ずっと、ずっと心配してたんだからね...?」

ぽとっと、何かが落ちる音が聞こえた。

私の目からは、相変わらず涙が落ちて行く。

榊原が、歩み寄って来た。

何も言わずに、私の前まで来た。

榊原が、そっと私を抱き締めた。

びっくりして、涙が止まるかと思った。

24:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio:2017/03/01(水) 20:45

3.貧乏神の助け

宇宙side


榊原が、呟く様に言った。

「心配させて、ごめん。でもさ...俺、絶対、いなくならないから。大丈夫だから。」

その言葉に、ホッとして。

私は榊原に縋り付いた。

そっか......そうだよね....。

でも、悪いのは榊原じゃない。

「私こそ....、ごめんね....。榊原の気持ちなんて、全然考えてなかった。」

榊原は、笑った。

「良いよ。それよりさ、宇宙。」

榊原がそっと、私を離した。

ドアのところに行って、袋を拾う。

「これ。」

そう言って、袋から箱を取り出した。

「明日、宇宙の誕生日でしょ。」

あ、そうか。

色々あって、忘れていた。

箱の中身は、カラーボールペンだった。

「宇宙、ノート取るのに色が無くて苦労してたからさ。」

榊原の気持ちが、嬉しかった。

でもなんだか恥ずかしくて、からかってみた。

「貧乏神でも、プレゼントできるんだ。」

榊原がクスッと笑う。

「その涙だらけの顔で言われても、効果ないよ。」

なにそれ!

25:   芹菜   ◆.wmpFy.Zyhxio:2017/03/03(金) 18:45

3.貧乏神の助け

宇宙side


笑いながら、私は思った。

榊原が居るって、楽しい。

榊原が居るって、嬉しい。

そう思った。

なんなんだろう、この気持ちは。

榊原を見ると、胸がドキドキする気がする。

もしかして私....、榊原に『恋』してる?

いやいやいや、そんな...ねぇ。

「宇宙、どうしたの?なんか浮かない顔してるけど。」

榊原が私の顔を覗き込んだ。

「な、なんでもないって!」

必死で否定しながらも、顔が紅潮しているのが分かる。

うわぁ、どうしよう....。


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