榊原君は貧乏神

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1:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio:2017/02/07(火) 18:22

ども、芹菜と言います。

今回は恋愛(?)っぽい感じです、多分。

>>0002 ☆σ゚・*:.。.スレ主より.。.:*・゚σ☆

>>0003 ☆σ゚・*:.。.登場人物紹介。.:*・゚σ☆

4:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio:2017/02/08(水) 17:29

1.貧乏神との出会い

宇宙side(基本宇宙です)


11月15日、土曜日。

此処最近、平年なら暖かめのこの地方は、冷たい風が吹き荒れていた。

だが今日は、嬉しい程暖かい、小春日和。

土曜日で小春日和で、私は帰宅部。

こんな日は滅多に無い。

だからこそ、午後の今はまったりと読書をしたいと想っている。

が、しかし。

こめかみがピクピク動いて居るのが自分でも分かる。

昨日までの冷たい風の様に、私は声を尖らせて叫んだ。

「良い加減にしてよっ、もう!」

自分でもびっくりする程の大声。

こんなに大きな声、どれ程久しぶりに吐いただろうか。

やはりすっきりする。

しかし、大きな声を出したため、多少の恥ずかしさが心を襲う。

まあ幸い、家には誰も居ず、家の前の道にも誰もいない。

ホッと一息した瞬間、怒鳴ったにも関わらず、ポリポリとスナック菓子を食い荒らすあいつの
姿が目に入る。

「あのねぇ、此処掃除したばっかなんだから。早速カスを落とさないでよ。」

再び怒鳴る。

そんな私とは裏腹に、こいつはニッコリと笑う。

「いや、掃除したばっかって言ったって、また明日掃除するんでしょ?」

それはそれで正論であった。

思わず口をつぐむ。

「それはそうだけど………。」

本当にむかつく。

こいつとの出会いは、数ヶ月前に遡る。

5:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio:2017/02/08(水) 21:29

1.貧乏神との出会い

宇宙side


夏休み明け、ある転校生がやってきた。

先生が呼びかける。

「皆ー、今日から一緒勉強する榊原だ。仲良くしやれよ。榊原、自己紹介を頼む。」

榊原、そう呼ばれた男子は、まぁまぁモテそうな顔つきをしていた。

女子は皆、目を光らせている。

「えっと、榊原向葵って言います。千葉から来ました。よろしくお願いします。」

千葉か。

ふぅん、と納得する私。

「よし、じゃあ榊原。お前は……えーっと、蒼波の隣だな。」

はっ⁉

びっくりして前を見る。

榊原とか言う奴と目が合った。

そいつは、「よろしく」とでも言うように笑い、私の隣に座った。

女子のボス、坂本美優(さかもと みゆう)の目が光る。

うわぁ、これからどうなるんだろう。

ハラハラする私に、榊原君が声をかける。

「よろしくね、蒼波さん。」

私は自分の世界に篭っていたため、自分でも気持ち悪い程動揺した。

「あ、あっえぇと、よろしくお願いしましゅ…。」

派手に噛んだ。

榊原君がクスッと笑う。

もう最悪。

そこから消えたい気分だった。

「蒼波さんって、フルネームは何なの?」

話しかけられ、またもやビクッとする。

「あ、ええっと、蒼波宇宙って言います!」

今度は噛まずに言えた。

ホッと一息吐く。

6:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio:2017/02/09(木) 17:02

1 .貧乏神との出会い

宇宙side


「へぇ、なんか爽やかだね。」

よく言われる。

私は何と返して良いのか分からず、黙った。

沈黙。

9月になったというのに、まだ夏の暑い陽射しが教室に降り注ぐ。

しかし私と榊原君との沈黙は、極寒の北極ぐらい寒い程だった。

まぁ良い、どうせこいつと話す気は無いのだ。

女子の目が光るこの教室で、そんな親交的に話せるものか。

ふぅ、と息を静かに漏らす。

授業のベルが耳に染み込んだ。

先生が、「授業始めるぞー。」と言った。

そうか、今日の一時間目は先生担当の公民だった。

18歳選挙権やらなんやらで、最近は公民の授業がやけに多い。

まぁ得意科目の一つでもある訳なので、嫌とは思わなかった。

一時間目が終わり、次が美術だった事に気付く。

絵の具や教科書を揃えて居ると、榊原君がいきなり話しかけて来た。

「蒼波さんはさ。神とか妖怪とか、そういう類の物、信じる?」

予想外の質問で、一瞬思考が停止する。

私はちょっと考えてから答えた。

「さぁ....。でも、居るには居るんじゃないかな。だから神社とかもある訳だし?」

次の授業に遅れないために、手っ取り早く答える。

「じゃあ俺が、その神だったら?」

はぁぁ?

「何それ、どういう意味?」

榊原君の飄々とした態度にムカつきながらも、少し興味が湧いた。

「俺は。正真正銘の、貧乏神。君に取り付こうかなぁって考えてたとこ。」

はぁぁ?
 
ますます謎である。

「おい、そこの二人!早く美術室行かないと、武内先生に怒られるぞー。」

先生の声が飛ぶ。

7:芹菜◆.wmpFy.Zyhxio:2017/02/09(木) 20:02

1.貧乏神との出会い

宇宙side


そうだ、武内先生と言えば、怖い事で有名な先生だった。

高校に入学してから、もう半年近くなると言うのに、全く覚えが悪い物だ。

まぁ、高校生活がどうでも良いのは本音であったが。

榊原君と一緒に教室を出て、美術室に向かった。

「で、蒼波さん。俺、取り付いても良いの?」

あぁそうだ、それがあった。

どうせ貧乏神なんて嘘っぱちに決まっている。

「ご自由にどうぞ。」

そう返すと、榊原君は笑った。

「ありがと。じゃ早速、今日から君ん家に居候させて貰うからね。」

はぁぁぁっ⁉

「それから俺は貧乏神だから、お小遣いとか気をつけてね。」

はぁぁぁぁぁっ⁉

貧乏神⁉

そうだ、自分はなんて事をしたんだ。

貧乏神なんかを家に匿っていたら、家が貧乏になる!

あぁぁぁ、どうしよう。

と心配したものの、パパは会社で課長に昇進、ママは給料の良いパートを見つけ、家は貧乏神などには
ならなかった。

いや、貧乏なのは私だ。

先月も今月も、お小遣いは空っぽ。

全部この榊原が使っているのである。


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