旅鼠の厭世詩

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1:レミング◆yc:2019/09/13(金) 12:00

思い付いたときに詩を書いていきます。

詩ではなく短文に思えることもあると思いますが、
本人は詩のつもりで書いております。

乱入は可ですが、感想を添えて頂けると幸いです。
また、こちらからの感想はあまり期待しないでください。
何分、自分の意見を述べるのが苦手なもので。

252:レミング◆yc:2021/05/13(木) 03:32

自他の境界線が
薬のせいで潤んでいく

水に落とした墨のように
結んでは解ける思考回路
それはいずれ混ざり切る

自由の効かぬ
声帯と舌はべらべらと
出鱈目を並べ立て
その内容に気を取られて
余計に脳が溶けていく

純度の高い狂気の中で
一握りの正気を求めて
喘いでいる

感情と思考の逃げ場が欲しい

それは依存か執着か
はたまた愛か憎しみか

253:レミング◆yc:2021/05/14(金) 02:36

飴の舐めすぎで
擦り切れた口内

湿度が高く低い気温は
ひどく不快で
舌打ちをした

唇の端が切れていた

ぼんやりと街灯を眺める

鮮烈な光に目を奪われた
哀れな虫の亡骸が

光を僅かに遮って
胡麻粒のように
貼り付いていた

黴と生ゴミの匂いのする
部屋から出ても

世界はこんなにも
変わらないのだ

それに何故か安堵して
それに何故か憎悪する

洟を啜って踵を返す

用など端から無かったが
用が済んだ気がしたのだ

254:レミング◆yc:2021/05/15(土) 03:14

私はどうして生きている?
ふと我に返って思う

私のような人間が
ひとり生きたとて
世界が変わる
わけでもない

ベランダの向こうでは
思想をひけらかしたい集団が
これから襲う大惨事を
見ているだけで良いのかと
言葉にしなくて良いのかと
声を上げろと
唾を飛ばして叫んでいる

対岸の火事は楽しい

画面の向こうの非日常
止まぬ雷鳴、暴風雨
顔も知らぬ誰かの語り
それら全てが
面白くて仕方ない

意味を成さない
全てが可笑しい

言葉にならない
全てが愉しい

口角が下がらない
これが愉快という感情か

嬉しや今世
楽しや人生

255:レミング◆yc:2021/05/17(月) 03:00

僕と君の間
穏やかな凪のそれは


綺麗なのは上澄みだけで
底にはへどろのような
醜い悪意が渦巻いている

君と手を取り合ったとき
触れた温度の不快さに
思わずぎちりと
力を込める

すると君は
にこりと微笑み
余計に強く握り返す

互いに血が滲むほど
握り締め合い

振り払った手の中には
赤い鮮血と
黒く煮詰まった因縁が
べったりとへばり付く

へどろのような
君との縁は
とっくのとうに
腐り落ちて

僕の心に膿を残した

256:レミング◆yc:2021/05/18(火) 06:05

どこまでも続く晴天に
思い出さなくていいことが
ふいに脳裏に
浮かんだ気がした

まだ
諦めていないのかと
嗤う自分の首を抑え付ける

まだ
許しはしないのかと
呪いを吐く口を縫い付ける

そうして変わらない朝が来て
絶望しながら布団を這い出る

きっとまたその繰り返し
それでいい

じわじわと血溜まりを
広げるように
本心さえも押し殺して

血が吹き出すことの
無いように

その日が来た時には
もう血が尽きて
壊れてしまえるように

ああそれでも
嫌がって目を背けていても
いつかは
分からなくちゃいけない

その日はきっと今じゃない
と渋る脳に
言い聞かせて

そしてまた
ひとりの世界に閉じ籠もる

永遠に
その日が来ないことを願って

257:レミング◆yc:2021/05/22(土) 20:31

ふと捲ったページ
君の名前が目に入る
その途端に胸が高鳴る

ああ
君はなんて魅力的なんだ
君はなんて人気者なんだ

君は美しい
君は賢い
君は恐ろしい
君は可笑しい
君は強い
君はとにかく素晴らしい

こんなに魅力に溢れている
のにも関わらず

君のその不思議な雰囲気は
見る者の警戒を溶かし
芯に触れ
その全てを狂わすのだ

手を伸ばせば
届いてしまいそうな気さえする

それだから
僕みたいな人間が
一瞬でも
勘違ってしまうんだ

君のことを真に理解するのは
自分だと


全く馬鹿らしいな!

君の目は
誰も何も映しちゃいないさ

君の目に映るのも
君の心にあるのも
全て君の世界だろう

君には誰も触れられない
君には誰も近付けない

麗しき高嶺の花だ
恐るべき異常の華だ

誰も彼もが
血を流す思いで
君の気を引こうとも
君は毛ほども気にしない

それでこそ
毛高き孤高の君だ

ああ
愛おしい君よ

どうか僕から
逃げ切っておくれ

いつまでも
手の届かない君でいてくれ

258:レミング◆yc:2021/05/24(月) 01:35

やたらと喉が渇く

陽はとうに落ちきって
冷えた空気が
足元を抜けていく

最後に君を歌ったのは
いつだったか
もう覚えていない

確かあの日は
目に沁みるような
遠い遠い青空で

昔のことを
思い出していた

まだ純粋に笑えた頃
隣に君だけがいた頃

それが辛いと泣いていた頃

名前を呼びたい
君の名前を

僕の周りには
人が増えすぎた

誰かに聞かせるために
呼ぶんじゃないのに

この声に応えるのは
お前たちじゃないのに

元より
答えは求めちゃいない

ただ
音に君を感じたくて

液晶に映る君も
インクで描いた君も
僕の中の君でさえも
ほんとうの君ではないのだ

夜の空は暗くていけない
涙で滲めば星もぼやける
全てが曖昧でくだらない

青が恋しい
君が恋しい

嗚呼
今日も今日とて
君に会いたい

259:レミング◆yc:2021/05/24(月) 02:18

怒りにも嫉妬にも似た
どす黒い感情が
ぶわりと神経を逆撫でる

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

どうしてあの人は
私以外の声で
呼ばれるのだろう

どうしてあの人は
私以外の声を
耳に入れるのだろう

あいつに
あの人の何が分かる

あの人の名前を
ノートいっぱいに
書き綴ったことは?

あの人を理解するため
月夜の晩土砂降りの中
立ち尽くしたことは?

あの人への愛に悶えて
精神に異常を
きたしたことは?

私はこんなにも
あの人に恋焦がれて
いるというのに

あの人はそんなこと
微塵も興味を
持たないのだ

しかし
それは当然のこと
自然の摂理と
いっても良い

あの人は
こちらに介入しない
それで良いのだ

問題はあいつだ

そんな軽い気持ちで
あの人の名前を呼ぶな

あの人の何も
分かっていないくせに
あの人を本気で
愛したこともないくせに

声に出してふと気付く

私は
あの人の何を知っている?
私は
あの人の何なんだ?

あの人なんていないのに?

260:たかーや社長:2021/05/24(月) 20:56

期待されても迷惑
失敗して失望されるくらいなら
最初からそのままでいい

チェケラ!!おぽーーー!

261:レミング◆yc:2021/05/25(火) 00:05

>>260
キリ番、取られてしまいましたね。
最後の奇声に全ての感情が詰まっていますね……。

262:レミング◆yc:2021/05/25(火) 00:27

貴方のその
言葉を発した後に残る
氷の粒が転がるような
涼やかな吐息の余韻が

貴方のその
太陽に照らされて煌めく
柔らかな毛先の光沢が

貴方のその
低いテーブルに
窮屈そうに折り曲げられた
長い両脚が

貴方のその
退屈そうについた頬杖が
笑みを湛えた薄い唇が
危うく輝く瞳が
酷くがさつな動作をする痩躯が
瞬きの度に音のしそうな睫毛が

大袈裟に開かれた
口から覗く獰猛な歯が

演技がかった態度に隠した
底の見えない本性が

そして何より
貴方は心の底から
貴方であるという
その自我の全てが

私を狂わせる

263:レミング◆yc:2021/05/28(金) 01:51

やるならとことん
大袈裟に淑やかに
威風堂々と謙虚に

本心なんて柄じゃない
最後まで飾らない
中々ままならない
しかしそれで構わない

さァ
賭けよう

fifty-fiftyなこの勝負
切り札はジョーク
または言わば漁夫の利

死角から飛び出せ
誰も見ちゃいないか
それも今のうちだ

どん底通り越して
裏っ側さえも目に
焼き付けた

生半可じゃない覚悟
決めて

放り投げた賽の
目は見ずに

飛び立ってやんのさ

264:レミング◆yc:2021/06/04(金) 17:14

他人の心に唾吐いて
震える手でチャカ持って
喧嘩腰のダサい虚勢

煩い
黙って騙されろって
汚い
寄って来ないでって

我儘も大概にしな

奈落の底で藻掻いた
っていつまで
縋ってんの

手首の傷は生命線
強めのお薬増やして
鍵付きの部屋でしか
生きられない

惨めにならない?

ああそうか
感性もランダムで
売ったんだっけ

哀れな姿
見せびらかして

ノータリンから
金巻き上げて

挙句の果てには
孤独です

笑わせんなよ

まるで新興宗教
信者は盲目

倫理なんかは
とっくに捨てた

玉座に凭れた教祖様は
今日も
安全網の中から吠えてら

265:レミング◆yc:2021/06/07(月) 20:07

君のいない世界に意味はない
ありふれた言葉だ

君がいる世界は
君が笑う
君が呼吸をする
君が僕を見つめる

君がいて
そこで始めて意味を持つ

それなら
世界が先に壊れたとしたら?

回ることをやめた星
進むことをやめた物語
生きることをやめた人々

それでも君が
そこにいるなら

266:レミング◆yc:2021/06/07(月) 20:17

無意味に鋭利な言葉に
心底嫌気が差す

機嫌取りは得意じゃないんだ
そう一斉に叫ばないでくれよ

他人が信じられない?
正義は思考停止の象徴?
悪こそが真理?
もう生きていたくない?
この世の全ては金?
この世の全ては嘘?
人間に価値などない?

知らねえよ

わざわざ足を運んでまで
言うことがそれか
ご苦労なこったな
可哀想な人生

ため息と共に煙を吐いて
逆さまの十字架を
薪に焼べた

267:レミング◆yc:2021/06/11(金) 01:58

カーテンを揺らす
初夏のぬるい風が脳を梳く

全身を覆う柔い熱が
気怠くまどろみを誘う

四畳半の空洞に
秒針が時を刻む音だけが
響いていた

夢を見た気がする

天国の庭師が枝を落とした

鋏が溢れて星となる
願いを聞けば鋭く刺さる

そんな夢を

貝殻の中から覗く眼差し

見つめ合うは新海の姫
目が合ったことは一度も

そんな夢を

幽霊さえも躓かせる石

何度も躓いてしまうから
死んだことさえ気付かずに

そんな夢を

命の砂時計は角砂糖

甘い夢を見て眠りにつく
落ちても溶けても同じこと

そんな夢を

操り糸とピアノ線が絡まる

操られなきゃ動けずに
操られれば四肢が飛ぶ

そんな夢を

夜花が今更泣いている
朝露になるには遅すぎた

そんな夢

鳥の声さえ聞こえない
淡い眠気に囚われていた

昼下がりは憂鬱とともに

268:レミング◆yc:2021/06/14(月) 01:21

邪魔なほどに
飛び交う賛辞に
目が眩む

成功は枷だ

どれだけ
煌びやかな宝を
渡されようが

重みに耐えられぬ
脆弱な身体に
変わりは無く

きっとそのうち
身動きが取れなく
なってしまう

湧く有象無象の足元に
踏み潰された花を見て
私は思わず嘔吐した

心臓を穿つ
衝動に悶えながら

今日も

脂汗の滲んだ
笑顔を作る

269:レミング◆yc:2021/06/17(木) 15:08

手は振ってやらない
そんな動作に意味はないから

そっと本を閉じた

目を瞑ると涙が
溢れてしまいそうで
口を開けば嗚咽が
漏れてしまいそうで

放心したように
ただぼうっと手元を眺めた

それでもやっぱり
視界は歪み
喉がつかえる

あと一歩で泣いてしまう
そんな時

“終わらない”と
声が聞こえた

私達に終わりなどない

忘れるのが怖いなら
見に来れば良い
会いたいなら
会いに来れば良い

私達はずっとここにいるから

狡いじゃないか
そんな優しい声色で
そんな優しい眼差しで
私の心を撫で付けるなんて

ついに
ぼろぼろと涙が溢れる

それは想定より
ずっと暖かく
ずっと晴れ晴れとしていた

本の匂いがする

埃を被った古本のような
新しく刷られたばかりのような

それはとても心地良く
どこか刺激的な匂い

今日も私はノックする
新しく古びた
懐かしいようで新鮮な
通い慣れた部屋のドア

開けば
きっと貴方がそこにいて
紅茶を淹れて待っている

“ただいま”と言えば
本から顔を上げて
“おかえり”と返して

“さあ今日は、どんな話が聞きたい?”


手は振ってやらない
これは
さよならなんかじゃないから

270:レミング◆yc:2021/06/18(金) 02:06

空がやけに遠いから
見上げた首が逆さに落ちる

水面を蹴る
底の灼けたサンダル
弾けるように
飛沫が上がる

行き場の無い感情に
囚われたまま

何処へも行けず
燻むほどの青の中心で
立ちすくむ

意味もなく
胸が痛むから
助けを求めて
手を伸ばすけど

青にも白にも
手は届かずに
透明でいて空を切る

染まるのが嫌だった

僕は僕のままでいたかった

けれど今
手を見ると
ぐちゃぐちゃに混ぜた
欲張りな色が
細胞の奥まで潜り込んで
もう一生
拭えない

いらないのに
いらなかったのに

無ければ
生きてゆけないのだ

誰の声も
誰の歌も
灰色の雑踏にしか
聞こえない

あんなに鮮やかだった
君の声ももう
あの灰色に紛れてしまった

守りたかった

とっくに色を見失った
僕を守って欲しかった

目も眩むような壮大な夢を
胸が躍るような壮大な色を
いつまでも
大事に抱えて

けれど

幻想は
目を離した隙に掻き消える

汚されてしまった
いつのまにか
居なくなっていた

汚い僕が居るだけだった

空は綺麗だ
どこまでも青く透き通って
救いもせずに
ただそこにある

一面の絶景に
僕だけが

蟲のように醜く
未練がましく
貼り付いていた

271:レミング◆yc:2021/06/20(日) 03:57

どれだけ言葉を
飾ってみたって

それが届かないことに
変わりはなくて

眩しいくらいの幻想を
空っぽの心に
詰め込むだけ

煩いくらいの高鳴りを
両手の奥深くに
仕舞うだけ

酸いも甘いも
そこには無くて

ただ血のような
生臭い苦みが
口の中いっぱいに
充満していた

笑顔も真顔も変な顔も
全て等しく
緩やかに
残酷に
心を掻き乱す

怒りも憂いも喜びも
全て等しく
たった一つの視線で
面白いほど
操られる

どれだけ屁理屈を
並べたところで

それが恋なことに
変わりはなかった

272:レミング◆yc:2021/06/20(日) 03:59

足元が
波に浚われ崩れるような
感覚

削り取られた
角があったはずの場所を
てのひらでなぞり
爪先に吐いた

“そういうのはもう
恥ずかしいから”

その言葉を聞いて
また胃液が込み上げる

ぞわぞわと
全身に鳥肌が立ち
膝が震えて
立って居られない

素晴らしい夢物語を紡いだ
その口で

そんな
つまらない現実を
吐かないでくれ

美しい美しいその毒は
水なんかにならないだろう

禍々しく鋭いその刃は
今更溢れはしないだろう

自ら滴る猛毒を呑んで
自ら手に持つ刃で刺して

挑発的な笑みを引っ込め
無理矢理人の良い演技をして
個性を殺して

それは
そんなのは

貴方じゃないだろう

273:レミング◆yc:2021/06/20(日) 04:00

見ている世界が
あまりに狭いのだ

私はただ
箱庭を覗き込んで
生きた気に
なっているだけ

井戸ですらない
水溜りの底を浚って
光る砂利を見つけて
喜んでいる

滑稽で
愚かで
どうしようもなく馬鹿だ

そうだ
始まりはいつだって
突然で

そして終わりは
ひとつじゃない

いつまで閉じ籠っているつもりだ

いい加減
現実に目を向けろ

開き切った瞳孔を
引き絞れ

無理にでも光を見つけろ
苦しくても肺で息をしろ

そうしないと
人は生きられないのだ

274:レミング◆yc:2021/06/22(火) 01:26

倦怠感と微熱に囚われて
眠れない

このどうにもならない
感情の澱を
消して、ブルー

凭れたいだけだった
ただ
少しだけ体重を預けて
淡い安堵に浸らせて

酩酊感と哀傷の板挟みで
眠れない

脳内にまで染み付いた
薔薇の香りを
消して、ブルー

貴方に酔っていた
背中に回る腕が
熱く
私の理性を溶かしてゆく

焦燥感と未練に苛まれて
眠れない

甘く思考を鈍らせる
唇に乗った体温を
消して、ブルー

幸福と温もりは
一瞬の煌めき

私をすり抜ける雑踏
貴方は明後日を向いて
瞳を輝かせて
私の瞳を曇らせて

ああ

ブルー、

滑稽なほどに恋をした
哀れな私の身と心を
消して、ブルー

275:レミング◆yc:2021/06/23(水) 02:55

知らない子供の
噂で聞いた

夏が死んだらしい

幾ら何でも
早すぎるだろう
僕は信じていなかった

ドアノブを引いて
外に出る

風が吹いていた
青空が広がっていた

夏が死んでいた

風はただの風だった
空は青いだけだった

ぶわりと
吹くだけで
息が止まりそうな
風が死んでいた

目に沁みるほど
鮮やかで透明な
わたあめ雲を乗せた
青空が死んでいた

耳元で生命の絶叫をする
蝉が死んでいた

茹だった意識の手を引く
熱が死んでいた

景色を指で擦ったような
陽炎が死んでいた

夏が好きだった
僕が死んでいた

夏が死んでいた

276:レミング◆yc:2021/06/26(土) 01:34

これで最後だ

グラスに残る
ひと口を見つめる

身体が火照るような
ぼやけるような感覚

本当は
君に見せたかった

命の灯る美しい夜景も
静かに見下ろす星空も

それなのに

約束したじゃないか、
この
この、

嘘吐き

宛ての無い悪態は
視線の先の
真っ赤なそれに
溶けてゆく

徐に力が入らなくなり
椅子から転げ落ちて
のた打ちまわる

生理的かもしれない
涙が流れる

吐き気がこみ上げる

吐くな
まだ

まだ
駄目なんだ

空の小瓶の注意書きが
歪んで見える

これで最期だ

震える四肢を
無理矢理伸ばし
テーブルの前に
這い戻る

グラスを引っ掴み
底の一滴まで飲み干す

これで
また、

君に会える

277:レミング◆yc:2021/07/02(金) 02:45

ああ
苦くて苦くて
吐き出してしまいそうな
人生

みんな妥協のカプセル
飲み込んでくのに
私だけが往生際悪く
底を掻いて
水を吐いて

お綺麗な言葉も
出てきそうにないから
とっとと醜く
くたばっちまいたい

宵闇は別に怖くない
嘘怖い
けどそれよりずっと
醜い私を照らしてしまう
光が怖い

はずでした

理由はこの際どうでもいい
とにかく私はお前に会った
出逢った

お前は
サーチライトみたいな
凶暴な光で
私の目を潰しやがった

それ以来
そうさ知ってんだろ
そんで今

このどうしようもなく
ぐちゃぐちゃなテーブル
片付けてみようと思うんだ

嫌だね

今度は
甘くて甘くて
しょうがないのに
吐き出すわけにいかなくなった

278:レミング◆yc:2021/07/05(月) 23:42

食器棚が開いていた
透明な羽の虫が飛んでいた
風邪薬の箱が落ちていた
ペットボトルを踏んだ
画鋲が取れかかっていた
盛り塩が崩れていた
スマホのカバーを割った
サプリのチラシがはためいた
飴の包みを破いた
花壇が掘り返されていた
リモコンの電池が切れていた
近くの川で子供が溺れた
整髪料が切れていた
カレンダーをめくり忘れた
君が死んだ
蜂蜜が白く固まっていた
靴箱に蜘蛛の巣が張っていた
ウイスキーのグラスを買った
キッチンの小蠅を潰した
昨日の新聞を踏んだ
君が死んだ
空き缶が水を弾く音がした
イヤホンが絡まっていた
鞄の底のレシートを捨てた
ゴミ箱がマスクで一杯だった
枕から綿が飛び出ていた
牛乳パックが干してあった
時計が埃を被っていた
蚊取り線香が終わっていた
炬燵を出したままだった
乾麺が散らばっていた
饐えた匂いが充満していた

君が死んでいた

279:レミング◆yc:2021/07/08(木) 15:30

腐った水が飛沫を上げる

肺を覆う
生温い虫の吐息

頬を伝う
溝色の倦怠感

綱渡りから落ちている最中

足を進めるごとに
首のロープが
締まってゆくような

時間をかけて
積んだ石を
目の前で崩されて
いるような

そんな

錯覚

虚しくて
馬鹿らしくて
辛くて
もうこれ以上は
生きられない

いずれ土に還るものならば
それが今であっても
同じこと

ふと
頭上に確かな質感

280:レミング◆yc:2021/07/08(木) 16:12

借り物の言葉を安く飾って
表面だけの声で汚して

本当の言葉の意味を
分かっているのか

目先の流行りに
飛びついて
リスペクトの語彙で
泥を塗りたくり
雑音で想いを掻き消した

ダブルが主なスタンダード
機械には人権は無い

深ければ良いのだ
評価が全てだ

見られる価値しか
見てはいない

浅はかな考えだ
浅はかな人生だ

それに騙される奴らも
みんな揃って大馬鹿どもだ

どうせ
こんな想いは届かない

最初に言葉を生んだ者の
気持ちなど

281:レミング◆yc:2021/07/12(月) 00:42

雨のにおいがする

水溜りに跳ね返った
クラウンが
今日の王さま

傘が飛沫を上げて
逃げ出すまえに
停留所に辿り着く

赤いランプが水滴に
飾り立てられている

何を、
待っているんだっけ

ふと
我に返る

青ばかりが目立つ
まるで稚拙な
絵画のような
眼球に映る景色

レンズ越しと
何が違うんだ、

そう不貞腐れて
水が這ったあとを
指先で伸ばす

ずぶ濡れのスカートは
いつもよりずっと
綺麗に見えた

空に
地面に

逆さまに落ちていく
球の鏡と私の心

282:レミング◆yc:2021/07/15(木) 19:59

誰の唯一にもなれない

私は乾き切った
汚い愛の器であった

私が血を吐くほどの
愛を捧げようと
持つ者には到底敵わず

いっそ笑えるほどに
ちっぽけな
掌に残る愛のかけらを
見つめるばかり

愛されなくてもいい
ただ愛したい

だが
こんなにも穢れた愛を
誰が受け取ると
いうのだろう

毒にも薬にもならない
醜いだけのそれを

私が愛した者は
きっと
受け取りはしない

だからといって
嘆いても喚いても
死んだとしても
その時ですら
何者にも
看取られることはない

誰かの心に
ちいさな擦り傷を作って

この惨めな愛の一生を

283:レミング◆yc:2021/07/15(木) 21:00

ああ狂気よ
美しき異常よ

私を助けておくれ

私を
この感情の澱から
救ってくれ

狂気よ

私はそれを
否定しないよ

狂気の果てに
殺めようと
くたばろうと

それが醜くても
許せなくても
消したくても

否定しない

だから
この手を取って

疲弊しきった
この脳を

底の無い
思考の檻に
閉じ込めておくれ

284:レミング◆yc:2021/07/23(金) 03:46

陽だまりの真ん中
淡い光に溶けていって
しまいそうに

君が僕に
手を振っていた

はやる心臓を抑えて
君の名前を呼ぶ
いや、叫ぶ

消えてしまわぬように
拐われてしまわぬように
全速力で駆け寄る

まさか会えるだなんて
思わなかった!

喜びに震え
汗でびっしょりの手を
差し伸べると
君はそっと受け取った

あまりの感動に涙を流す
僕を見て
君はくすりと笑い

いつでも会えるよ、
__がそう望むなら

と言って

消えた

呆然と立ちすくむ僕
手元にはひと束の紙

それは途中までかいてあって
完成はしていなかった

僕はしばらく
それを見つめて、
踵を返す

すぐにでも
続きをかかなくてはならない
望まなくてはならない

だって僕がかかなければ
君に会えないのだ

285:レミング◆yc:2021/07/25(日) 03:58

貴方は特別な人じゃない

それは正しく
確かな事実で
しかしあくまで
世界にとって

私の世界は
貴方を中心に回っている

私は
貴方が起きるであろう
時間に起きて
貴方が食べるであろう
ものを食べて
貴方がしたであろう
姿をえがく

そうして夜も
貴方の夢を見て眠る

貴方という存在が
貴方という言葉が
私の目覚める理由であり
心臓を動かす理由である

貴方という世界は
今日も今日とて
歯に沁みるほど
甘ったるく
私の脳を侵してゆく

その痛みは
苦しみは
もどかしさは

もはや
恍惚ですらあるから
きっともう手遅れだろう

もしも貴方が
今更実在を否定したとて

私の
哀れに暴走した愛は
止まるわけがなかろうが

286:レミング◆yc:2021/07/31(土) 00:47

飛ぶネズミの騒めき
ひゅうと喉を通る
湿った風

子供が誤って手放した
色とりどりの風船は
灰色の空によく映える

横転したバス
火薬の匂い

冴え渡る笑い声
招待状

弾む心音
浮き足立つ胸ポケット

歩調は早歩きからスキップ
スキップからのターン

重々しく
聳える廃ビル

嗚呼
それもあと僅か!

287:レミング◆yc:2021/08/05(木) 03:55

盲目なんだ
白昼夢の隨に
薄れてしまうような

それなら

乱反射した
青色さえも
今は忘れていたい

湿気った
あの日の憧憬

釣り針に指先を
夕焼けに葛藤を

剥き出しの心臓を
宥めて
愛して

惨い

そんなのは反則だ

お前は
泣いている
ばかりじゃないか

鏡を殴って
怒鳴りつける

ああ
世界はこうして
終わるんだろうなって

人の死に
意味があってしまう

それは酷く単純な
須く消えたいような

これだけ
ぶつくさ言ったって
きっと誰の耳にも
届いてやいないんだ

ならば
さらば

さらば
夏の風

288:レミング◆yc:2021/08/15(日) 02:06

夜はあげられない

君は
苦笑いをしてそう言った

私は沈む太陽で
登る月だから
月が沈んで
太陽が登ったら

私のものじゃなくなるの

紫色の煙を纏って
無限の光を引きずって
君は夜になる

月の鐘が鳴るたびに
君は眠りの糸を紡ぐ

私はきっと夜だけど
夜は私のものじゃない
だから、

そう繰り返して
一層悲しげに笑う

いらないことを
言ってしまったと
今更悔いたところで遅い

289:レミング◆yc:2021/08/15(日) 02:07

こんなにも熱く
激しい季節が
物悲しいのは何故だろう

呑み込まれそうな
入道雲は儚くて

目に刺さるほど鮮烈な
青空は涙を誘う

刺激的なのと同じくらい
夏は寂しい
夏は悲しい

青が全てを浚ってしまう
波の音で霞んでしまう
ひりつく暑さに胸が高鳴る

それはきっと
夏に恋をしているから

290:レミング◆yc:2021/08/15(日) 23:08

ふと視界が翳る
闇を引き連れてきた
それは

涼しい顔で
私の人生を
踏みつけていった

私が死ぬほど欲した
それを

いくつもいくつも
掲げていた

血反吐を被る

天才とは

それは
凡人にとっての
絶望そのもの

凡人が
人生をかけて
作り上げるものを

凡人が
人生をかけて
理解することを

凡人が
人生をかけて
遺すものを

もうすでに
掌のなかに

なす術もない
劣等感
敗北感

今までに無い
焦り
妬み
憎しみ

憧れ

吐瀉物で溺れる

私は貴方の
慰み者

私は貴方の
癒しの木陰

冗談じゃない

その煌びやかな
足の下の
泥まみれの努力

知らないとは
言わせない

いつか膝をつかせてやる
いつか寝首を掻いてやる

笑顔は威嚇と
同義だという

今日も私は
微笑んで
皮膚の一枚下で
牙を剥く

291:レミング◆yc:2021/08/22(日) 22:10

明日を夢見ては崩れゆく
灰色の廃遊園地な脳内

そうかい

そんならここで
くたばろう
三、二、一で
トんでやろう

自傷にすら疲れた
愚民どもが今
恩を仇で返しやがる

ナメクジをピストルに
詰めて応戦しよう
ジョークは常套句だろ

ほら

ClownはCrownになり得る
からこそ
継ぐのが難しいんだろう

忘れ去られた夢の国の
我が王よ
悲劇の夜を笑おうよ

革命前夜に何を思うか
なぁ、どうよ?

292:レミング◆yc:2021/08/24(火) 01:17

無い
何もかもが足りない

大切だったものはすべからく
掌から溢れていった

欲しいものは
時間が経っても
金を積んでも
決してこの手は
届かない

妬みに嫉み
僻みに怨み

まずは
邪魔なこれらを
捨てなければ
目の前にあったとしても
手に入れられない

できたらとっくにそうしてる

一生手に入ることはない
一生離れることはない

もう本当に
いやになる

293:レミング◆yc:2021/08/28(土) 00:47

目に刺さるような晴天で
泡立った雲は際限なく
縦を横を白で埋め尽くす

ああまったく、
どうしようもない人生だった!

日は昇ったばかりと見えて
暗がりを抜けた尊い光は
そのうち燃えるような
赤に染まって
再び闇に溶けてゆくのだ

つまり、
全盛期なのだ!

青は歓喜と涙の色だ
目尻にたっぷり涙を溜めて
大笑いする

最高の夏だった
身を焦がす青空を前にしても
薄れないほどの夏だった

本当に
本当に、
最高の人生だった!

294:レミング◆yc:2021/08/30(月) 08:28

ああ、お前はまた
泣いているのか
忙しないな全く

いつまで頁を
広げてるつもりだ
さっさと閉じろ

いいや違うな
終わりなんかじゃないさ

おしまいなんかじゃない、
言うべき言葉があるだろう

ほら

めでたしめでたし

295:レミング◆yc:2021/08/30(月) 20:07

ゴミクズみたいな人生だった

黴と埃で濁った世界は
足元も見えなくなるほど
嫌いなものが溢れてた

劣った人を見下した
本当に最底辺だったのは
僕の方だった

自分より下を浚って漁って
不安と嫌悪が纏わりついた
粗探しをして時間を殺した

誰も彼もに見放された
何より自分が大嫌いだった
全てを悔やんでいた

そんなことすら
どうでもいいほど
脳内はとっくに
腐敗しきった

どこを見ても
泥と闇でいっぱいだった

生きた心地はしなかった
死んだまま生きていた

そこに

手が、差し伸べられた

暖かかった
光っていた
希望の色をしていた

笑っていた

いつのまにか
笑えていた

今も、

生きることは未だ苦痛だ
全部変わったわけじゃない

けれど
もう諦めない
明日を信じられるから

ありがとう
なんて言葉で表せない

きっと忘れない
終わらせなんかしない

ずっとずっと、ここにある

296:レミング◆yc:2021/08/31(火) 13:50

長いような短いような
例えるなら
闇を照らすには充分な
刹那の煌めき

思っていたより随分
呆気ないな

なんせ
エンドロールも
カーテンコールも
無いのだもの

惜しみない拍手を
君へ
君たちへ

ああ
ごめんねやっぱり
笑顔だけじゃ
済まなかった

でも涙を湛えたままじゃ
心が伝わらないだろう?

惜しみない拍手を
愛おしき物語へ
退場したあの子へ
君へ

それではまた、
いつか出逢う日まで。

297:レミング◆yc:2021/09/09(木) 03:40

貴方は言った
「刺激が足りない」と

貴方に嫌われたくなくて
私は刺激を作ることにした

椅子の底を抜いてみた
貴方は底が抜けても驚かないで
空気椅子で本を読んでいた

部屋を一面赤く塗ってみた
貴方はひと目見回して
「センスが悪い」と毒づいた

紅茶に塩を入れてみた
貴方は少し眉を顰めて
そのままぐっと飲み干した

カップを爆発させてみた
貴方は破片を放り投げ
新しいカップを取り出した

貴方は何をしても驚かない

ここに連れて来たときも
そうだった
声色ひとつ変えないで
「哀れな奴め」と
たったひと言

どうしたら貴方は
満足してくれる?

どうしたら貴方を
引き留められる?

私はあの娘になれないのに

貴方は笑いもしなく
なってしまった

どうしてよ
どうして私はダメな子なの

頭も悪いの
センスも無いの
愛し方も分からないのよ

私は貴方を幸せにできない
貴方を幸せにできるのは
あの娘だけ

私はあの娘にはなれないの
なれないのよ

それでも貴方は
あの娘じゃないと駄目なのね

私は貴方を引き留められない
きっと貴方は
あの娘のもとへ帰ってしまう

でもそれまでは
ほんの泡沫の夢を見させて

私は貴方を愛していたの
私は貴方と幸せになりたかった
私は貴方を幸せにしたかったのよ

本当よ
愛していたの……

298:夢幻:2021/09/09(木) 04:10

乱入失礼いたします

とても素敵で、惹き込まれます…

ファンになりました。

299:レミング◆yc:2021/09/14(火) 00:19

>>298
ありがとうございます。お褒めに預かり光栄です。
自己満足のつもりでしたが、褒めて頂いて更にファンにもなって頂けるとは、とても嬉しいです。
きっと、詩も喜んでいます。

300:レミング◆yc:2021/09/14(火) 23:09

貴方が何か見るたびに
貴方が何か言うたびに

血反吐を吐く
思いがする

それのひとつひとつが
私に向けられたものなら
どんなに良かったか

そんなふうに
考えていることすら
吐き気を催す
自己嫌悪を呼ぶ

ああ気持ち悪い!
汚らわしい!
愚かしい!

私はこんなにも
醜い
汚い
惨めったらしい!

私は愚かな邪魔者だ
私は当て馬
かませ犬
泥棒猫だ

私さえいなければ
貴方はきっと幸せになれる

私さえいなければ!

けれども今更
貴方への想いを
捨てられない

部外者の自覚はあるのに
それでも貴方を愛していた

貴方を愛している

それだけは確かだ
それだけ、
私にはそれだけしかない

それさえあれば
別に良いんだ

貴方に愛されなくとも、

301:レミング◆yc:2021/09/15(水) 23:11

最後の恋だった

惨めだけどまっすぐで
淡くて長い恋だった

あなたへ渡すラブレターを
書いていた

可愛く見えてくれるように
少し気取って
いつもはあたしと書くところを
わたしと書いたの
あたしがわたしになった瞬間

結局渡せはしなかったけど
あたしをわたしにしたのは
確かにそれはあなただった

あなたのせいで変わったこと
食べ物の好み
字の癖
シャンプーの香り

沢山たくさんあるけれど
1番覚えているのは
それなの

ただの女の子が乙女になった
あなたのせいで
あなたのために

302:レミング◆yc:2021/09/18(土) 23:24

あんまりじゃない、
マイハニー?

あたし貴方の愛の奴隷よ
貴方だけの籠の鳥よ

三歩後ろを歩いたのは
貴方の落とし物を
拾うため

貴方と食事を摂らないのは
貴方の残したものを
食べるため

お喋りせずに
黙っていたのは
貴方の話をよく聞くため

貴方と目を合わせないのは
貴方に吐かれた毒の言葉に
耐えるため

貴方への称賛を
貴方への感情を
貴方への愛を

全て言葉にして伝えたわ
全部全部ほんとうだから

貴方の暴言を
貴方の嫌味を
貴方の愚痴を

全てまじめに受け止めた
全部全部我慢したのよ

これが愛じゃないと言うの

あたしだって
貴方への怨み辛みを
詩にしたって良かったのよ

それをしなかったのは
何故だと思う?

それがあたしなりの
愛だったのよ!

それら全部を
独り占めしたかったの!

いくらあたしでも
“ご褒美”が無きゃ虚しいわ

今までずっと
あたしなりの愛を
伝えたつもりよ

けれどそれも
意味がなかったと
そう言うのね

ああ、悲しいわ
マイハニー!

そこらの女とは違うから
あたしだから
耐えられたのよ

ほしがりさんも
度が過ぎると
可愛くないのよ

だから、ねぇ?
分かるでしょう?マイハニー

303:レミング◆yc:2021/09/21(火) 02:29

光も心も失って
どうしようもない
ド腐れ生命

酸素も水も無駄なんです
寝るのも動くのも面倒です

横たわった敗れた夢とか
輝いたはずの日々とか

失ったから
見落としたから
もう戻れはしないから

やるせなさを噛み砕いて
苦い味が舌に残って
息が詰まる

後ろめたさを振り解いて
それでも未練が
張り付いて

逃げる体力は残ってない
遂げる気力は残ってない

永遠に生きるなんて
無理ならもう諦めよう

僕が死ぬか
世界が終わるか
そうでもしないときっと
変わらないんだ

震えた声で虚勢を張ろうが
ひび割れた傷口を隠そうが

いつまで経っても臆病な
心が拒む

「まだ癒えない」と
駄々をこねる

いつまでこんな風に
目を逸らせば良いかな

ああでも
駄目だね

まだ
動けないや

304:挑戦者:2021/09/21(火) 21:44

あぁ

僕はいつまで

トミカを拝めば気が済むのだろう

気づけばトミカコーナーで

新車を探してる

もう中3だから

トミカなんて

と思うけど

不思議と拝むのが

いちばん安らぐんだなあ

305:挑戦者:2021/09/21(火) 21:46

レミングさんのポエムは世界観が通っていて良いと思います。

テンポも良くて読んでいて気持ちが良いです。

306:レミング◆yc:2021/09/26(日) 05:02

>>305
ありがとうございます。お褒めに預かり光栄です。
一人ひとり別の思想と感性があるように、詩もそれぞれ別の世界があると思って書いております。その一つひとつが混ざり曇ってしまわぬように気をつけているので、そこに着眼して頂けてとても嬉しいです。

挑戦者さんの詩、拝見しました。
挑戦者さんの詩は随筆のような現実感と鮮明さがあって、どこか他人事でないように思える、とても良い詩だと思います。

307:レミング◆yc:2021/09/30(木) 07:31

穏やかな笑みを浮かべ
寝転がるきみ
まるで死人みたいね
まるで!

それじゃあ
お葬式をしてあげなきゃ

棺桶に入れて
死化粧をして

黄色い薔薇を
手向けてあげる

後悔してね
たくさんたくさん

いいえ違うわ
これは恋じゃないの
恋になれなかったの

愛してもないくせに
可哀想にね

人は呼んであげない
きみには
お友達がいたものね

たくさんたくさん
私以外に

一輪だけの
黄色い薔薇が
色とりどりに
汚されてしまう前に

きみを

きみに
妬いてあげる

後悔してね
たくさん

308:レミング◆yc:2021/10/01(金) 01:51

夏の風が吹かなくなって
煙る熱気が息を潜めて

「夜が長くなったね」と
君が言う

夜は嫌いだ
君に会ってしまうから

鉛のような僕を放って
射干玉の世界を
君だけが

白い月と軽やかに踊る

僕を放って

朝は嫌いだ
君が離れてしまうから

何も知らずに君は
笑うんだ

汚い僕に無邪気に
淀んだ僕にふわりと

涼やかな微熱
手は届かない

僕は醜い感情で
重たくなっていくのに
暗く深く沈んでいくのに

君だけ綺麗なままなんて
ずるいや

309:レミング◆yc:2021/10/03(日) 03:04

今日死したあなたたちへ

心からの労いを
熱い抱擁を
破れんばかりの喝采を

その死には
意味があるでしょう

その過去には
価値があるでしょう

その功績は
讃えられるべきでしょう

白花を添えて

心からの労いを
熱い抱擁を
破れんばかりの喝采を

310:レミング◆yc:2021/10/12(火) 03:15

揺れる触れる
気がふれる

きっと
貴方もそうして
しまっていたい
でしょうから

もっと
私の分だけ
抜き取ってしまえば
楽でしょうから


貴方じゃなくていいの

貴方
いつまで
そうしてるつもりなの

ねえ前後不覚
念も深くその
『さらば』に意味を
塗りたくって

思い出よりも
浸っていたいのなら

ずっと
心酔しちゃってる
ことでしょうから


気付いてしまったの

貴方
いつまで
そこにいるつもりなの

ねえ意味無くなる
息が詰まる

ほら
馬鹿みたいでしょう?
って

そんな
ただのうらみごと

311:レミング◆yc:2021/10/17(日) 16:18

「夜を奪ってやろうか?」

慈愛に満ち満ちた目で
あなたは
そう語りかける

一寸先は目を焼く光
足元は腐って今にも抜ける
返す踵は擦り切れた

私は迷う
返答に
道に
ずっと前から迷っていた

夜は停滞の温床

寝床で『朝』から
目を逸らす

光に晒されるのが怖くて
自らの醜い姿を
見たくなくて

絶望するのが怖くて
希望を掲げる
勇気もなくて

ずっと
夜で腐っていた

空想の出涸らしを絞って
頭痛の擦り寄る
惰眠を貪る

呼吸をする糞袋
それが今の私

このままではいられない
分かっているけど

「だから」

あなたは再度笑みを深める

「意気地なしの代わりに
 俺が追い出してやろう」

__夜から。

312:レミング◆yc:2021/10/29(金) 02:42

君はよく言っていた
「やりたいことが多すぎる」

生きてる間に
やり切れると良いんだけど

そんなお決まりの冗談

やりたいことがたくさんある
いつでも君は言っていた

世界一周してみたい
激辛料理を完食したい
本を出してみたい
ウユニ塩湖に行ってみたい
スリーポイントシュートを決めてみたい
お米だけ山盛りで食べてみたい
夢の世界を誰かに見せたい
山を買ってみたい
髪を真っ青に染めてみたい
漫画のキャラクターになってみたい
超能力者になりたい
誰かの恋人になってみたい
家を建ててみたい
鏡の奥の世界を知りたい
猫を飼ってみたい
お化け屋敷を攻略したい
「ここまで全部ください」って言いたい
虫に名前をつけて飼い慣らしたい
崖から飛び込みしてみたい
ピンヒールを履きこなしたい
誰かと入れ替わってみたい
刀を振り回してみたい
拾った傘を持ち主に届けたい
奇跡の一枚を撮ってみたい
バイキングでスイーツだけ食べてみたい
ヴォイニッチ手稿を解読したい
幸せで泣いてみたい
100人を泣かせてみたい
100人を笑わせてみたい

そんなやりたいことを
いつまでも思いついていたい

やり切れなかったことは
救いだったのだろうか

君はもっと
カラフルな服が好きだったのにな

モノクロのスーツを見て思う

313:レミング◆yc:2021/10/31(日) 23:59

「trick or treat?」

可愛い君が囁いてねだる

相も変わらず
かび臭いマントで
私をすっぽり包んで
笑う

月の光に照らされる
君は特別美しい

でも残念
私はお菓子を持ってないんだ

冷たい冷たい君の手を取る
熱い熱い情を声に乗せて

ねえ可愛い君
私に“いたずら”してみてよ

背後から驚かせる?
冷たい水を浴びせてみる?
……違うでしょう?

ほら首元をくつろげた

見えるでしょう?
青く脈打つ私の命が

分かるでしょう?
それは君にとって
最高のデザート

釘付けになった君の瞳に
仄かに赤が灯りだす

笑みの深まりと共に
剥き出す牙が
銀色の月明かりを浴びる

あどけない表情
しかし想いは
ひどく熱っぽい

君、昔から何も変わらないなあ

……分からない?
でも良いんだ
それで良い

君にとっては
trickもtreatも同じだったね

好きにしなよ
今日は君が主役なんだ

314:レミング◆yc:2021/11/06(土) 06:04

切り裂く木枯らしに
目を瞑れば
美しく絶望を運ぶ
純白の雪にも気付けない

刹那主義でいこう
所詮は馬鹿のキリギリス
つまらない言葉に
耳を貸せば
泡沫の夢も見ずに死ぬ

人生は冬
死ぬまでに打ち立てた
虚像だけが
春を迎える種となりうる

何も無い
何も得られない冬に
騙し盗み奪ったものだけが
命の証となる

傷を負いつつ
醜美を焼き付けるか
身を惜しんで
半端な風に屈するか

何の為に生きる?
遺るものなど皆無と言うに
それでもと手を伸ばすもの

全ては雪のように
儚いと知って
それでもと希う望む

愚かであれどそれがひと
厳しい冬を超えられなければ
春はやっても来ないのだ

315:レミング◆yc:2021/11/15(月) 01:19

夜が晴れない

せめぎ合う感情が
クロゼットを浸してゆく

朝を纏えない

透き通るほどの感傷が
未だ舌に残っている

笑わないで
こっちを見ないで
僕が生きてるって教えないで

カメラほど精密じゃない
日記ほど正確じゃない

ただ仕舞われた
ただ遺された

316:レミング◆yc:2021/11/17(水) 17:54

冷たい秋風
紅葉狩り

虫食いのない葉を
ふたりで探して
集めて
視界が真っ赤に染まった

綺麗な綺麗な赤だった

「もったいないね」と笑う
君の鼻も頬も真っ赤で
それがとても可愛くて
何だか私も笑ってしまった

そんな記憶を
掘り起こしてしまうほど
赤い
君のくちびる

どうしたの
なんて聞かなきゃ良かった

知らない声
知らない名前
知らない顔
知らない君

綺麗だよって
ごめんね、嘘だ

透明な季節を過ぎて
大人の赤に色づく君は
この手も届かないほど
遠くなってしまっていた

317:レミング◆yc:2021/11/25(木) 01:19

舞い踊るか狂気

なんと美しい、と息を飲めば
次の瞬間首が落ちていた

刹那の夢幻
逃避行

眼と魂を焼く燦々たる光に
心臓に
鋲を打ち込んで

嗚呼暮れない
日の落ちたあとの感傷が
止まない

完全なる悪意をもってして
たった今罰が下った
後の祭りの延長戦
それを諌めるコールドゲーム

潮騒のような歓声
目も当てられぬ惨状
メサイアすらもかぶりを振った

それは愚痴かと問われれば
否と答える他無かろう

318:レミング◆yc:2021/11/27(土) 22:35

洗脳だと気付いている
気付いていることに
あなたは気付いていない

「愛してるよ」
今日も今日とて
投げかけられる言葉

その瞳は私を見つめていて
それでいて空虚

知っているの
擦り減るほど唱えた愛
私を縛るための嘘
気付いてる

ここに愛なんか無かった
あなたから私への愛なんて
最初から

だから返す
「私もよ」

あなたを信じているんじゃないの
あなたを傷付けたいの

これは愛?
わからない

わからないけど、わかってる
これはほんの執着のたまご

知っているけど
知らせない
気付いてることに
気付かせない

そして
いつか咲かせる逆転の華

それが私のあなたへの復讐

319:レミング◆yc:2021/12/05(日) 15:38

ざらつく舌をなぞった
その嫌悪すら決して
知らせないままに

濁った瞳
見ていないのね
狂った日常
気付いていないのね

対象になる気概も無いくせ
likeでは済ませないのね

俯くことすら許されない
首を捻ることも
応えないことも

君の息の根
止めてしまわぬ様

怨みごとを全部
吐き出してしまわぬ様

今日を明日にするため
今日を終わらせるため

深く深く息を吐いた

320:レミング◆yc:2021/12/09(木) 16:14

夢見たのは私のいない世界

私がいなければ
上手くいなかった
こともあるでしょう

私がいなければ
上手くいったはずの
こともあるでしょう

私がいなければ
この世界は
それはつまらないでしょう

私がいなければ
この世界は
それは平和になるでしょう

私がいなければ
君がここに来る
ことはなかったでしょう

私がいなければ
君はここを去る
ことができたでしょう

私がいなければ
君は
幸せになれたかもしれない

私だけがいなければ

不器用な愛を
どうか受け取らないで

この手を
どうか握らないで

君が君でいるために

いつかきっと
君のいるべき場所へ
帰ることができるように

いつかきっと
こんな私のことを
忘れることができるように

321:レミング◆yc:2021/12/19(日) 03:05

淡い蒼いろの街をあるく

日はおちて
月がのぼって
金星がひかっている

透けてしまいそうな指先を
ぎゅっと握り込む

私はどこにいるのだろう
君はどこにいるのだろう

私はなにになるのだろう
君はどこに行くのだろう

探してみたけど
見つからない

追いかけてみたけど
追いつけない

空虚な先をすすみながら
振り返ることもできない
君の姿を確めるのが
怖くて

後ろに伸びた影を
見ないふりして
くらくなるのを待つ

まちがいを
見なくてすむように
正さなくて良いように

322:レミング◆yc:2022/01/05(水) 20:34

さてその仮定
この惰性で続けた
こんにちまでの日

憧れ妬みに嫉みに恨み
それらも全ては
愛ゆえの狂気

その視線の先が
何処へ向かおうと
きっと迎えに行くからね

私はアナた
挿れるためじゃなく
落ちるための

さぁ堕ちて頂戴
目指すは将来

分かっているでしょう
逃げさせはしないの

この手をどうぞ
どうか取って!

323:レミング◆yc:2022/01/29(土) 04:40

恐れていた病魔が
たった今目を覚ました

重く首をもたげた
膿の詰まったつま先が弾けた

燻ったままだった
腐りかけの生まれかけの
心臓を穿った

目を焼く光に心ごと焦がれた
その妄念に手を伸ばしていた

触れたが最後
触れたが最初

堕とされていた
生きていた
自覚していた

笑っていた
狂っていた

救われていた

324:レミング◆yc:2022/02/11(金) 00:19

届かない手なら
いっそ折れてしまえと哭いた

ただ目指した

誰に褒められようが
謗られようが
関係なかった

ただ目指した

目も霞むような天の頂を

ただ
ただ
それだけを見据えていた

けれど
ほんのひと刹那

その光のかたちを
捉えてしまった

それは到底
皆を照らす光などではなく
昏きに誘う闇などでもなく

思考を奪い心を焦がし
ソラに昇らせまいとする
光を知り

脚を掬い心を惑わし
奈落の底に留めんとする
闇を知り

それでもなお
震える脚で立ち上がり
眩しいほどに輝く

それはまさに
“偶像”

ああ

それは
そんなものは

魂が凍りつくのがわかる

冷静になれば気付いてしまう
まともになれば分かってしまう

研いでいる刃は
内から腐っていると

生を受けた時点
発った場所が違うのだと

この生には限界があり
そして
終点に辿り着いたとて
その頂点に届きはしないと

ああ

それならばと
声が涸れるほど

ただ

手よりも先に
折れてしまった心臓を
未練がましく抱えていた

325:レミング◆yc:2022/02/19(土) 01:05

空を見上げていた

右には地獄が広がっており
左には虚無が広がっていた

後は誰かが隠してしまった
前には何も無いというのに

青は
思わず竦むような群青は
進むしかないのだと
叱咤した

橋が落ちていた
空き家が連なっていた
森が燃えていた
道が塞がれていた
死体が転がっていた
誰もいなくなった

それでも

時計の針が止まっても
時間は進むしかないのだと

頬を伝う
それが傷に沁みる

過ちを
違えてしまった真実を
憎みながら

ただ足だけは
止めてはならないと

青が
誰かが
僕が叫ぶのだ

326:レミング◆yc:2022/02/20(日) 01:50

それはまるで
在りもしない夢物語のような
美しい情景

寄り道にもならない
そんな刹那に
酷く心を惹かれてしまって

まばたきよりも早く
目の前を通り過ぎていった
極彩色を
追いかけたくなった

その夢の
続きを描くのはあまりに無粋で
ifを書くのはあまりに虚しい

それでも
惜しいと思ってしまった

鮮やかで
ふざけていて
無意味で
それでいて愛おしい

幼稚でも
確かに素晴らしき
ひとつの世界

そんな
不安定で曖昧なものに
枠線で形作られた自由に
望むべくもないはずの希望に
一瞬の永遠に

あなたに

恋をした

327:レミング◆yc:2022/02/22(火) 01:15

貴女は何になりたかったの?

答えて、メアリー・スー

貴女は彼に愛されたかった
貴女は彼を愛していた
貴女は彼に愛されない

復唱して、メアリー・スー

貴女は彼に愛されたかった
貴女は彼のために偽った
貴女はエゴのままに偽った

答えて、メアリー・スー

貴女は彼に愛されたかった
貴女は貴女のかたちを捨てた
貴女は貴女の名前を捨てた

復唱して、メアリー・スー

貴女は彼に愛されたかった
貴女は彼に愛された
貴女はもう、貴女でなかった

答えて、メアリー・スー

貴女はそれで良かったの?
貴女はそれを望んだの?
貴女の望みは叶えられたの?

貴女は彼を愛していた
心の底から愛していた

彼が愛したのは貴女なの?
彼に愛されたのは貴女なの?
彼を愛した貴女はどこへ?

答えて、メアリー・スー

何もかもを捨てたもの
何もかもを失くしたもの
何もかもを忘れたもの

何者でも無くなったもの
誰でもない私

ねえ、メアリー・スー

328:レミング◆yc:2022/02/26(土) 03:27

君の本命になりたいな
君の本命になりたい

君から香る
知らないシャンプー

スクロールしきれない
新着メッセージ

ポストからはみ出た
ラブレター

サイズの合わない
汚いTシャツ

君から溢れる
知らないだれかの

どろり

君の本命になりたいな

最近ほんとに思うんだ
君の本命になりたい

どうしても
君を嫌いになれない
君を殺せない

贅沢は言わないからさ
せめて

君がその厚化粧を
落とす日が来たら

君が君でいたく
なくなったら

そのときは

君を繋ぎ止める術なんて
知らないから

ずっと傍にいたい
なんて言わないからさ

せめて
死ぬ時くらいは一緒がいいな

329:レミング◆yc:2022/03/18(金) 04:55

私が満ち足りない世界

握りしめる燻んだ一色
見上げるだけの虹
両手に掬い上げる誰かが
憎くてしょうがないけど

汚い薔薇色の吐瀉物
搾り出して

握り直す古びた鉛筆
残されたただひとつの道
何も無くて成すことなんて
到底出来やしないけど

完成しない
ハッピーエンド妄想癖
現実を見ろと何度
バッドエンドを突きつけられた

何でもない
言葉なんていらない
変わり映えなんてしなくたって

日の目を見ない
浮かばれやしない
劣等感に押しつぶされたって

マイナスで終わらせたくはないんだろ
何だかんだ奇跡を期待したいんだろ

下劣最低見苦しくても
これこそが私の最高点だって

330:レミング◆yc:2022/03/29(火) 23:55

最近
空が青くないんだってね

ざまぁないって思ったよ
今更お前に
興味なんざ無いけどさ

どうだい?
承認欲求を塗りたくった
自我を見せびらかして
裏切られた感想でもひとつ

溝でも浚って探してみなよ
唾飛ばして語った理想とやらを

ああ良い夜だね!とびきり
このご時世じゃ珍しいくらい

救われたい自覚があるから
救われない覚悟しといてよ
救われない私を笑って
救った気になってた愚かなお前

331:レミング◆yc:2022/04/08(金) 20:38

随分と平凡に生きたものだ
なんて自分で思う

気怠い生ぬるさの中生きている
死ぬ気なんかひとつも無いまま

悔いのない生涯なんて不可能だ
だって時間が足りないのだから

何を成すにも
造るにも
終わらせるにも
人生はあまりに短いのだ

納得のいく幕切れは
どうやら期待できそうにない

しかし
それでも

限られた時の中で
満足なんて夢と知って

悔いのまま死ぬとしても
無駄に無力に生きるとしても

それでも足掻くのが
人間というものなんだろうか

それならば
なんて素敵なことだろう

332:レミング◆yc:2022/04/21(木) 03:47

形だけの心臓なんて
いらないわ

真っ赤に脈打つ中身なんて
とっくのとうに当の貴方に
盗られてしまっていたんだもの

雨風に晒される
冷え切った身体
きっときっと明日こそ
そんな期待を踏み潰されてきた

初めて触れた確かな温度
それがたとえ
幻であったとしても

ええ
好きなようにすると良いわ
心は此処に
貴方と共に


視界に広がる浮ついた目
後悔に怯え震える眼が
それでも良いと迫るのならば

心臓なんていらないの

333:レミング◆yc:2022/05/11(水) 04:37

ああ、きっと今
たった今失くしたの

傘を

肩にぶつかる水の弾丸
冷たくて
染み込んで
もう二度とは拭えない

救えない
ええ、分かっている

防げない
寒さも不快さも

笑えない
笑えないの
あなたがいなきゃ

私病んでしまうわ
雨に打たれて生娘のように
咳をしては愛を吐いて
嚔をしては哀と泣いて

それでも駄目なの
あなたはもう
傘をさしてはくれないの

334:レミング◆yc:2022/05/20(金) 07:30

もう、何度目かの恋をした

彼には大切な人がいる
私よりも
誰よりも
自分でさえも二の次なほど
とってもとっても大切な人が

私はどうしたって一番になれない

いつもそうだ
ずっとそうだ

今までの全ての恋は、
恋以外のなにかに破られて
私はいつだって
蚊帳の外で

視界にすら入れない
思考にすら入れない
私の存在は埃の一粒に等しい

見た目を磨こうと
内面を磨こうと

何もかも、
意味はないと知っている

知っているのに

また、恋をした

335:レミング◆yc:2022/06/07(火) 21:04

それはまるで、
寄生虫のような

蠢く恋

意志など端から無かったように
あなたのために生きている

わたしの中で
あなたが生きている

脈動している

支配される身体
侵されていく
すべて

あなたを離さない
寄生する恋
心臓に絡みつく脈動

あなたの
細胞のひとつまで

336:レミング◆yc:2022/08/18(木) 06:36

足元をすくわれたように
一転する視界

ぐらりと揺らいだその先に
眩しく煌めく光のかたまり

それが何だか
ものすごく美しく見えて
ものすごく哀しく思えて
ものすごく欲しくなった

追憶するは在りし日の夢ごと

あの頃はただ虚しくて
纏わり付く光の粒が妬ましくて
瞬きさえも鬱陶しくて

涙も枯れるほど
恋焦がれていた

人生の根本から
すくわれてしまったように

あなたに出会って
変わり果てた人生

それは存外、悪くない

337:レミング◆yc:2022/12/06(火) 18:43

ヒーローになんてならないで
偶像になんてならないで

誰かの理想が貴方を汚す
誰かの想いが貴方を縛る
誰かの祈りが貴方を×す

ヒーローになんてならないで
誰かを救おうとなんかしないで

御伽に騙られた貴方は まるで傀儡
あんなに輝いた過去は
今や曇り硝子の向こう側

差し伸べた手は千切れてしまった
掬い上げた腕は捥がれてしまった
守ろうとしたものは

何処

ヒーローになんてならないで
笑いながら泣かないで

きっと貴方も救われたかった

338:レミング◆yc:2022/12/14(水) 02:36

ねえねえねえ
あなたにわたしは救えるの?
ねえ
あなた わたしを救ったつもり?

ママはわたしに優しいの
嫌なことなんにもしないのよ
良いこともしてはくれないけれど
それでもわたしはしあわせよ

パパもわたしに優しいの
上手くできたら褒めてくれるわ
失敗したらきつく叱られるけど
それでもわたしはしあわせなのよ

ねえ

しあわせなのよわたし
しあわせだったの
知らなければ
知らなければしあわせだったの
ねえ

ここに愛が無いだなんて
どうしてそんなこと言うの
どうしてそんなこと
どうしてそんな ひどいこと

幸せな夢から引きずり出して
汚い現実に顔を漬けさして
『お前のいた場所はこんなにも』なんて
ねえ
ねえねえ

愛してくれるわけでもないくせに
救ってくれもしないくせに

どうしてくれるの

ねえ

339:レミング◆yc:2022/12/14(水) 02:39

後悔しています。

340:レミング◆yc:2023/01/17(火) 22:55

月が綺麗だね
今日はどこまで行こうか
昨日より遠くへ行こうよ
空気がつめたくて気持ち良いね
鳥がとまってるよ

水辺がキラキラしてる
風が吹いているね
雨の匂いは久しぶりだ
花が咲き始めたみたい
街灯が無くてもよく見えるよ

いつからだろうね
星が瞬いているよ
いつからだろう
月が欠けないね
いつから?
君はどこにいるの

太陽が昇らなくなったね
人の声が聞こえなくなったね
毛布がないと寒いね
光が眩しいね

君はいつから喋らなくなったの
君はいつからここにいたの

昨日はないよ
明日もないよ
君とずっと今日のまま
ずっと消えない夜のまま

変わらない景色に歌でも唄おう
君が寂しくないように
僕が消えてしまわぬように

またいつか
君と笑って出会えるように

341:レミング◆yc:2023/01/25(水) 05:40

ああ!
全くもって許し難いねその愚行
反撃も意図してない?
それこそ愚の骨頂!

売られた喧嘩は高く買おう!
さぁルーラー、
すぐさまレートを上げてくれ!
是非最高値で買ってやるから

言い訳は無用?
正当防衛まで割愛かい
ああまるでやってらんない
幸先はお前の屍のその向こう!

突然の暗転

お涙のヒステリー
ほら次第にメランコリー

聞くも語るも失笑まじり
散々な人生なんです
デバフなんかも盛っちゃって!
平均以下を誇っちゃって!

さてそろそろ競りは終わった?
感性マグロちゃん!

342:レミング◆yc:2023/04/20(木) 02:45

あんたのいない寝覚めが嫌いだ

呟けば
一秒待って へらりと笑う
気に食わない

緞帳は降りている
最初から
ここはぼくらの独壇場

誰にも邪魔されない
誰にも見つからない

星が舞う
雨がふる
それを見ている

たにんごと

あんたの隣でしか
息が吸えない

カーテンが揺らめく
真空
ブルーサイダーの夜

343:レミング◆yc:2023/05/25(木) 04:56

闇夜を照らす
あなたの微笑み

その輝きを閉じ込めた幾億の宙が
今夜もあなたのためだけに歌う

星々の瞬き 交響曲
それらを指揮するのは私
あなたという光に導かれて

無粋に彷徨う陽光は
やがて喪われるのでしょう

白夜の微睡み
永遠の彼方
繰り返す音色に身を委ねて

朝の来ない儘
夜に囚われた惑星で
いつまでも
あなたを歌っていられたなら

狂える綺羅星の煌めきに
網膜を焼かれた者同士ならば

あなたの創る私の旋律が
この宇宙の全てを彩る

344:レミング◆yc:2023/06/29(木) 02:14

美しい夜に祝杯を
明けないように鍵をかけて
永遠の真似事をしよう

金星を醒ます歌声を
君だけに聴かせてあげる

緞帳を降ろして
カーテンを閉めて
この舞台は僕らだけのもの

拙い演技などやめてしまって
僕は君の小夜曲になりたい

迷える仔羊に暖かな光を
眠れぬ君に甘ったるい闇を

穴兎の白昼夢
恍惚と憂鬱
紛い物の救いをもう一度

星座のパレードを眺めながら
片手間の愛でも語り合おう
どうせこの世界は終わるのだし

神様ぶった僕の仮面を
どうか君だけが撃ち抜いてしまって

345:レミング◆yc:2023/08/05(土) 08:08

あなたがあなたという光であり続ける限り
私の世界はずっと美しいままだ

346:さき:2023/08/24(木) 11:30

『アッブルパイの唄』
 ・おいしいよな
アッブルパイ
大好きなんだよ
美味しいのに
理由なんかないさ
単純に好きなんだよ
大好物さ
甘ずっぱい
カリッコリッの
毎日たべても
あきない
アッブルパイ

347:さき:2023/08/24(木) 11:30

『三つ葉の付箋』
 ・ボクの三つ葉の付箋
 三つ葉の付箋
 ボクのだよ
 すごく大切にしてるんだ
 あの机の上の本に
 挟んでいる
 付箋だよ
 ボクの付箋

348:レミング◆yc:2023/09/14(木) 16:46

>>346 >>347
無邪気な子供のような、可愛らしい詩ですね。
真っ新であどけないようでいてどこかノスタルジーを感じ、ふと子供の頃を懐古してしまいます。

349:レミング◆yc:2023/09/20(水) 01:24

空中ブランコで宙を蹴った

土星が泣いている
君が玩具を取り上げたから

沸き立つ雲は
燃える快晴は
みんな君を責め立てていた

被害者だった
そんなような気がしていた

帰り道には飴を買って
水銀製の蛇口で手を洗おう
ひとり多い遊戯場から目を逸らして

ちゅうぶらりん
インスタントカメラには映せない
焦燥 懐古 狂悦

二度と帰ってこないでね

虹が滲んだ雨上がりは
もう全く煙ってしまっていて
君の顔はわからなかった

青と藍の境目を探そうか
斑模様にピントが合わないうちに

夏と冬の境目を探そうか
飽きが来ないうちに

浮かばれない声が
聞き取れないうちに

350:レミング◆yc:2024/02/20(火) 14:17

貴方だけを見ていてあげる
鍵穴の外側から

孤独な貴方を
惨めな貴方を
大好きな貴方を
亡霊なんかに盗られた貴方を

怨嗟と呪詛が聞こえてくる
鍵穴の向こうから
私はそれを子守唄に
今日も眠りにつこうと思う

貴方は夜な夜な吐き出している
切らなくても擦らなくても
吐き出されるそれは
紛うことなき血の想いだ

飲んであげる
苦くて酸っぱくて
嫌な匂いのするそれを
全部残らず飲みほして
私の喉を焼いてあげる


貴方 私を好きだと言ったのにね
月明かりに夢見てしまったのね
可哀想な人

ねえ
まだ許してあげるから
少しだけ私を見てちょうだいよ
まだそこに戻ってあげるから
みんなみんな忘れてあげるから

ねえ
ねえ……

貴方が死んだら
そうしたらきっと私
貴方のお家に行って
貴方の嫌いな人を
みんな残らず殺してあげる

棺桶に眠る貴方を見て
鼻で笑って
攫ってあげる

空っぽの底に
菊の造花を一輪残して

だからね 今日も見守ってあげる
鍵穴を覗いて
饐えた匂いの箱庭に
たったひとり閉じ込められた貴方を
ずっとずぅっと見ていてあげる

351:レミング◆yc:2024/03/25(月) 06:33

桜の樹の下には

今日に至るまで
何度繰り返された詩だろう

桜の樹の下には死体が埋まっている

憂鬱の彼は考えたのだ
満開の桜があまりに美しいから
それには対価があるに違いないと

桜の樹の下には死体が埋まっている

では、
桜を前にしてなお輝くばかりに美しい
あなたの足元にも
死体が埋まっているのだろうか

桜の樹の下には

あなたが踊るように歩む
全ての道の先にも後にも

死体が埋まっている

それを足蹴にしておきながら
養分を吸いさえしない
あなたの完璧な美しさは
あなたのみで完結する

あなたの下には

淡い花曇りの空の下
咲き誇る幾万の花の下

死体が

色素の薄い虹彩が
全ての輪郭を溶かす

埋まっている

桜の樹の下
その上に立つあなたの足元には

死体が埋まっている

風に乗って運ばれる微かな香りに
満開の桜さえも霞むようなほほえみに

あなたの足元になら
埋まってやってもいいとすら思った

あなたの下に

あなたの

花弁を踏みつける足取りの
なんと軽いことか


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