春恋

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1:るみ:2015/06/11(木) 21:59

「ごめん、春恋。別れてほしい」
突然言われた言葉に私は戸惑った。
「え?何で……」
「あ、もちろん、春恋の事は好きだよ。でも、新しく好きな子ができたんだ」
突然そんなことを言われても無言になってしまう。
それでも、私は割り切った。
「分かった。じゃあね」
「ありがとう」
そう言うと、翔太は向こうへ去ってしまった。
―ありがとう……ありがとう……。
翔太に言われた一言が心に響いている。
それに……。
「振られちゃったんだな、私……」
その実感がまだ全然なくて、隣に翔太がいるんじゃないかと思ってしまう。
くるりと振り返って見るけれど、当然そこには誰も居なくて。
私は重いため息をついた。
私の名前は井上春恋。
春恋と書いて「さくら」と読むんだ。
お母さんが好きな春と、お父さんが温かい恋愛をしてほしいと願ってつけてくれたらしい。
だけど、私は温かい恋なんてしたことがない。
告られたことは何度かあるけれど、恋はしたことがないの。
そんな愛のない恋愛を繰り返してきた。
おかげで周りからは、男好きとか、ビッチだとか言われているみたいで、何となく傷つく。
でも、それももう慣れた。
重々しい気持ちのまま家に帰り、部屋に引きこもる。
「また……悪口言われるんだろうな……」
それが分かっているから、私は学校に行きたくない。
もちろん悪口だけで行きたくないと思っているわけじゃないけれど。
そんなことを考えながら、私は眠りに落ちて行った。


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