登場人物
そんなものはない
私の名前はア・パー壁。築12年のアパートの壁だ。
そんな私が見ているのはデンデデ・電柱。いつの間にか建ってた新参者だ。
そんなデンデデが見ているこの一匹の虫。こいつがこの話の主人公だ。
私とデの出番はもうない。じゃあな
月の光がある金属を照らした。
ある金属とは?それは街角にただ立っている自販機だ。
今日この自販機は近所の工事現場のドカタもとい働くおっさんを相手に缶コーヒーを6本売り上げた。
そんな自販機も夜になり全く仕事が無い。一日に720円しか世の中を動かしていない―電気代含まず―この自販機は生きる意味があるのか。
実は仕事がある。夜になれば仕事ができた。
生きる意味が無くても、他者を生かしているという事実があった。
自販機の出す光、それが紡いだのは愛の物語…
そう、これは――
羽虫たちの愛の物語。
はじまるハムよwwwwwwwwwwwww
―きっかけは?
えぇと、初めて出会ったのは薄汚い川の近くです。
生まれた時からいっしょだったんでしょう。二匹が結ばれることはこの世が出来たその瞬間から決まっていたんだと思います。
羽虫は成虫すると餌を得る器官、つまり口が消滅する。
残されたエネルギーで交尾をして死ぬだけの存在なのだ。もっとも食べられる者もあるが。
ちなみに熱量にして2kcalのエネルギーを持ち、一日から一日半でその生涯を終える。
薄汚い川の近く、空を埋め尽くさんばかりの生まれたての羽虫が飛び交う中で、僕は君を見つけた。
いや、川を出た瞬間から、僕の目には君しか映っていなかった。おかげで何度か他の羽虫と衝突し半ば墜落しかけた。
フラフラになりながらも迷わず近づく僕に、君が気付いた。
一日と少しの時間を有しながら早くも交尾を行うつもりと勘違いされたかもしれないが、それは構わない。
誤解はあとでいくらでも解けるから、まずは他の羽虫に君を取られないよう、突進するしかなかったのだ。
面白かった
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