変わった人たちの話を色々詰め込んだ短編集です
残酷描写が少しばかりあります
劣等感
3:リョナ期待BBA:2016/01/19(火) 18:01 幼いときから彼とは行動を共にしていたが、
僕が彼に劣等感を抱かなかった日はほぼない。
彼は勉強はてんで駄目であったものの芸術の才能は並大抵のそれとは違う。
そしてそれは並大抵の人が超えれるような物でもない。
このことも劣等感を抱かさせる要因の一つではあるが
他にもある。数えればキリがない。
彼の名前は確か洋司であった。
彼はいわゆる美少年だったが周りとずれた思考や言動をするせいか異性からの人気などこれ程もなく、
むしろ嫌われていた。
僕自身も彼があまり好きではなかった。
あれは小学校六年生の頃だったか、久しぶりに彼と同じクラスになり、また偶然にも
隣の席同士になった。
勉強など微塵もできない彼が珍しく小難しそうな文学を読んでいたものだから
その本はどこが面白いのかについて聞いたが
文章の内容なんてなんも読んでいない、句読点の数を数えている。
なんて妙な事を抜かす。
ここでもやはり彼がいかに変わった人間かを思い知らされている気がして、
心がキュッと絞まるような苦しさを感じた。
その苦しさを感じたのはその日の前の日に親が言っていた
天才には変人が多い
という説を思い出して彼の言動が彼が天才であることを証明しているように感じ、劣等感を抱かざるを得なかったからである。