長いのを一本だと飽きてしまうので短いのを!
自分で書いてたまったらあげていきたいと思います。
気軽にコメントとかくれるとテンション上がります!
きらきらと輝くオレンジに恋をした。
【確かに、それは。】
きらきらと輝くオレンジに恋をした。
風になびくその透けた橙色の髪も、閉じた瞼に落ちる長い睫毛も、ほの淡く染まった頬も、小さな唇も、そこから紡がれる言葉も、声も。
何もかも、全てが愛しかった。
「ー好きだよ」
大きな瞳をこぼれ落ちそうなくらいに見開いて驚く。
日誌を書くために持っていたシャープペンシルは、君の掌からするりと滑り落ちて、ことん、と音を立てて机の上に転がった。
少し震えたその手が、内面の戸惑いを顕著に表している。
「嘘だよ、調子に乗んな」
そう言って、片手を頭の上に振り下ろせば、君は小さく息を吐いた。痛い。そう言いながら、開いたままだった唇は再びほのかに弧を描き、瞳からは戸惑いの色が消え、震えた手は転がったシャープペンシルを拾いあげてまた紙の上に文字を紡ぎ始めた。
へんなこと、言わないで。心外だな、ちょっとからかっただけだろう。それがへんなことっていうの。
傾いた夕日に照らされて、君の髪がきらきらと光る。
長い睫毛が、頬に橙色の影を落とした。
グラウンドから、運動部の掛け声と笛の音が聞こえる。校舎からは、楽器の音色が響いた。
時計の針は、もうすぐ最終下校時刻を指す。
書き綴った日誌も、ちょうど書き終わったようだ。
「帰ろうか」
頷いて鞄を持ち上げる。開いていた窓を閉めようと側に寄ると、ふわりと風が吹いて君の髪をなびかせた。
窓の鍵に手をかけながら、君が振り返る。
「私も好きよ」
ああ、これが、嘘でなかったなら。
相変わらず、笑い方が下手なんだ。
優しい嘘は、時にひどく残酷だ。
二人で帰れるこの時間は、一体あとどれくらい続くだろうか。このきらきらと光る橙色の隣に居られることは、あとどれくらい叶うだろうか。
今この時だけは、この優しい嘘に溺れさせて。
確かに、それは、恋だった。
叶わないとわかっていても、少しでいいから溺れていたかったんだ。
ゆらゆらと揺蕩う水の中で優雅に泳ぐ金魚を見つめる君が、どうしようもなく愛しくて、そっと引き寄せて抱きしめた。
【いつかの、夏の話】
夏祭りに行こうと言ったのは、どちらが先だったか。
毎年行われる地元の祭りで、屋台はもちろん、終焉には花火も上がる、割と大規模な祭り。小さな頃は両親や友人と何度か足を運んだが、年齢が上がるにつれ足は遠のいた。
ああたしか、君の方が先だったね。
それに俺が、行こうか、と返事をしたんだったね。
無邪気にはしゃぐ君の笑顔はとても好きだ。
細められる目も、赤みが差す頬も、口角の上がる唇も、口元に手をやる仕草も、全てが愛おしい。
祭囃子の音が聞こえて、どちらからでもなく手を重ねて、たくさん寄り道をしながら歩く。白地に淡い色の朝顔が散りばめられた浴衣を着た君は、いつもより綺麗に見える。結われた髪と浴衣の間から覗くうなじがひどく妖艶に見えた。
綿菓子に、りんご飴、たこ焼き、焼きそば、色んな所を散々回って、途中で見つけた金魚すくいの店。珍しく足を止めて、挑戦したね。普段、興味なんてないくせに。
浴衣の袖が、水に入りそう。
結局、すくえるはずもなくて、俺がすくったんだよね。ひらひらと揺れる赤いヒレを持った、小さな金魚。
にこにことご機嫌に笑う君に、大事にしてねと声をかけた。
金魚の袋を持って、花火がよく見える場所へ向かう。だんだんと人影も多くなってきて、坂を登った頂上はすでにたくさんの人がいた。そこから裏道に少し入っていくと、穴場の場所につく。人影はまばらで、ぽつりぽつりといるだけ。人気がない割に、見える花火は先ほどの場所とさして変わらない。
シートをしいて座って、花火が上がるまで少し休憩。あと15分、10分、5分と数えている間に、最初の花火は何色かな、なんて話をする。君は赤で、俺は青って言ったんだ。
程なくして上がった花火の色は、緑だった。
どっちもハズレだったねって笑う君に、緑だから、君の勝ちでいいよって笑い返すとまた顔を綻ばせて君は笑った。
帰るのが名残惜しくて、夏の終わりが切なくて。
懇願するように君の手を取って口付けた。