ぼちぼちと鬱っぽかったり暗かったりするのを、ね。
___ねぇ鴉、私はさ、生きてるのかな
埃を被った仄暗い廊下に座り込み割れたガラスの向こうの鴉に問いかける。
死んでいるのか、死んでいないのか、分からない私。
きっと居たであろう友達の顔も、きっと笑ったであろう思い出も、まるで擦り硝子のように、曇り、ぼやける。
毎日私の記憶は削げ落ちる、まるで暑く塗ったペンキに罅が入るように。
今日忘れたのはきっと名前、昨日忘れたのはきっと年齢、明日はなにを忘れるんだろう。
日がだいぶ落ちた頃、懐中電灯の光が差し込み、人が入り込んできた。
唖々、貴方も私が見えないのね。と呟き膝を抱え、目を瞑る。
そして誰もいなくなった頃、私は眠りに落ちる、それが眠りなのか、死なのか分からない程、深く。
とっくに居なくなった鴉に私は心の中で又問いかける。
___ねぇ鴉、私は明日生きた事も死んだ事も忘れてしまうのかな
八月の風が、少しだけ冷たさを帯びていた。
自分というものが欲しいなぁ。
ビルの屋上で、一人、ボソリと呟いた。
特徴も、個性も、誇れるような事も、何にもないボクは、どうしたらいいんだろう。
最初っから僕は色なんて貰えないし、それに十人十色だって、全部混ざれば黒になる。最期は皆、同じだから。
吐きそうになるぐらいエゴが溢れるこの社会という綱を、命綱なしで渡る事なんて、ボクには、出来ない。
ボクは、何にもできない。
飛び降りたら、ボクに色がつくかなぁ。
頬に風を感じながらも目を閉じた。
一瞬、廃棄ガスの匂いが、鼻を掠めた。
僕の色は赤色だ。
題名 「 私は お母さんが 嫌いです 」
私はお母さんが嫌いです。
だっていつも話を聞いてくれないから。
だっていつも私を認めてくれないから。
だっていつも私を褒めてくれないから。
だっていつも私を愛してくれないから。
だっていつも私を殺そうとするから。
だから私は今日仕返しをする事にしました。
台所のお母さんは真っ赤に熟れたトマトを持っていました。
私はお母さんのお腹に包丁を刺しました、硬かったです。
お母さんの手からはトマトが落ちました、その瞬間もう一度私は刺しました。
ぐちゃり。真っ赤でした。