彼岸花

短編集

1 あいことば

私と彼の間には、一つの合言葉がある。彼はとってもかっこいいから周りからももてて…手紙や電話の時には、その合言葉を言い合うようにしている。
手紙の時は、名前の横に。電話の時には、もしもしの代わりに。そうすることで私になりすますことや、大人になった時のオレオレ詐欺の対策にもなっている。
いちいち面倒くさいと周りの人はいうけど、私と彼がそれでいいと言っているんだから仕方が無い。いちいち口出しをしないで欲しいとも思う。
私を妬む人も多いから、そう言ってるのかもしれないけど、友達はそんな事言わないから気にしない。友達はそのことを素敵だと言ってくれるから、嫉妬をしているやつのことなんて気にするものか。
私は友達にも合言葉を教えないけど、友達はそれでいいと言ってくれるから。

2.めだまさま


私の住む村には、古くからの言い伝えがある。それは、11月11日の11時11分、森からめだまさまが降りてくるという言い伝えだ。めだまさまは恐ろしい姿をしていて、自分の姿を見たものの目を失明させるという。
めだまさまは11月14日に帰るらしく、それまで外には出られない。外に行かなくてもいいように、食べ物などを貯めておくのだ。
今日がその11月11日11時11分。あなた、外でこれを読んでない？外では決して読まないで。ほら、貴方の後ろに…