『はいはい黙れ、うるさい。』
『うるさくないじゃんっ!?りぃちゃんの方がうるさいじゃんっ!?』
毎日毎日、飽きもせずに過ぎていくのに、どうしてこんなに
シアワセ、なんだろう。
『女子力…ッ?うるせぇ、黙れ、俺は俺だ。』
『あもーさん、うざい。』
8割言い合って、嫌いだと言い張るのに。
それでも大好きなのは、何でだろう。
「くるみーん、また1位ー?」
「当たり前じゃんっ!私が取らないで誰が取んのさーっ」
期末テストの結果が発表された教室で、りぃちゃんから怠そうに聞かれ、答たのは私、仁科 来未(にしな くるみ)。
未来が反対になってる名前ってよく言われるけど、この名前はフツーに好きなんだよね!
そしてそして、りぃちゃんこと笹原 梨都(ささはら りと)は、私の親友。
周りから優等生と言われる私とは対照に、右目が少し隠れる斜めの前髪に、気崩した制服。
正真正銘の不良少女なりぃちゃんと、真面目と言われているらしい私が親友なんて関係だから、皆驚いているらしいんだけど。
「うわー、まじか。何でだろうね?こんな天然ボケナスビくるみんが1位とか。」
「えっ!そこまでいうっ!?まぁ、私もさ、何で優等生って言われるか分かんないんだけど!」
ぶはっ、と豪快笑ったりぃちゃんに言われた私は、少し恥ずかしい。
天然ボケナスビなんて…、大きい声で言わないでよ、もう!
私の前の佐藤くんだか、山田くんだか、よく分からない男子の席を陣取っていたりぃちゃんが唐突にガタッと立った。
「おい、くるみん、急いであもーさんと波にも言わないと!」
「おっ、そうだった!よし、いくぞぉーっ!」
6時間目の授業がもうそろそろ始まるというのに2-3の教室から駆け出して1組へと行く私達は馬鹿なのかもしれない。いや、私自体は賢いけど。いや、馬鹿とも言われるか…。
1組の教室のドアをガラッと開けて、スタイルの良い美形のあもちゃんを探す。
うん。まぁ、オーラで分かるけど。
こっちこっちと、手招きで彼女を誘ってこちらへ呼んだ。
歩いてくるのですら、ランウェイみたいなんだけど。
「あもー!あもーさん、くるみん1位取ったぞ!」
「取ったよ、私凄いでしょーっ」
彼女は私達が煩いとでも言うように嫌そうな顔をしてから、言った。
「はい、おめでと。くるみんが1位とか分かってたし。私は2位でした。」
何事においてもめんどいと言うように生きるあもーさんこと、天羽 葉月(あもう はづき)は、勿論親友。
あもちゃんはルックスで男子からモテまくり。女子からの嫉妬で嫌われている…らしい。
でも、正直そんなことはどうだっていい。あもちゃんは優しくて、そして私達は大好きだから。
「あもちゃん、あもちゃん、今から波ちゃんのところ行くんだけど、一緒来る?」
私が長身のあもちゃんを見上げながら言うと、彼女はふわっと笑い、私の頭をぽんぽん、として
「私はいいよ、波のクラスにも私嫌いな人いるから。いってきな。」
どうして、あもちゃんを嫌う人がいるんだろう。こんなにあもちゃんが綺麗だと、眩しくてお話出来ないのかな。
「ん、分かった。じゃあ、私とくるみんで行くか。帰り、迎えにくるから!」
「りぃ、ありがと。」
あもちゃんに手を降って、ダダーッと2組へ駆けていく私とりぃちゃん。
「おい、波ー、波ぃ?」
りぃちゃんが声をかけても、どこにも見当たらない。
あれ、波ちゃんどこ行ったんだろ…?
キョロキョロと波ちゃんを探していると、誰かにドンッとぶつかってしまった。
そこに甘めの香水がふわっと香った途端、りぃちゃんの目付きが変わった。
「テメ、夏、お前まだその香水使ってんの?」
長身のイケメン、サラサラな茶色っぽい髪。どう考えてもカッコいいのに、実は…女子力いっぱいの、間宮 夏樹(まみや なつき)。
「くるみ、やっほ。」
「あ、うん!夏くん、相変わらず女子力高い…ね!」
というのも、彼の手に握られたスマホに、可愛い某ディズニーキャラのイヤホンジャックがささっているのを視界に入れてしまったから。
「…えっ、あ、…あー。これ、お気に入り…。」
「それダサい!付けるのやめろよ!」
私の言葉に、夏くんは耳まで真っ赤になってうつ向くし、りぃちゃんは何故か文句を言うし…、どうして良いのかさっぱり分かんない状況になっちゃった…。
んー、この2人は幼馴染みらしいけどいまいち関係性が掴めないんだよなー、あ、もしかして私、今邪魔かな?
「だって…、梨都が、くれたじゃん。俺にさ、選んでくれたんでしょ?」
「…、別に、違うし!…私のせいで、夏が女みたいってからかわれんの嫌…
だからさ。」
うん、確実に私は邪魔だな。
2組の教室の前で、煩い喧嘩を始めるかと思いきや、しんみりした話し合いになってきてるような…?