○感想とコメントOK
△中傷はやめてね
×荒らしとなりすまし
※百合風味です
「奈ぁ津ぅ」
先輩の声。
私は呼ばれた訳でもなく振り返る。
いつもの通り先輩が、奈津先輩に話しかけているだけで。
奈津先輩がそんな嬉しそうな顔をしてしまって。
私はなぜかモヤモヤとした感情を抱えていて。
「今日もお家デートだね」
奈津先輩がからかうように告げた。
どうしようもなく私はその光景から目を背ける。
「 奈津先輩が好きなのに 」
その言葉は、部室の窓から外へと吹き抜けていった。
「君が好きでしたよ、私は」
静かな図書室で、彼女は。
肩までかかる髪を揺らし、眼鏡の縁を触りながらそう言った。
『彼』にその言葉が届くことは未来永劫ない。
「…最後までお人好しなんだから…人を庇って逝くなら先に言ってよ…」
零れる涙と感情を取り繕おうと、彼女は必死に目元を拭う。
『彼』の体温に触れられないのだ、もう二度と。
「君の大好きだった本、読んでみますね」
本棚から一冊本を取り出し、彼女はその本を胸に抱いた。
ゆっくりと図書室のドアを開け、最後に振り向く。
『彼』がいない図書室はひどく寂しげに見えた。
彼女はフッと息を吐き、ドアを閉める。
彼女がいなくなった図書室の小さく開いていた窓から、一枚の花びらがはらりと床に舞い降りた。
それはまるで…彼女の恋が終わったことを知らせているようだった。
「先輩の事が、好きです」
校舎裏。
静けさがあたりを重く支配している。
雨が振り出しそうな雲が夏空を包んでいる。
告白した相手は頬を赤く染め、結い上げたポニーテールを少しだけ揺らす。
スカートの丈は、きっちり膝下。
ピンクのフレームの眼鏡をかけた大きな瞳は、今にも泣き出しそうだった。
告白された相手は、自分の色素の薄い茶髪を少しだけ触る。
ショートカットの髪に、切れ長の瞳。
何人もがその出で立ちに魅了されただろうか。
やがて、告白された相手は、
「ありがとね。でも、あたしはあの子と付き合ってるから」
ごめんね、と告白された相手は、軽く頭を下げて踵を返す。
その向こうには、肩で切りそろえた黒髪をいじる少女の姿があった。
一陣の風が吹いた。
告白された相手の、スカートを軽く乱して。
告白した少女は、流れ落ちる涙を静かに風に曝した。
きっとまた、彼女を好きになる。
そんな予感を抱きながら、少女も歩き出した。
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