小説が書きたかっただけ
2:綴り手:2018/11/28(水) 19:48 生気のない食卓。
無造作に放置されたカップの山。
衣類の散乱した部屋。
機械的に日々を過ごす私。
カバンを目のつきやすい場所に転がして、ベッドに身を投げる。布団も汗が染み付いてベタベタしている。これでは心の安泰もあったものではない。
そう遠くない昔はこうでもなかった気がするのに__いつのまにこうなってしまったのだろうか。
瞼を閉じる。
明日にはこの部屋にも朝日がさすだろうか。
真白に染まった目の裏が何でか酷く気味悪く感じて、思わず目を開けるが、部屋を照らす眩い光に耐えきれずに目を細めた。変化に気がついたのはその景色に目が慣れてからだった。
適度に片付けられた部屋。深く閉めていた窓は開けられており、爽やかな風と柔らかみを帯びた光が部屋を漂っている。
とてもゴミの溜まり場だったとは思えない流し台。
食卓には__何処から出てきたのだろう__白い花瓶と目玉焼きの乗ったトーストとコーヒーが用意されている。コーヒーからは絶えず湯気が出続けている。
トーストをひと齧りすると途端に懐かしさがこみ上げてきた。
そうだ。この部屋は一人で住むには広すぎる。
それからだ。此処に見えない同居人が住み着いたのは
5:綴り手:2018/11/28(水) 20:23不思議と恐怖はなかった。
6:綴り手:2018/11/28(水) 20:59 何もかも関係なかった。
「ねぇ、そこにいるの」
部屋に私の声が響く。いくら待とうが時を刻む秒針の音が消えることはない。
あてもなく指を彷徨わせる。私は虚空を掴んでは離す。
ズレがある。大きなズレが、世界に。だからきっと触れることは許されないのだ。
ああ、__だけど______私はそれが存在している確かな証拠が欲しい。
私は、ただただそれが愛おしいだけだ。
人でないものを愛することの何が罪になるというのだろう。
どうしようもなくそれが欲しい。
そのためなら地獄に堕ちたっていい。
それに___触れられないこの世こそ私にとって真の地獄だろう。
何故、私はこの世に独り、落とされたのだろう。
「貴方に触れたいの」
声が震える。
差し出した右手はからのままだった。