アイドルマスターシンデレラガールズの二次創作をたまに書く

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9:Rika◆ok アニバ志希に向けてガシャ禁:2018/07/04(水) 21:48 ID:bSk

 トゥルルル、トゥルルル、と鳴る電話の音で、私は目を覚ました。
今は真夜中2時。普通、こんな時間に電話なんて書けないと思うけど……
 そう思いつつ、私は隣で眠る志希ちゃんを起こさないようにして、ベッドから身体を起こそうとした。

「んー……なにー?」

 すると、志希ちゃんが目を覚まして、自分の服のポケットから携帯を取り出し、布団から出ようとする。
 てっきり私の携帯から電話が鳴ったのかと思っていたけど、志希ちゃんの携帯から鳴っていた。
 私は安心して、布団に深く潜る。

「I don't want to do that anymore! Insistent!」

 もう一度寝ようと目を閉じた時、隣からそんな声が聞こえてきた。
英語ってことは、日本に戻る前の知り合いなのかな。
 普段は耳慣れない英語……それも、かなり発音の良いものだったからかよく分からなかったけど、声の調子から喧嘩をしているような様子が読み取れる。
 私は少し心配になって、眠ろうとしても眠れなかった。

「―――――I hate you」

 暫く言い合いが続いて、志希ちゃんのそんな言葉で会話が終わった。
そう言えば、志希ちゃんが最後に言ったこの言葉、聞いたことあるような……
 ……あ、分かった。確か「私はあなたが大嫌い」だったはず。
 志希ちゃんがそこまで言うって、電話の相手はどんな人なんだろう。

「……みんな消えちゃえばいいのに」

 シーンとした部屋の中、志希ちゃんはそう呟いた。
 その言葉に色々な意味で耐えられなくなって、私は目を開く。
目の前に見えた志希ちゃんの横顔は、少し……いや、とても寂しそうに見えた。

 そんな志希ちゃんの表情を見ていると、志希ちゃんがちらりとこちらを見て、目が合ってしまった。

「……美波ちゃん、起きてたの?」

 焦っていると、冷たい声でそう言われて、私はドキリとした。

「う、うん……ごめんね、何か盗み聞きしたみたいで」

「……べっつにー」

 慌てて謝罪すると、志希ちゃんはそう言って目をそらすだけ。
怒っているみたいではなかったから、安心した。



「……電話の内容ね、教授からだった」

 さっきのことで少し気まずくなって黙っていると、志希ちゃんの方から話し出した。
 教授……外国の大学の先生かな。

「『やっぱりお前は必要だ、戻ってきてくれ!』……だって。帰国するって伝えた時はあんなに喜んでたのに」

 志希ちゃんは、長い睫毛を伏せながら続ける。
心の底から失望した、と言ったような感じで。
 志希ちゃんのその表情を見て、私は胸が締め付けられるような気持ちになった。

「こういうの、気持ち悪いよね」

 そして、消え入りそうな声で志希ちゃんは言う。
口調こそは鋭いけれど、声には全く鋭さが無くて、脆く見えて。
 私は放っておけなくなって、志希ちゃんを抱きしめた。

「美波ちゃん……?」

「大丈夫、大丈夫だから」

 困ったような表情をする志希ちゃんに、私はその言葉を繰り返す。
志希ちゃんの過去に何があったのかは分からないけれど、私にはそうすることしか出来ないと思ったから。

「にゃはは、やっぱり美波ちゃんって面白い」

 志希ちゃんは、そう言って笑う。
……良かった。少しは元気づけてあげられたみたい。
私は、少しだけ安心した。


「ね、」

 暫くそうしていると、志希ちゃんが私の目を見て言う。

「今日は、このまま寝てもいい? えっと……ヘンな夢、見ちゃいそうだから」

 そして、不安そうな表情でお願いしてくる。
もちろん、断るなんて事は出来ずに、私は彼女を抱きしめる力を強めた。

「うん、いいよ」

「ありがと。じゃ、おやすみー」

 そうして、志希ちゃんは、目を閉じてすやすやと規則正しい寝息を立て始めた。
 ……明日はオフ。どこか痛めても支障はないと思うから……
私も、このまま寝てしまうことにした。

――――これは、とある真夜中のお話。


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