コロナ自粛で暇なことが多いから建てた
無益に画面見つめてるよりも、創作して少しでも生産的な活動をしようかと
スレ主のように暇になった時に創作したい人、そうでなくても創作意欲が湧いた人は気軽に続きを書いてください(短文長文問わず)
おふざけはなしだが上手い下手は問わない
(需要なければ勝手に下がるだけだから、n番煎じとか言ってこないでね)
初回投下は>>1がするの?
3:匿名 hoge:2020/05/27(水) 22:54 >>3
事情でしばらく来れなかった_(:3 」∠)_
そうそう、今から書きます!
「よっと」
ストン、という軽快な音とともに、少年は地面に降り立った。
年は16か17といったところか。
15は越えていても、まだ20には届いていないだろう。
初夏の爽やかなそよ風が、彼の短髪と戯れるように、その薄い紫がかかった髪を舞い上げながら通り過ぎて行く。
気持ちの良い日差しだった。
快晴の空で輝く太陽は、その光を余すことなく地上に与えている。
今はまだ朝の早い時間であるから、外の気温も丁度良い。
しかしあと数時間もすれば、この太陽は空の真上にまで移動してしまうに違いない。
そうなると少し厄介だった。
いくら夏が始まったばかりだとはいえ、真昼の焼けつくような暑さはやはり避けたいものだからだ。
少年は、自分が暑さに弱いということをよく承知していた。
「面倒くさいけど、急がなくちゃ」
彼は辺りをさっと見回すと、背中の翼を素早く畳んだ。
この少年の背中には、純白の翼が生えていた。
彼の背丈のほとんど半分を占めるほどに大きな白鳥の翼である。
少年が翼を畳むと同時に、何枚かの羽がひらひらと抜け落ちた。
しばらくの間、彼はその数枚を名残惜しそうに目で追っていた。
髪と同じである紫色の瞳が、まるで天空から降り注ぐ日の光から逃れようとするように、枯れた地面に落ちた白い羽を映している。
やがて大きなため息を一つつくと、少年は気怠げに歩き出した。
向かう先はすぐそこだ。
彼の眼前には、都市の亡骸が横たわっていた。
見渡す限り、亡霊のように立ち並ぶ高い建物。
あちこちに打ち捨てられている家具の残骸。
これほどにまで大きな都市だ。
ここはきっと数十年前まで、数え切れないほどの人で賑わっていたに違いない。
だが今は、少なくともこの少年には、生き物の気配など少しも感じ取ることができなかった。
死者のための街と言われてもなんら違和感のない、静寂に支配された廃墟である。
「なあ、君は本当にこんな所にいるの?」
墓場のような重苦しい空気に耐えかねたのだろうか。
少年の口から言葉が漏れた。
けれども、それに応える者は当然いない。
彼がさらに何か言おうとした途端、一羽のカラスが鳴き声を響かせながら頭上を通り過ぎた。
ひどく耳障りな音だ。
「ちぇっ。分かったよ、急げばいいんだろ、急げば」
カラスに急かされでもしたかのように、少年は不満そうな表情で、再び廃墟に向かって歩き出したのだった。
少年が廃墟に足を踏み入れた刹那、彼を出迎えるかのように一陣の風が街中を貫いた。
ふと辺りが暗くなり、少年が思わず上を見上げると、つい先程まで晴れ渡っていた空一面を厚い黒雲が覆っていた。
ぽつり、と一粒の雫が地面に落ちる。一粒、また一粒と水滴が落ちていき、激しい雨が降り始めた。
一瞬のうちに、辺り一帯は雨粒が地面を打つ音でいっぱいになった。
にわか雨である。
少年もあっという間にずぶ濡れになってしまった。
やれやれと首を横に振り、雨を少しでも避けようと下を向いたものの、彼自身が焦る様子は特になかった。
相変わらず気怠げに歩みを進めている。
少年は、口元を奇妙なマスクで覆い隠していた。
先端が鋭く尖った、真っ黒なマスク。
それはまさに、先程飛んで行ったやかましいカラスの嘴のようであった。
そのマスクの表面にも、雨が容赦なく叩きつけてくる。
少年が鬱陶しそうに視線を上げると、そこには朽ちて倒れかかっている大きな門があった。
開けっぱなしの都市への入り口だ。
___こんなにも侘しい、絵に描いたような廃墟があるものだ。
マスクの中の口の端を吊り上げて、少年は小さく笑った。
「早く君に会いたいな」
打って変わったような嬉しさに弾んだ彼の声は、すぐに降り注ぐ雨の音にかき消された。