───チッ、あンのやろ……。気に食わねーからッて調子に乗りやがッて。取引の最中だろーが。
( 息切らし一人、夜の街へと繰り出す。辺りにチラつく七色のネオンがやけに瞼の奥に焼き付いては、その灯りから避けるようにして路地裏へと回り込む。あかあかとした世界から黒の世に。指に嵌めたリングが鈍く光る、赤のそれ。当時身に付けていたものは既に失った。悔やむ気は無い。あのお方が決めた事。あのお方の意に背く意思はこれっぽっちも無い、今もそれは同じ事。傷付いた腹部をそっと撫でれば滲む赤。鋭い痛みが神経を通り脳内へと直接呼び掛けた、シグナル。
……ふぅ、ツイてない。口にすること無く心ん中で呟いたそれ。胸ポケットからライターとタバコを一本と取り出せば、それを口に咥え、火が消えぬよう掌で風避けを作りだす。そうして橙の灯りが灯れば、一息を。真っ白な煙に包まれると同時に鼻に付く独特の香り。人気の無い場所だ、追っ手が来る事は無いだろう。さて、結果を初代(十代目)にどう報告すべきか。 )
色々ごちゃったな、やり直しか。