梔子の香り溢れる朝の町に。  

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953:  ◆iA/n2:2017/08/07(月) 18:39



 彼女は何時も赤い頬を、もっともっと赤くさせて林檎のようにしてそう言った。しゃくりあげている。ああ、怒っているんだ、彼女は。なぜそんなに彼女は涙を流しているのだろう。まったく分からなかった。分かっていたけれど、心が知らないふりをしていた。必死に。そうして事実と葛藤している間もも彼女は言葉と嗚咽をぽつりぽつりと吐き、僕は理不尽な感情だと何処かで思いつつも、脳内で線香花火がばちばちと音を立てていた。僕も林檎のようになって怒声をあげた。何の物音も部屋にはしなかった。ただ、間抜けに扇風機がぶいーんと音を立てて首を振っていた。扇風機にも意思があるのか、と一瞬思った。僕の声に怯んだ彼女をぎろりと睨んで、ばたんとドアを閉めた。続いて玄関のドアもがちゃんと。外に出た。一筋の雫が林檎の上を伝った。やがて、林檎の上にはばらばらと雨粒が落ちてきた。最悪な涙雨だった。最高に理不尽な雨だった。ただ灰色の世界の中に僕は突っ立っっていた。


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