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225:匿名 力作:2018/09/11(火) 22:31

今から25年前…
さっちゃんの父親、よっちゃん(本名、田中義雄)は下町で小さな果物屋を営んでいた。
田中家はよっちゃん、妻の紀子、さっちゃん、弟の孝哉の四人家族で、あまり裕福ではなかったがそれなりに幸せな家庭だった。さっちゃんはそんな家族が大好きだった。
しかしある日、いつものようにさっちゃん少年が家に帰るとそこにあったのは見慣れた果物屋の店舗ではなかった。新鮮な果物はなく緑のカゴだけが並べられ、呼び込みをしている父親の威勢の良い声は聞こえず、ヽ( ・∀・)ノ●とよっちゃんが向き合っていた。
「どうしたの、と…」さっちゃんが声を掛けようとすると、よっちゃんはかつてないほど恐ろしい眼差しでさっちゃんを睨んだ。それに怯んださっちゃんはその場に座り込んでしまった。
すぐによっちゃんはヽ( ・∀・)ノ●に目を向け、話を始めた。どうやらかなり怒っているようだ。そんなよっちゃんを煽るように、ヽ( ・∀・)ノ●は何やら一枚の紙を差し出した。みるみるよっちゃんの顔色が青くなっていく。良くないことがあったんだと、まだ幼いさっちゃんにも理解できた。その後ヽ( ・∀・)ノ●は帰り、よっちゃんは顔を伏せながら店に入っていった。
その日の夕食時、よっちゃんは家族の前で神妙な面持ちで話始めた。
「あのな。父ちゃんなぁ、果物屋…続けられなくなっちまった。」
一瞬、何が起こったのか理解できなかった。母は泣き出し、さっちゃんは弟と顔を見合わせた。
「父ちゃん…どういうことだよ?世界一の果物屋になるんじゃなかったのかよ…?」
「…この辺りになぁ、でっけぇショッピングセンターができるんだってよ。だから…俺たちみてぇなちっせぇ店は全部潰されちまうんだ。…爽太…孝哉…ごめんなぁ…父ちゃんも悔しいけどよぉ…こうするしかねぇんだ…」
そう言う父の目には、涙が浮かんでいた。父が果物屋にどれほどの情熱を注いでいたかは、自分が一番よく知っている。昼に見たあの恐ろしい眼差しの意味も、分かった気がした。
しばらくして、よっちゃんは店をたたんだ。しかしその後、よっちゃんが転職したのはあろうことかヽ( ・∀・)ノ●の元だった。毎日ヽ( ・∀・)ノ●の元でこき使われ、だんだんとやつれてながらも「おめぇらのために頑張っからよ、父ちゃんは大丈夫だ」と空元気を使って笑ってみせる父を見るのがさっちゃんは辛くて仕方がなかった。
そんなある日、一本の電話がかかってきた。その時母親は出掛けていたためさっちゃんが出た。「もしもし、田中さんのお宅ですか?ご主人が…倒れられました。」
その15分ほど経って帰ってきた母親に事情を説明すると、母親はすぐさまさっちゃんと孝哉を車に乗せてよっちゃんの職場まで車を走らせた。
向こうに着くと、孝哉がぐずり始めてしまったのでさっちゃんは駐車場で孝哉をあやしていた。
45分ほどして、母が出てきた。すると妙にしっかりとした口調で二人に言った。
「二人は明日から、おばさん家で暮らすのよ。今晩中に準備しなさい。」
その後二人は叔母の敏子の家で育てられ、よっちゃんと会うことはなかった。紀子と会うことはあったものの、ほとんど記憶がない。
その後風の便りで聞くことには、よっちゃんは過労により倒れ、その後後遺症などは残らなかったもののヽ( ・∀・)ノ●の会社からは全く労災が下りず、紀子がパートの日数を極端に増やすほかなかったと言う。
今でもあの父親の恐ろしい眼差しと母親のしっかりとした口調が忘れられず、ヽ( ・∀・)ノ●のことは許せないという。


…というのは家族構成以外全部フィクションで、よっちゃんが食べていたケーキをヽ( ・∀・)ノ●が「一口ちょうだい」と言いながらまるまるひとつ完食したというのが本当のところらしい。


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