陽炎、しゅしゅ、悪魔(人)でカゲロウデイズとか(小声)
陽炎さんのゲスい笑みが見たいです
まただ。
破れた水風船のように、鉄柱が突き刺さった胸部かは血がとめどなく流れ出ていく。地面に作られる血だまりが夏の太陽をキラキラと反射させてやけに妖しく、それでいて美しいように感じられた。
「……ゅしゅたん」
名前を囁く声はもはや枯れている。とろんと宙に向かれた焦点の合わない目を見ればわかる、しゅしゅはもう手遅れなのだ。
また、だめだった。
何度やってもだめだった。
もはや涙すら出なくなってしまうほど、この悲劇は繰り返されてきた。
悪魔は冷たくなっていくしゅしゅの体を抱きしめたまま、ぼんやりと顔を上げた。周囲の喧騒などもはや耳には入らない。
集まる野次馬が自分としゅしゅの周りを取り囲んでいる。その軽薄な人の壁の向こう、信号機の下、ゆらゆらとカゲロウが立ち上がって人の形を作っていた。相も変わらずニタニタと憎たらしい笑みを浮かべてこちらを見ていた。
ああ分かっている。
またやらなくてはいけない。
『次こそ助けられるといいな』
陽炎が口だけを動かして言った。
遠のいていく意識の中、悪魔はしゅしゅの笑顔を思い浮かべた。そうすればこの氷のように冷えた心が少しは鼓動するからだ。ああ、次こそ。
次こそはーーーーーー…
茹だるような暑さの中、時は再び巻き戻る。