初日犠牲が生きていた。
息を、している。
……驚いた。非常に驚いた。
いつもいつも、朝起きたら死体になっている初日が、温かい。
他に犠牲者がいるのかと思ったら、そういうわけでもないらしい。
どうしたのだろうかと、隣にいた少年に声をかける。
少年曰く、この村には妖狐がいる、妖狐は狼に噛まれても死なない……
とのこと。
あぁ、初日は妖狐だったのかと納得していたら、周りはみんな、初日を吊ろうと話していた。
……何故か、ちくりと胸に刺さるものがあった。
夕方。村人の処刑の時間。
初日を処刑台まで連れていく役割を、私は申し出た。
この村の処刑台は小さな丘の上にあるうえ、20段の階段がついているため、そこそこの高さがある。
そこからの見晴らしがいい……らしい。
処刑台を作った人が、最期くらいは綺麗な景色を見てほしいと考えたと聞いたことがある。
もっとも、私は立ったことはないけれど。
……話を戻そう。
初日の手をとり、階段をひとつ、ふたつと昇っていく。
この階段を昇るごとに、初日の死が近くなる。
逃げたい、逃げ出したい。
でも……それは、村への裏切りとなる。
胸が痛む。戻ったら、村長さんに言おう。そうしよう。
こつこつ、こつこつと私の足音が響く。
初日の足音は、静かで私の耳に届かない。聞きたくないだけかな……
あと1段。あと1段で、初日はこの世を去ってしまう。
なにか……なにか伝えなければ。
「ごめんなさい」
やっぱり私にはなにも言えない。言う権利がきっとない。
静かに初日の首に縄をかけた。
ゆっくり、だけど確実に、縄は初日の首を締めていく。
さようなら、初日。
初日は息絶える前に一言、呟いた。
「あ、あそこにUFOが」
胸が……痛い。
ごめんね、と囁いて村に帰る。
村の人に初日を処刑したことを伝え、家に帰る。
村長さんに体の不調を訴え忘れた。
でも……なんだか、動けない。
体から力が抜けて、なにもできそうにない。
狼の遠吠えが聞こえる。
足音が聞こえない、きっと誰も来ないのだろう。
体が、重い。
胸が、痛い。
息が……苦しい。
誰か……誰か……と思っているうち、手元にあったナイフを見つけた。
狼が来たらと、護衛用に置いておいたもの。
手にとったら、腕が一気に重くなった。
木製のベッドに倒れ込む。
ナイフを持った手が落ちてくる。
もう、いいや。
初日のところにいこうかな。
人狼感あっていいね、つか好き