お花組のSSです……とは言っても牡丹さんほぼ名前だけです……
それでも良ければどうぞ
こと、と静かな音をたて、私は百合さんの前にコップを置いた。
白い湯気がたつ、出来たてのココア。
そして私は隣に座り、自分の分に口をつける。
……やはり、何か違う。牡丹さんが作ってくれるものとは若干違いがある。
とはいえ、飲めないほとでもなかったので、そのまま少しあたたまる。
隣に目をやる。
肩を上下させながらすすり泣く百合さんの姿が目に入った。
「ぼたりん……なんで……なんで……!!」
小さな口からは苦しそうな声が洩れている。
申し訳なくなった。そっと席を外す。
ココアはひっそりと冷め始めていた。
部屋に戻ると、立てかけられた猟銃を手に取った。
いっそこのまま自殺しようか?いや、それでは百合さんはどうなるのだ。
明日の投票を忘れて突然死すればいい?いやいや、きっと私の下手な演技などすぐに見抜かれる。
首を横に振る。自分の無力さが嘆かわしい。
窓の外には処刑台。みんなのお墓。
それらを眺めたあと、決めた。
私が狩人であることを打ち明けよう。
そして百合さんをずっと守るのだ。それが、霊能の護衛で牡丹さんを亡くした私の懺悔。
階段を下りる。
「百合さん」
びく、と肩を震わせた百合さんは、恐る恐るこちらを見た。
「な、に……」
重い口を開いた。
「私は……私が、狩人です。ごめんなさい」
百合さんの目が見開かれる。
謝ってももうどうしようもないことは分かっていたが、それでも謝らずにはいられなかった。
百合さんは音を立てずにこちらに歩み寄ると、突然私に抱きついた。
「××××××××××」
意識が遠のく。
さいごに視界に入ったココアは、冷たくなっていた。
「わたしはおおかみです」?