創作【受けが手首切るのがめちゃくちゃにフェチなのだが】
吸血鬼×魔術師(吸血鬼や魔術師の設定は完全オリジナルです)
「‥血を寄越せ」
地を這うような、心臓にまで響く低い声。
人間飢えると気分が悪くなるように、どうやら吸血鬼というものも飢えるとそうなるらしい。
いつもは思わず「美しい」と感嘆が漏れてしまうような瞳も、苛立ちと殺気が混じることで美しいとだけでは言い表せない、人をも切るような眼光へと変化していた。
「生憎、今日は処女を用意できません」
魔術の研究で昨日あの生娘を使ってしまったのは失態だったか、と私は少し後悔する。
吸血鬼という生き物は人の血を主食としており、その中でも得に処女の血を好む。
以前、殺されるとこちらが懸念するほど彼を怒りを買った日があったのだが、その時に偶然材料として居合わせた彼女を差し出したところ、彼は「やはり処女ほど美味たるものはない」と口角を上げながらこちらを見てきた日があった。
「ほぉ‥。お主、この俺を飼っておきながらも、食事を用意していないと」
「吸血鬼たる者、生娘の血を吸い尽くせば1週間は食事を要しないと認識しておりましたが故。‥今日こそはお出しできませんが、明日はまた娘たちの仕入れが来る日。その時になれば、極上の者たちをあなたに」
「ならぬ。俺は、今。この時間に腹が空き、そして食事をしたいと申しておる。もしそれが出来ぬというならば――」
お主を食うぞ。
再び心臓にまで響くような声が発される。
魔術師として、多少なりて吸血鬼などあやかしの類の対処法が知り得ている私ではあるが、何より彼は研究対象として貴重な存在である。ここで怯み、彼を黄泉へ送っては意味がない。ただでさえ、吸血鬼という生き物は高尚で人間に――特に人間として禁忌を犯している魔術師には――飼われようとはしない生き物だ。
彼の場合は、本当に偶然であった。
続く