————そして何事も無く目的地に到着した。
市立星見ノ丘学園、通称『星学』中高一貫の女子校である。
「七海は、まだ来てない……、よしそこで休むか」
俺は校門前に腰を下ろし、弾んだ息を必死に整えようと右手で心臓の辺りを押さえる。鼓動がいつもの倍くらいの早さになったように感じた、こういうのを早鐘を打つって言うんだっけ。
俺の心臓が落ち着きを取り戻すには1・2分の時間を要した、学校前の坂道を駆け上がったのは失敗だったなとちょっとだけ反省する。この学校は高台に建てられているためどうしても坂道を登らなくてはならない。
それにしても坂道ダッシュと言うのはなかなかに体力を消費する運動だ、この坂道の前までは平気だったのにここで一気に体力を持っていかれた。
なんとなく校舎の方を振り向くと、数人の女子を引き連れて校舎から出てくる七海——俺の幼馴染み——の姿が目に留まった、声をかけようかと思ったがやめておく、あちらが俺に気付くまで黙っていよう。下手に声をかけて他の女子生徒が集まってきたら厄介だし、と思っていたら。
「あ、颯だ、はーやーてー」
あろうことか俺を見つけた七海は大声で俺の名を呼びやがった、その後は男に飢えた女子達に囲まれてちょっとしたハーレム状態、いろいろと質問されたりした、そしてほぼ全員俺を七海の彼氏と勘違いしている。
「だから俺は七海の彼氏なんかじゃないって」
「え〜嘘でしょ?」「本当に彼氏じゃないの?」
説明してもこんな風になかなか理解してくれない、困ったな。
「つかれた、七海、帰るぞ」
「え、あ、ちょっと引っ張らないでぇ〜」
このハーレムに飽きた俺は七海の腕を引っ張って無理矢理連れて帰る事にした。
それから俺と七海はいつものように他愛のない話をしながら家路についた。