アスカは自分達の家の前に見知らぬ二人の少女がいることに気が付いた、二人は何かを言い合っているようだ。
「何してるんだろう、あの二人」
「さあな、お前の知り合いってわけでも無さそうだし」
一人はブロンドの髪の少女で見るからに活発な笑みを浮かべている、もう一人は長い黒髪、ノースリーブのパーカーを着て塀に持たれかかっている、二人ともファッションモデルか女優をしていてもおかしくないほどのルックスだ。
アスカはいつになく温厚な口調で二人に話しかけた。
「ここ、俺たちの家なんだけど、何か用事ですか」
夜という名の塗料で塗りつぶしたとでも言うべき黒髪に青く透き通る双眸の少女は、冬の月のような凛然とした視線をアスカに向けた、アスカは微かなときめきとほんの少しの剣呑さを感じた。
「ここ、あなたの家なの、ちょうど良かった、この家にミハルと言う子はいるかしら」
「君たちはミハルの友人なのか?」
「あたし達はミハルちゃんの大親友です!」
アスカが訊ねるとブロンドの髪の少女が見かけ通りの明るさで答えた、黒髪の少女もそれに反論はしない。
「……ミハルは死んだよ半年前に」
「そうか、ミハルちゃん死んじゃったんだ……」
アスカの言葉に驚いた様子を見せるブロンド髪の少女、黒髪の少女はやけに落ち着いて最初からその事を分かっていた風な態度をとる。
「ありがとう、それが分かっただけでも十分よ、さようなら」
「待って!」立ち去ろうとする二人に今まで呆然と眺めていた七海が口を開いた。「あ、あの……今日はうちに泊まっていきませんか」
「おい、七海」「アスカは黙ってて」
七海の目は本気だった、アスカは七海がこういう目をした時は刺激せず、やりたいようにさせるのがベストだと心得ていた。
「……分かったよ、口挟まねぇから好きにしろ」
「良いの? 私達を泊めて?」
「はい、ミハルの友人ならわたしの友人でもありますから」
「ふふ、あなた面白い事言うのね、でも本当に良いの?」
「大丈夫です、ミハルちゃんの部屋が空いてます」
七海は即答した。
「どうする、カミラ?」
「……あなた達が良いなら明日泊まっても良いかしら、今日はホテルに帰らないといけないから……それと私はカミラ・リーゼロッテ・フォン・ブルートヴァルト、カミラって呼んで、こっちの金髪は」
「あたしローラ・ルミエール、よろしく〜」
「わ、わたしは玖我七海って言います、でこいつは桜扇アスカ」
「ナナミにアスカ、覚えたわ、じゃあ、また明日」
「はい、お待ちしてます」
颯爽と夜の街へと去っていった二人を見送り、七海はぼそりと呟いた。
「アスカ、わたし恋したかも」
【chapter1】
【邂逅——The Encounter】
【END】