人間になりたい…か。
お前はそれで良いのか?人間は命の限りという影に常に付き纏われる,また命の限り故、知識が少なく彼等の抱く夢にも限界が存在する。そのような運命を背負った生命体だよ
まぁ、私も一時期人間に憧れた。人間は時間の限りを知っている為、その限られたモノの中で己の最大を引き出そうとする。それ故に彼等は“技術”を習得しそれを文化として紡ぐことで“発展”を知った。それは工夫だ。彼等は永遠ではないことを知り、その為の工夫を成し得たということだ
私を含む吸血鬼は不死身であるため、永遠しか知らぬ。その点、己の限界を知らない我等は人間より劣っているのかもしれないね
しかし考えてみたまえ。お前はこの腐った世を変えたいのだろう?お前の気持ちはよく分かる。何故なら私も同じようにこの腐った偽りの世界を変えたいと望む組織に属しているからだ
だがこの世を人間となったお前のチカラだけで変えるのは、些か困難ではあるまいか。人間は技術を持つが、異能力を持たない。また我々異能力体のように突発した知力、肉体力、精神力を持ち合わせるわけでもないし、時間もないのである。
そうだ、お前が人間となり一人のチカラで世を変えるのは、蓋然性の問題に於いて困難極まりないのだ。
お前が世界を変えたいならば、協力する。しかしそれ以前にその野望を叶えるならば、人間になりたいと望むのではなく異能力体に変体することを助言するぞ。