おれを知ってる?
…
……
――――
(ぼう、と刀剣の先からオーラが縮む。やがて手のひらに集中した。
その手で転の刀に引っかかった腸を掴み、血みどろになりながらそれを咀嚼する。
ごくんと飲み込んだその時、喜怒哀楽は赤い口で笑った。)
現実逃避だと? 違うね。
俺は喜怒哀楽だ。
感情そのものだ。
感情で生きている。
それを否定するってこたァ…俺の命は存在しなくなるぜ。
(刹那、体を包む赤黒いオーラ。色を濃く増し、広がり、形を成し――
喜怒哀楽は赤黒肉塊の化け物へと化した。
まさに『喜怒哀楽』)
…クックック、ククククク、グハハハハ……
ギャアッハハハハ!!!
そうさ、これこそが俺の正体さ!
おめーのおかげで封印が解かれたみてーだぜ?
知ってんだろ? 不可説転!!
ぼくは違うと思わない。
100年間世界を見てきた。その中でおよそ74億人の人々(カンジョウタチ)はこの世界、このつらい現実に絶望しているじゃないか。
( 刀を再び、握り込む。目の前では、赤と黒の粒子が混じり合う一方で、この刀は色を失う。赤 青 黄 緑 紫 あらゆる輝きを失っていく。まるで絶望しているみたいだ。[そこのキミも絶望者の一人なんだろう?]しゃべる肉塊を前にして、ついに刀の色はつまらない現実色まで成り下がった。けれど、ぼくに刀の色に関心はない。今はただ斬ることのできるものがあればそれでいい )
きみが感情そのものであるのなら、今のきみに最も強く、最も色濃く、最も根深く、反映されているのは絶望、現実逃避への意志だ。
( この冴えない刀で斬る。肉という肉を斬って、切り裂いて、突き進む。[ ザァアァア ! ! ]
溢れるもの。液体。肉塊。臓物。刀を肉壁にぶっ刺したまま、そのバケモノの外周を駆け抜ける。
[ ザァアァアァ ! ! ! ]これはその音だ。自ずと刻まれる長い長い傷痕。手堅いはまだまだ感じない。だから、力をもっと入れた )
ぼくはまだまだきみを否定するぞ っ