(列車が、揺れる。少女はチケットを手に車内へ乗り込んだ。入口付近の車掌室からは紺色の帽子が見える。)
…どうも
(軽い会釈のあと、少女は内観を一瞥して、やがてすぐ傍の座席に腰掛けた。……相変わらず列車は揺れている。ふと車窓から外を伺うと、満月がぽっかり浮かんでいた。【運命】はいまだ願いに答えてはくれない。)
(列車が走り出してしばらく経ち、車掌室の扉が開く、決して広いとは言えない通路に靴音が響く、青年はある客車に足を踏み入れ車内を見回す)
チケットを拝見致します。
(紺の制服を着た青年は乗車したばかりの少女に歩みより短く告げる)