『Prologue』
「……ん、ここは……何処?」
鐡 冴月が眠りから覚めるとそこは知らない部屋だった。
背中に感じる柔らかな感触、どうやらベッドに寝かされているらしい、起き上がろうとするが身体が思うように動かない、見れば手首に縄が巻かれていた、その縄はベッドの下へと延びている、反対の手首と両足も同様だ。
「……私、縛られてる? そうか、捕まったのか」
自分の置かれている状況はすぐに理解できた、同時にこうなっても仕方ないとも思った。
とにかく、ここから抜け出さなくては、冴月は四肢に意識を集中させる。
「『メタライズ』」
発動する金属化の異能、細長く変形する四肢、もはや縄など存在しないに等しかった、束縛から解放された冴月は異能を解除し立ち上がる。
室内は簡素なベッドが二つとスチールラックが一つ置かれているだけ。この部屋には何も無さそうだ。
冴月はドアへと向かいドアに耳を当てる、話し声も足音も聞こえてこない誰もいないようだ。
冴月はゆっくりとドアを開け外の様子を伺う、やはり誰もいない。
「待っててジョー、私が助けるから」
そう決意し冴月は未知の建物を探索し始めた。