「行くぞ。あいつを殺しに」 深夜のことである。 月の世界では時間などほぼ意味を成さないが、それでも便宜上そう呼ぶしかない。 『月族』はおろか、『天人』も『兎』もほとんどが眠っている、そんな時間だ。 そこに紛れて、月族のうち、一つが動き出す。 その名はザンゲツ族――――番手は十四。強さが番手を表している訳ではないものの、地味な数字である。 そんな一族が、月神のいる御殿へと乗り込んでいき······その事に他の面々が気付いたのは、かれこれ一時間の後だった。