男に付け回されている――そう気づいたのは会社の帰り道だったわ。
あたしの行く先々にあの男がいる。家に帰って窓の外を見れば、向かいのアパートからあの男の顔が見える。
でも、彼は何も言わない。遠くからあたしを見ているだけ。
近くの交番に相談してみたけど「殴られたなどのわかりやすい被害があれば動けるんですがね……」と言われて取り合ってもらえなかった。ストーカーに付きまとわれている人がいても警察は助けてくれない。それがよくわかったわ。
だから……思い切って引っ越ししてみた。これでもう窓から見られることはなくなった。あぁ、なんだか胸がスッキリする。こんな気分になったのは久しぶりね……。
散歩にでも行こうと思ってドアを開けて外に出る。階段を下りたらあの男がいた。途端、あたしの中で何かがキレた。
なんで? なんで? なんでなんでなんでなんで!? なんでなのよッ!! なんでここにいるのよッ!! チクショウッッ!!
「なんだアンタ? そんなとこで何をして……お、オイやめろっ!? グワーッ!!」
「ヒッ! い、イヤァー! 忠弘さぁ〜んっ!!」
彼の胸を貫いたナイフを見下ろして、あたしは口元が綻ぶのを感じた。
「ふ、ふふ……これでもう、不安はなくなったわ……フフフ」
語り手がストーカー
引越ししたのは男のアパート
外に出たときに男と恋人?が一緒にいたのを目撃し逆上して殺した
不安がなくなったというのは、恋人?に男を取られる心配がなくなったから