【りっちゃん】A
次に目を覚ましたそこは、真っ赤だった。
白いところも何もない。
今までと違うと言えば
空間が変わったようなところだ。
浮いているのだ。
無重力空間のように。
息はできる。
律子は試しに階段を想像してみるが
無駄だった。
今までの空想とは違うのだ。
「…ッチャアアアアアアン!!!」
『来たっ…!』
律子は違和感を感じた。
無重力空間のせいか
足がうまく動かず、とても鈍い動きになる。
思った方向になかなか進めず
もがきつづけていると…
「リッチャアアアアアアアン!!!!!」
100m後ろに少女がいたのだ。
少女は床の上を走るように、浮かずに走ってくる。
律子はもがき続ける。
『イヤアアアアアア!!!!』
:
『はぁっ、はぁっ………夢、だったの?』
律子は周りを見渡す。
そこは自分の部屋。
外を見るとちゃんと人もいる。
エレベーターを想像しても、出てくるはずがない。
ほっと安堵の息を吐いて、外を眺めていると
―――少女がいた。
『っ…!?』
少女はこちらに気づき
「あっ、りっちゃん!おはよー!」
『え…?』
少女は笑顔で挨拶をしてくる。
「学校一緒にいこー!」
少女はランドセルを背負っていた。
後ろを振り返ると、律子のものであろう、真っ赤なランドセルがあった。
「りっちゃーん?」
『え、あ…い、今行く!』
律子は、小学生ではないはずだ。
受験シーズンの中学3年生のはず。
でも中学校用のバッグはどこにもない。
鏡を見ると、胸はないし、髪も短い。
身長は低くて、細身な体をしている。
「遅刻しちゃうよー?」
恐怖を覚えながらも律子は外へ出た。
これは怖い咄←なのか?
夢の咄←だよね。