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《楽聖は知っている》
5.立花 彩side
すると若武は眉間にしわを寄せ、少し頬を膨らませた。うーん、なんか少し……可愛いかもしれない。
「ピティナっていうのは、ピアノのコンクールの一つなんです。」
「Jr.G級は
ーーー
「え……どういうこと?」
「あ、もしかしたら気分を害されたかもしれません……私、中学生になってからずっと、皆さんの探偵活動の様子を見てきてたんです。いつも、皆さんの個性を活かして事件を解決してらして、すごいなと思っていて……」
「え、マジ!?」
若武が机に手を置いて身を乗り出した。
「あ、はい……やっぱり、盗み聞きは嫌ですよね……すみません。いつも、近くのテーブルで聞いていたものですから……」
宮瀬さんがぺこりと頭を下げる。
「いえいえ、ぜーんぜん!」
若武は、探偵チームのことが誰かに知られていることがすごく嬉しいらしく、すごくにたにたしながら首を横に振った。
小塚君、黒木君、翼も少し口角が上がっている。上杉君は……無表情だけど。
まあ、ようやく探偵チームKZも人に知られるようになったんだから、喜んで当たり前か、な。
「で、今日は相談がある、と言っていたけど、どうされましたか?」
若武はすっかり上機嫌だ。前髪をかきあげ、自分の左側の椅子――そう、自信がある顔の左側が相手に見える席――を引いて椅子を勧める。
宮瀬さんは勧められた席に座ると、話し始めた。
「私、宮瀬真歌奈と言うんですけど……」
小塚君がはっと驚いた表情を見せる。
「もしかして、この前ピティナピアノコンクールJr.G級で金賞を取った!?」
「あ……はい。」
宮瀬さんが恥ずかしそうにうつむく。
「うわぁ……すごいですね」
尊敬の眼差しで宮瀬さんを見る小塚君。
……えっと、ピティナピアノコンクールって……何?
「おい、話を逸らすなよ小塚。……てか、ピティナって何さ」
若武が最後の方をボソボソっと言った。
何か若武らしくないな、カッコつけだから分かんないことがあったら隠すのに。
「お前らしくないな、分かんねぇことを人に聞くなんて」
「『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』を忠実に守ってるんじゃない?」
「らしくねぇ。」
上杉君と黒木君が笑いあう。