それからの6時間目もろくに授業を聞かずにダラダラしていた。
案外サラッと授業は終わるもので、すぐに放課後はやってきた。
ゆうちゃんが1-4に迎えにきてくれるのを待っている間、不意に日比野と2人きりになった。
彼は今日、日直だったらしい。
私は窓際で空を見つめながら。
彼は中央の席で学級日誌を書きながら。
「…聞きたいことあるんですけど」
喋り出したのは、柄にもなく私だった。
別に、彼の方を見て言ったわけじゃない。空を見ながら、呟いた。
それでも、彼がフッと笑ったのは分かった。
「なに。何となくわかるけど」
自分が何かやったということは認めるらしい。
「何で、メイド喫茶。私の名前出したんですか。」
喋り終えてから彼の方にチラリと視線をやると、彼はとっくに私の方を向いていた。
彼は学級日誌をパタリと閉じると、席を立ってこちらに近づいてきた。
椅子に座る私を上から見下ろして、手をそっと伸ばしてくる。
「なに、して…」
彼は綺麗な指先で私のマスクをはぎとると、満足気に笑った。
「これで、”ゆうちゃん”だけの鎌田じゃなくなった」
何が、したいのか。
漆黒のように黒く染まる貴方の瞳からじゃ何も分からないし、到底分かる気もしない。
困惑の渦に飲み込まれそうになったとき、教室のドアが勢いよく乱暴に開いた。
ガラッ!!
「…離れろ、柚に触んな。」
そこには、見たことのないほど怒りに顔を歪めるゆうちゃんがいた。