たとえばそう、待てをされている犬の気分だ
腹が減ってラーメン屋に入った。
食券を買いカウンターに座る。
「脂マシマシコッテリバリカタ」
呪文のような注文を口にし食券を渡す、あとは待つだけなんだがコレがツライ。
なぜならば、隣はすでにうまそーなラーメン啜ってるんだぜ?
ハフハフしながらスープの絡んだ麺を啜り、幸せそうに溢れる汗を拭う。
筋繊維のほどける肉とトロットロの溶けるか溶けないかという際どい脂のチャーシューを頬張る。
口に含んだ瞬間に溶ける脂を想像して猛烈に空腹を意識してしまう。
「あ、すんません。酢取ってもらっていいっすか」
俺は目の前の調味料を手に取り渡す。
「どうぞ」
コッテリが酢によってサッパリとし、塩と反応して酸味でなく甘みに・・・つまり旨みに変わる。
思わず想像してしまい、おのれの胃が空腹を訴えてくる。
ああ、親父早く俺のラーメンを!
思考を読んだように目の前にどんぶりが置かれる。
「マシマシコッテリバリカタお待ち!」
待ちきれないと割り箸を雑に割り、いただきますわ省略して麺を啜る。行儀よりも食欲。
啜る傍らで俺は思う。注文から出てくるまでの間は待てをされる犬の気分だと。