花火が一つ、打ち上がった。
綺麗な紅の円を彩ると、刹那の内に消えてゆく。
その後を追うようにして、黄色、青、緑と様々な色の花火が打ち上がる。
「おー! 始まった始まった」
「すごーい! 写真とろ!」
目を奪われ、ざわつく人々。
小学生の頃は、それを見てただ純粋に感動したものだが、どういうわけか中学生となった今ではそれに何も感じることはなくなっていた。
ただうるさく、目に痛いモノ。
どうしてこんな風に捉えるようになったのか、などと考えることすら煩わしくなっていた。
「あれ? もしかしてユウトか?」
夏祭りの雑踏の中で、後ろから声をかけられた瀬山 ユウト(せやま ゆうと)は気だるそうに振り向く。
そこには、小学以来会っていなかった親友、県 タクヤ(あがた たくや)の笑う姿があった。
二年前と変わらない筋骨隆々の体を見て、ユウトは苦笑交じりに「久しぶりだな、タクヤ」と言った。