人ごみから少し離れ、提灯のオレンジ色が弱々しく照らす中、ユウトとタクヤは足を止めて息をついた。
「しかしタクヤ、一人で来たのか? 寂しい奴だな」
「お前に言われたくねえよ。今日はなんつーか、ちょっと暇だったから来ただけだ」
「暇、か。お前は楽そうでいいな。……しかし、相変わらずバカみたいな筋肉だな」
バカ、と罵られたのに、タクヤは怒るどころか嬉しそうにボディビルダーのようなポーズを取り、腕の力こぶをユウトに見せつけた。
「こいつはお前が遠くの中学行ってからもずっと鍛えてんだぜ、オレ」
「ずっと? ンなことに時間割くより勉強した方がいいんじゃねーか? お前その調子じゃ今も成績ビリだろ」
うっ、と気まずそうにするタクヤに、ユウトは冷静な口調で続ける。
「そんなにつけてどうするんだよ。ボディビルダーにでもなる気か?」
タクヤは首を振った。
「また使う時が来るかもしれねーからよ」
「……また使う時、ねぇ」