【第1章】
ここは、この世界のどこかにある○○区立そよ風学園。
新しい環境、それはすなわち新しい人生の始まりだ。大袈裟かもしれないが。
こんな自分を、少しでも変えられたら__
「…ここが、そよ風学園」
私の名前は彩崎 奈月。
そよ風学園に入学する高校一年生だ。
女子、そして男子が緊張した顔つきで登校してくるのを見て、少し胸が痛んだ。
でもその一瞬後、私は校門前に咲く満開の桜に目を奪われ、立ち止まった。
(すっごく綺麗…。)
何分でも、何時間でも見ていられるような、大きくて鮮やかな桜だった。
「奈月、そろそろ教室確かめに行った方がいいんじゃない?」
その桜に見とれていると、お母さんに釘を刺された。
そうだ、入学式だ。早めに教室に入らないと。
「あ、そっか。行ってきます!」
「いってらっしゃい。お昼用意しておくから、終わったら家帰って食べてね」
「わかってるよー」
校舎に向かいながら返事をする。
ここには、中学のころの友達は一人もいない。もちろん、男子もいる。
「新しい友達作れるかな…」
不安な気持ちでいっぱいだが、今までの自分とは違う、と自分自身に言い聞かせる。さらに、ぱしっと軽く頬を叩き、気合いをいれる。
そして、そよ風高校の校舎に足を踏み入れた。
「…もう少し、あののんびりした性格直してもいいと思うけどねぇ」
奈月を見送った後、奈月の母はくすっと笑いをこぼしていたという。